21 / 24
まほら、初めての潜入捜査
しおりを挟む
「マクスウェルさん!好きです!ヤリ○ンでもいいです!付き合ってくださいっ!」
「あちゃちゃ~……ランチタイムで誰も居ないのを見計らっての告白?入りづらぁ~……」
昼休憩に、四課の課長補佐であるガーランド女史に誘われて省舎にほど近いカフェで昼食を食べたまほら。
ガーランド女史と四課の部屋に戻ったら、タイミング悪くハウンドが告白されている時に出会してしまった。
───以前にもブレイズが告白されている時にかち合ってしまった事があったわね……。
つくづく自分はタイミングが悪いと心の中で辟易としながら、どうするべきか相談しようとガーランド女史の方を見ると、なんと彼女は少し開いたドアの隙間から中を窺っているではないか。
(以下、小声で脳内再生を)
「ちょっ……サミィさん!何をしているんですかっ」
「しーっ!バレちゃうでしょ、まほらちゃん」
「ダメですよプライベートなのに覗き見なんてっ」
「省内で告白なんかするのが悪いのよ、省舎内は全て壁に耳ありドアの隙間に目ありーよ」
「なに訳のわかんないこと言ってるんですかっ、ハウンドさんに悪いでしょうっ?」
「そんな事言ってまほらちゃん、ホントは気になって仕方ないんでしょ?ハウンドが告られてどう返事するか~」
「どうして私が気にしなくちゃダメなんですか?」
「だってまほらちゃん、ハウンドに惚れちゃってるんじゃないのぉ~?」
「なんでそうなるんですか?そんな事言ったらハウンドさんに失礼ですよっ」
「いいじゃない。三年前の事件も解決してハウンドもそろそろ新しい恋を始める頃よ」
「だとしても相手は私じゃありませんっ」
「またまた照れちゃってぇ~」
「照れてませんって!」
ガチャ
「「あ」」
ドアの所で小声で押し問答していたら、ふいに中からハウンドに告白をしていた女性職員が出て来て目が合った。
女性職員は聞かれていた事を知り、顔が見る間に赤くなる。
そして涙目になりながら走り去って行った。
その背中にまほらはまた心の中で謝る。
───先日とは別の人だけどごめんなさい!騒がしくしてしまってごめんなさい!
「あーあ、行っちゃった」
悪びれる事もなくそう言うガーランド女史に、中にいたハウンドが呆れながら声をかけてきた。
「ったく、悪趣味ですよガーランドさん」
「ねぇ、なんて返事したの?平凡な容姿だけど真面目で良さそうな子だったじゃない!」
「相手に失礼ですよ……もちろん断りました」
「なんでっ?どうして勿体ない!」
「なんですかその勿体とは。とにかく、そんな軽い気持ちで女性とお付き合いなんて出来ません」
ハウンドがそう言うと、ガーランド女史は含み笑いを浮かべた。
「じゃあまほらちゃんはどうよ?あなた達、とってもお似合いだと思うわよ?」
「ちょっとサミィさん、何言ってるんですか?有り得ないですよねぇ?ハウンドさん」
勝手な事ばかり言うガーランド女史に呆れながらまほらがハウンドを見ると、彼はじっとまほらの事を見ていた。
その視線に思わずドキリとする。
「な、なんですかっ?」
「いや、まほらさんとなら素敵なお付き合いが出来そうだなぁと思って……」
キラキラのイケメンにそう言われて、まほらはボディブローをキメられた心地になる。
「ぐっ……ホントそういうところですよハウンドさんっ……」
「え?何が?」
そう言いながら軽く悶絶するまほらときょとんとするハウンドを見て、ガーランド女史はニマニマとしながら二人に告げた。
「さぁさご両人、午後イチで課長に呼ばれているのを忘れないでよ。きっと新しい任務の事だと思うから」
そのガーランド女史の言葉にまほらとハウンドが声を合わせて返事をした。
「「YESマーム」」
「誰がマムじゃいっ」
◇◇◇◇◇
「はぁぁ……潜入捜査なんてドキドキです……」
今日のために下ろした新しいワンピースを来たまほらが隣にいるハウンドにこっそりと言う。
「潜入捜査と言っても魔法麻薬使用の現場を確認するだけだからね、実際の物取りは他の班がやってくれるよ」
「よし、頑張って犯行現場を目撃するぞ!」
「あはは、肩の力を抜いて。リラックスリラックス」
まほらとハウンドは今、街の商工会主催の合同お見合いパーティーに参加している。
もちろん二人の目的は将来の伴侶探しではない。
先日、この合同お見合いパーティーで魔法薬物が使用されていると匿名でタレコミがあった。
