ポンコツ娘は初恋を諦める代わりに彼の子どもを所望する

キムラましゅろう

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ルゥカ、叱られる

「ル゛ゥカぁぁ~……あんたって子はぁぁ~~」

「きゃー痛い痛い痛いっ!」

故郷から戻ったドリーにコダネの件を図書館司書に話してしまったこと白状させられたルゥカは当然の事ながら言いつけを守らなかったお叱りを受けていた。

今はドリーに両方のコメカミをグリグリとされている。

ドリーはコメカミグリグリをしながらルゥカにお説教を続けた。

「どーしてあんたは言っちゃダメと言われた事をベラベラと喋るかなあ゛~?この可愛らしいお口は何をしちゃってくれちゃってんのぉぉ~?」

「痛たたたたっ……!ごめんなさい!ドリーちゃん本当にごめんなさいっ……!」

「ごめんで済んだら騎士団は要らないのよっ!」

更にコメカミグリグリの手を強められてルゥカは只々悲鳴をあげるしかなかった。

「キャ、キャーー!」

「オラオラオラオラオラァッ」


◇◇◇


「それで?そのパトリスっていう司書に帰るように促されて帰って来たというわけなのね?」

一頻り説教を終えてとりあえずは溜飲を下げたらしいドリーがルゥカに言った。

「クスン……うん、パトリスさんにもう帰るように言われて……」

萎れながらドリーにお茶を出し、ルゥカがそう答えた。
だけどコメカミグリグリのお陰で頭はスッキリしているルゥカだ。
肩こりも軽減された気がする。
ドリー様のご機嫌を取ろうと一番お気に入りのお客様用のカップアンドソーサーでお茶をサーブする。

「ありがと。でもあんた、そのパトリスって司書が常識ある男で良かったじゃない。これが悪い男だった日にゃあ…あんた今頃食われてて、そいつから子種を貰う羽目になっていたかもしれないわね」

「え?パトリスさんに食われるって?食べられないとコダネは貰えないの?」

「……そっか、あんたはそこからだったわね」

「そこから?」

「それはちょっと待ってて。そこら辺のあんたの知識をどうするか、やっぱりあんたの責任者と相談したいから」

「責任者?」

はて誰だろう?あ、田舎のおばぁちゃん?と首を傾げているルゥカを尻目に、ドリーはお茶を口に含んだ。

そして倒れたという実家の父親の状況などを話してくれた。
倒れた、というのは語弊で正しくは転倒しての骨折であったそうなのだ。

「お母さんたら慌てて連絡してくるもんだから焦っちゃったわよ。まぁそれくらいで済んで良かったと思うけどね」

「そっかあ。お父さん、痛くて大変だったと思うけど悪い病気や大怪我じゃなくて良かったよ……」

「まぁね」

そうしてドリーは帰り際にもう一度

「あんたに正しい子作り云々を叩き込むまでもう二度とコダネという単語を口にしたらダメだからね!」

と言い、司祭長とメイド長に戻った旨を報告する言って教会へと出かけて行った。

「はぁぁ……やっぱりむちゃ怒られた……しばらく大人しくしていよう……」

コダネ頂戴計画はしばらく凍結か?
だけどなぜ性教育が必要なのだろうか……
そもそも性教育って何を学ぶもの?

何がなんだかわからない、謎すぎる。
でもとりあえずドリーが怖いので言うことをきいておこう、ルゥカはそう思った。

───フェイトへの想いを諦めるために、早くコダネを貰って祖母の元に帰りたいのに……

ルゥカはひとつ、大きなため息を吐いた。



しかし、しばらく大人しくしていようと決めたにも関わらず、すぐにその決意が揺らぐ危機が訪れた。


「昨日はお話を聞けなくてすみませんでした。ルゥカさん、今日のお仕事上がりにお時間ありますか?きちんとお話を窺いたいと思うのですが……」

パトリスが夕方もうすぐ仕事が終わろうかという時間に、教会にやってきたのであった。

「え、えっと……あの……その……」

「昨日のルゥカさんの発言が気になって、そして心配で夜も眠れなかったんです。これは一刻も早くあなたとお話しなくてはならないと思ったんです」

「あ……それは私のせいで、すみませんでした……」

自分の発言の所為で眠れなかったと聞けば無下には出来ない。
彼の安眠の為にたとえ簡単にでも説明をした方が良いのだろうとルゥカは考えた。

ドリーが慌ててどこかへ走っていくのが視界の端に入ったが今はそれどころではない。

ルゥカはパトリスに言った。

「もう少しでシフトの交代になります。着替えをしてすぐに出ますのでバックヤードの方でお待ちください」

「わかりました。良かった、きちんとお話が出来そうで」

パトリスはそう言ってその場から去った。

ドリーはどこかへ行ったっきり戻って来ない。
そしてパトリスの人柄は出会ったばかりとはいえ良い人である事はわかる。

ここはひとつ、大人としてきっちりと説明してパトリスに理解して貰う!
そして今夜からまたぐっすりと眠ってもらう!

ルゥカはそう心に決めて仕事終わりにバックヤードへと向かった。

パトリスが使用人の出入口付近で木にもたれながら本を読んで待っていた。

「パトリスさん、お待たせしました」

「いえ、押しかけてきたのはこちらです。それに大して待っていませんよ」

と柔らかい表情で言うパトリスを見て、やっぱりいい人だとルゥカは思った。

「では行きましょうか」

パトリスがそう促すとルゥカは頷いた。

「は、……いっ?」

返事をして歩き出そうとしたその時、誰かがルゥカの腕をグイッと掴んで引き寄せた。

力強く引き寄せられ相手の硬い胸板に押し付けられる。
鼻腔をくすぐるよく知った香りにそれが誰なのかすぐにわかった。

「……フェイト?」

なぜ彼がここへ来たのか。
それにまるでルゥカを行かせまいとしているようなこの態度。

訳がわからずきょとんとするルゥカにフェイトが厳しい眼差しを向ける。

「どこへ行く気だ、ルゥカ」

あからさまに怒気を含んだ声色でフェイトが言った。

フェイトの後ろでは遅れてやって来たドリーが苦しそうに肩で息をして、膝に手を当て立っていた。



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