そこで四課では年若く未婚であるまほらとハウンドのバディが、パーティーの参加者を装って潜入するようにとの任が下ったのである。
まほらにとっては当然、初の潜入捜査だ。
緊張でドキドキしながらもまほらは怪しい動きを少しでも見逃すまいと当たりを見回す。
その時、会場に集まった若い独身の参加者たちの中に一人の見知った女性の姿を見つけた。
まほらは思わずハウンドの服の裾を掴み、彼に知らせた。
「ハ、ハウンドさんっ……!」
「ん?どうしたんだい?」
まほらが一心に誰かを見ているのに気付いたハウンドがまほからの視線を辿る。
その視線の先にいた人物を見て、ハウンドが目を瞠った。
そして静かにその人物の名を呼ぶ。
「………ラリサ……」
そんなに大きな声ではなかったと思う。
しかしその小さな声を、彼女の耳は拾った。
はっとラリサがハウンドとまほらの方を見る。
「ラリサさんも、お見合いに……?」
合同お見合いパーティーに出席しているのだからそれしかないと思うも、自分の幸せを諦めていた彼女がこのパーティーに参加していた事に驚きが隠せない。
それはハウンドも同じなようで、何か言いたげな表情で彼女の事を見ていた。
一方、ラリサはというとまほらとハウンドを見た途端に一瞬だけ悲しげな表情を浮かべた。
なぜ彼女がそんな顔をしたのか理解出来ず、まほらはきょとんとするもやがてはっとして自分の手を見る。
ラリサの存在をハウンドに知らせるために思わず彼の服の袖を掴んだ手を、まほらは慌てて離した。
───も、もしかして誤解させたっ?
まほらは内心焦りながらもラリサに近付いていくハウンドの後に続く。
ハウンドはラリサの前に立ち、彼女に言った。
「……まさかここでキミに会うとは思わなかったよ」
「わ、私は職場の上司に人数合わせのために参加するように命じられて……うちの商会も街の商工会に加盟しているから……」
「そうなんだね、僕たちも似たようなもので参加しているんだ……」
「そ、そう……」
「「……………」」
そう言ったきり黙り込む二人をまほらはただ見守る事しか出来ない。
その時、主催者側の進行者が皆に告げた。
「皆さん、本日はアデリオール第五商工会主催の合同お見合いパーティーにご参加いただきありがとうございます!それではこれよりパーティーを始めさせて頂きたいと思いますので、皆さん大いに楽しみながら、ご自分に合ったパートナーをお探しください!」
───いよいよね!
まほらはぎゅっと心のフンドシを締め直す。
波乱のお見合いパーティーが始まった。
「あちゃちゃ~……ランチタイムで誰も居ないのを見計らっての告白?入りづらぁ~……」
昼休憩に、四課の課長補佐であるガーランド女史に誘われて省舎にほど近いカフェで昼食を食べたまほら。
ガーランド女史と四課の部屋に戻ったら、タイミング悪くハウンドが告白されている時に出会してしまった。
───以前にもブレイズが告白されている時にかち合ってしまった事があったわね……。
つくづく自分はタイミングが悪いと心の中で辟易としながら、どうするべきか相談しようとガーランド女史の方を見ると、なんと彼女は少し開いたドアの隙間から中を窺っているではないか。
(以下、小声で脳内再生を)
「ちょっ……サミィさん!何をしているんですかっ」
「しーっ!バレちゃうでしょ、まほらちゃん」
「ダメですよプライベートなのに覗き見なんてっ」
「省内で告白なんかするのが悪いのよ、省舎内は全て壁に耳ありドアの隙間に目ありーよ」
「なに訳のわかんないこと言ってるんですかっ、ハウンドさんに悪いでしょうっ?」
「そんな事言ってまほらちゃん、ホントは気になって仕方ないんでしょ?ハウンドが告られてどう返事するか~」
「どうして私が気にしなくちゃダメなんですか?」
「だってまほらちゃん、ハウンドに惚れちゃってるんじゃないのぉ~?」
「なんでそうなるんですか?そんな事言ったらハウンドさんに失礼ですよっ」
「いいじゃない。三年前の事件も解決してハウンドもそろそろ新しい恋を始める頃よ」
「だとしても相手は私じゃありませんっ」
「またまた照れちゃってぇ~」
「照れてませんって!」
ガチャ
「「あ」」
ドアの所で小声で押し問答していたら、ふいに中からハウンドに告白をしていた女性職員が出て来て目が合った。
女性職員は聞かれていた事を知り、顔が見る間に赤くなる。
そして涙目になりながら走り去って行った。
その背中にまほらはまた心の中で謝る。
───先日とは別の人だけどごめんなさい!騒がしくしてしまってごめんなさい!
「あーあ、行っちゃった」
悪びれる事もなくそう言うガーランド女史に、中にいたハウンドが呆れながら声をかけてきた。
「ったく、悪趣味ですよガーランドさん」
「ねぇ、なんて返事したの?平凡な容姿だけど真面目で良さそうな子だったじゃない!」
「相手に失礼ですよ……もちろん断りました」
「なんでっ?どうして勿体ない!」
「なんですかその勿体とは。とにかく、そんな軽い気持ちで女性とお付き合いなんて出来ません」
ハウンドがそう言うと、ガーランド女史は含み笑いを浮かべた。
「じゃあまほらちゃんはどうよ?あなた達、とってもお似合いだと思うわよ?」
「ちょっとサミィさん、何言ってるんですか?有り得ないですよねぇ?ハウンドさん」
勝手な事ばかり言うガーランド女史に呆れながらまほらがハウンドを見ると、彼はじっとまほらの事を見ていた。
その視線に思わずドキリとする。
「な、なんですかっ?」
「いや、まほらさんとなら素敵なお付き合いが出来そうだなぁと思って……」
キラキラのイケメンにそう言われて、まほらはボディブローをキメられた心地になる。
「ぐっ……ホントそういうところですよハウンドさんっ……」
「え?何が?」
そう言いながら軽く悶絶するまほらときょとんとするハウンドを見て、ガーランド女史はニマニマとしながら二人に告げた。
「さぁさご両人、午後イチで課長に呼ばれているのを忘れないでよ。きっと新しい任務の事だと思うから」
そのガーランド女史の言葉にまほらとハウンドが声を合わせて返事をした。
「「YESマーム」」
「誰がマムじゃいっ」
◇◇◇◇◇
「はぁぁ……潜入捜査なんてドキドキです……」
今日のために下ろした新しいワンピースを来たまほらが隣にいるハウンドにこっそりと言う。
「潜入捜査と言っても魔法麻薬使用の現場を確認するだけだからね、実際の物取りは他の班がやってくれるよ」
「よし、頑張って犯行現場を目撃するぞ!」
「あはは、肩の力を抜いて。リラックスリラックス」
まほらとハウンドは今、街の商工会主催の合同お見合いパーティーに参加している。
もちろん二人の目的は将来の伴侶探しではない。
先日、この合同お見合いパーティーで魔法薬物が使用されていると匿名でタレコミがあった。
そこで四課では年若く未婚であるまほらとハウンドのバディが、パーティーの参加者を装って潜入するようにとの任が下ったのである。
まほらにとっては当然、初の潜入捜査だ。
緊張でドキドキしながらもまほらは怪しい動きを少しでも見逃すまいと当たりを見回す。
その時、会場に集まった若い独身の参加者たちの中に一人の見知った女性の姿を見つけた。
まほらは思わずハウンドの服の裾を掴み、彼に知らせた。
「ハ、ハウンドさんっ……!」
「ん?どうしたんだい?」
まほらが一心に誰かを見ているのに気付いたハウンドがまほからの視線を辿る。
その視線の先にいた人物を見て、ハウンドが目を瞠った。
そして静かにその人物の名を呼ぶ。
「………ラリサ……」
そんなに大きな声ではなかったと思う。
しかしその小さな声を、彼女の耳は拾った。
はっとラリサがハウンドとまほらの方を見る。
「ラリサさんも、お見合いに……?」
合同お見合いパーティーに出席しているのだからそれしかないと思うも、自分の幸せを諦めていた彼女がこのパーティーに参加していた事に驚きが隠せない。
それはハウンドも同じなようで、何か言いたげな表情で彼女の事を見ていた。
一方、ラリサはというとまほらとハウンドを見た途端に一瞬だけ悲しげな表情を浮かべた。
なぜ彼女がそんな顔をしたのか理解出来ず、まほらはきょとんとするもやがてはっとして自分の手を見る。
ラリサの存在をハウンドに知らせるために思わず彼の服の袖を掴んだ手を、まほらは慌てて離した。
───も、もしかして誤解させたっ?
まほらは内心焦りながらもラリサに近付いていくハウンドの後に続く。
ハウンドはラリサの前に立ち、彼女に言った。
「……まさかここでキミに会うとは思わなかったよ」
「わ、私は職場の上司に人数合わせのために参加するように命じられて……うちの商会も街の商工会に加盟しているから……」
「そうなんだね、僕たちも似たようなもので参加しているんだ……」
「そ、そう……」
「「……………」」
そう言ったきり黙り込む二人をまほらはただ見守る事しか出来ない。
その時、主催者側の進行者が皆に告げた。
「皆さん、本日はアデリオール第五商工会主催の合同お見合いパーティーにご参加いただきありがとうございます!それではこれよりパーティーを始めさせて頂きたいと思いますので、皆さん大いに楽しみながら、ご自分に合ったパートナーをお探しください!」
───いよいよね!
まほらはぎゅっと心のフンドシを締め直す。
波乱のお見合いパーティーが始まった。
応援ありがとうございます!
33
お気に入りに追加
2,261
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる