22 / 44
とある夫婦(17) ポンコツ、潜入捜査をする
しおりを挟む
今回はお遊び回です。
おまけの投稿としてお届けいたします♪
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
わたしの名前はコルル(偽名)。
わたしは今、潜入捜査中だ。
何の潜入捜査かって?
それは……結婚したばかりの夫が近頃不審な行動ばかりを起こすので、その原因を突き止める捜査なのだ。
浮気は疑ってません。
そんな不誠実な人ではないと信じているもの。
ましてや新婚の、長い婚約期間を経てようやく結ばれたこの新妻を差し置いて、他の女に現をぬかすとは思えない。
でも……毎夜政務が終わってから側近を一人だけ連れて出掛ける先が娼館だった事から、見て見ぬフリは出来ませんな、と思ったわけで。
え?娼館だったら浮気確定?
違います!わたしの旦那様は浮気なんか致しません!
絶対に何か訳があるはず。
だからわたしは街の清掃活動で知り合った町内会長さんの口利きで、娼館の謎多き魅惑の掃除婦コルルさんとして潜り込んだワケなのだ。
え?浮気は間違いないのに傷付くだけだから止めておけって?
だから!絶対に浮気ではないんですってば!
だって彼ってば昨夜はわたしを散々ベッドで翻弄して(キャッ♡)夜が明けて日中は騎士団の合同演習に参加して一日中剣を振るっていたのだ。
そしてその後はちゃんと政務もこなして……
まぁ政務は、わたしがポンコツだから難しい案件を全部振っちゃってるのが悪いんだけどね……
とにかく、そんなハードなスケジュールをこなした後に娼館で浮気?
いくらスーパーでハイスペで完璧な彼でも無理だと思う。
あ、ちょっと待って、誰か来た。
お客さんだわ、小柄な紳士が妖艶な娼婦のお姐サマと一緒に階段を上がって来た。
「……いらっしゃいませ」
わたしは掃除婦らしく屈んで掃除をしながら挨拶をして、やり過ごした。
その紳士とお姐サマが部屋へと入って行く。
キャ、キャー……ここは娼館なんだから、部屋に入ってする事といったら一つよね。
これでも人妻なのでウブウブな事は言わないけど、なんかドキドキするわね。
そういえば夫は何処に行ったのかしら?
この娼館に入ったのを確認して、わたしも掃除婦として潜入するために裏口から入ったのだけど……
その後見失ってしまった。
きっと何処かの部屋にいるはずなのに……
その時、また誰かが階段を上がって来た。
階を踏み締める足音が力強い。
重心をしっかり足腰に込めてる感じね。
足音にブレがない。
足音の主はもしかして騎士なのかもしれないわ。
そう思いながらまた屈んで顔を見せないように掃除をするフリをしてやり過ごす事にした。
でも、足音の主がどんな人なのか気になる……!
わたしは少しだけ視線を上に向けて、件の人物の方向を見やった。
かなり体の大きな紳士だわ。
まるで熊みたい。
ウチの騎士団の総団長みたいな。
そうクマ……
「ってええっ!?クマックスっ!?ふがっ……
足音の主が思わぬ人物過ぎて驚愕して声を上げてしまった瞬間に、後ろから口を塞がれ抱き寄せられた。
わたしだって一応は武術の嗜みがある。
これがただの暴漢の所業だったら反撃をしていたと思う。
でも抱き寄せられた瞬間に香った嗅ぎ慣れた香りに、わたしは抵抗するのは無意味だと悟り大人しくした。
だって、今わたしの口を塞いで後ろから抱いているのは……
わたしはチラリと後ろを仰ぎ見る。
ホラやっぱり。
それは我が愛しの旦那サマだった♡
眉間に深くシワを寄せてかなり怒ってる様子だけど。
「こんのっ……ポンコツがあぁぁ……!」
「へぇふぉん!」
「おいっ……お前、こんな所で何をしているんだ……?」
「へふぉふぁ、ふぁふぃひゃひゃひゃへふひゃひゃ……」
口を塞がれながらも一生懸命伝えようとしたら、
「ちっ」と舌打ちをされて手を離された。
もう、相変わらずキレッキレの舌打ちでシビれるぅ。
「シモンが何やらコソコソ調べているみたいだから気になって……何かあったの?我が国のピンチ?」
わたしがそう言うと、直ぐにそのまま近くの部屋に引きずり込まれた。
あ、シモンたらこの部屋にいたのね。
さて、ここでご紹介しましょう。
彼はわたしの夫で名をイコリス=オ=ジリル=シモン。
隣国モルトダーンの元第一王子だったけど、いずれ王配となる為に婿入りしてくれた。
そしてわたしはこのイコリス王国の第一王女で次代の女王、イコリス=オ=リリ=ニコルと申します。
先々月に結婚式を挙げたばかりのわたし達は新婚ホヤホヤなのだ♡
「なのだ♡じゃねえっ」
「ぎゃんっ」
ひ、久々に脳天チョップを頂きました……
わたしも落ち着いたオトナの女性になって、すっかりシモンの脳天チョップから縁遠くなっていたのに……
「何が落ち着いたオトナの女だ」
「あ、また声に出てた?」
心の声が表に出るのも相変わらずらしい。
「まさか俺が娼館で浮気してるとか疑ってないよな?」
「まさか!シモンに限ってそんな事はないと分かっているわ」
「それならいいが……ハァァァ……」
シモンが盛大にため息を吐いた。
「でも何をしているのかは気になるじゃない?あなたが動いてるなら国の大事に関わる事だろうし」
「そうやって首を突っ込もうとするから秘密裏に動いていたのに……」
「お生憎サマ。わたしのシモンセンサーを舐めないで欲しいわ。シモンのちょっとした変化もすぐに分かるんだから!」
「……喜ぶべきなのか、怖がるべきなのか判断に迷うな……」
「ふふふ」
その時、同じフロアで動きがあった。
大きな声や物が倒れたり壊れたりする音が聞こえる。
捕物が始まったような、騒然とした大きな物音が辺りに響き渡った。
わたしはシモンに腰をぐいっと引き寄せられる。
「お前はここで俺と一緒にいろ。一歩も動くな、分かったな?」
「そ、そんな恐ろしい顔しなくても飛び出して暴れたりなんかしないわよぅ……」
「どうだかな」
「部屋の外では何が起きてるの?」
「バックスを始めとするイコリスの騎士達が違法魔法薬のバイヤーを一斉に捕縛している」
「あぁ、だからさっきクマックスがいたのねって、ええっ!?違法魔法薬っ!?他の国で問題になったっ?イコリスにも入って来ているのっ!?」
こうしちゃいられない!
わたしも犯人の捕縛に協力しなくてはっ!
と思って部屋を出ようとしたけどその瞬間、シモンに横抱きにされた。
「だから大人しくしてろと言っただろうがっ!一体いつまでポンコツでいるつもりだぁ?おい゛」
あ、超絶に怒ってらっしゃる……。
きゃ、きゃぃぃ……ん。
そしてしばらくしてわたしとシモンがいる部屋にシモンの側近のアルノルトが入って来た。
「シモン殿下、バイヤーの一斉捕縛、無事に終了いたしました…って、えっ?ニコル殿下っ!?」
わたしはシモンに抱っこされたままアルノルトに挨拶をする。
「アルノルト、ご苦労様」
シモンがアルノルトに尋ねた。
「怪我人は出していないな?」
「はい。娼館側の協力を得ていたので全員無事です。騎士たちにも怪我はありません。デューダー団長が娼婦のお姐サマ方に大人気で顔中にキスの嵐が降ってましたが」
「え、何ソレ見たい」
「………」
その後城に帰ってから、シモンに落ち着いて今回の捕物の顛末を教えてもらった。
他国の王都などの主要都市で蔓延の兆しを見せた違法魔法薬。
それぞれの国の尽力のおかげで取り返しが付かなくなる前に製造販売ルートの大元を壊滅させられたそうだ。
だけど既に出回っている魔法薬の完全回収は難しいとの事だった。
その数少ない押収を逃れた魔法薬を、ウチみたいな小さな国をターゲットにして売り捌こうとしている輩がいるらしい。
そんなバイヤーが数名イコリスに入ったと、そのバイヤーの一人を昔から知っているという娼婦のお姐サマからタレ込みがあったそうなのだ。
そこでその娼婦のお姐サマと娼館の協力を得て、取り引きの場を設けてバイヤー達をおびき寄せたという事らしい。
そして数名のバイヤーが揃った所を我がイコリス騎士団が一斉に捕縛したという訳なのだ。
それをお父様やシモンが指示をして秘密裏に動いていたというのだからビックリである。
「どうしてわたしには話してくれなかったの?」
「正義感の塊のニコに話したら、絶対捜査に加わろうとする事を懸念したと言っただろう?」
「そりゃぁそうよ。国の大事に日和っていられないわ!」
「そんな性格だから黙ってたんだ」
「どうして?わたしの剣技や体術の腕はシモンも知ってるでしょう?」
「………」
わたしがそう言うと、シモンはわたしの目の前に来た。
そして額と額をくっ付けて来る。
「シモン?」
「ニコ、お前はもう俺と結婚した身だ」
「ええそうよ。ふふ、幸せ」
「……という事はいつ懐妊してもおかしくはない、という事だ。こうしている今も、じつはお腹にはもう子がいるかもしれない」
「!!」
それを聞き、わたしは思わず目を見開く。
そして途端に頬が熱くなる。
「ニコ、これからは常にそれを踏まえて行動して欲しい。日常生活は普通にしてていい。だけど荒事などに絶対に首を突っ込もうとしないでくれ。俺の心臓がいくつあっても足らん」
「う、うん……」
わたしの赤面した顔を見て、シモンが悪戯っ子の表情をする。
「なんなら、おかしな行動が取れないように毎日ベッドから起き上がれなくしてもいいんだぞ?」
「っ○☆*◎♡♡!?」
ちょっ……シモンさーーんっ!
オトナのオトコのフェロモンがダダ漏れですよーー!
ていうか貴方そういう事言うタイプでしたっけーー!?
ツンツンデレツンの王子様じゃなかったかしらぁ!?
と、わたしは心の中で叫び、羞恥心の許容範囲が振り切れたのと、イケメンな旦那様の色気にあてられてそのまま撃沈してしまった………
だけどシモンは預言者だったのかもしれない。
この時、わたしはホントに既に妊娠していて、
わたしのお腹には第一子となる子どもがいたのだった。
懐妊していた事をシモンに最初に告げた時の彼の顔は一生忘れられない。
なんだか泣き出しそうな喜ぶ顔がとても印象的だった。
その顔を見てわたしの方が泣いちゃうくらいに。
こうしてわたし達の日々は続いてゆく。
最初は婚約者として。
そして今は夫婦として。
これからは親として、共に手を携えて生きてゆくのだ。
やがて女王と王配としての役割も担う時が来る。
でも絶対に変わらないのはわたしが貴方を愛している、という事。
きっとシモンもわたしと同じ気持ちだと信じている。
そしてこれからも、わたしはポンコツながらも貴方の隣で笑って生きてゆくのだ。
おしまい
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は
「こんなに好きでごめんなさい~ポンコツ姫と捨てられた王子~」からピュアピュアな二人が夫婦になってからのその後をお届けしました。
この二人、夫婦になっても相変わらずのようです。
おまけの投稿としてお届けいたします♪
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
わたしの名前はコルル(偽名)。
わたしは今、潜入捜査中だ。
何の潜入捜査かって?
それは……結婚したばかりの夫が近頃不審な行動ばかりを起こすので、その原因を突き止める捜査なのだ。
浮気は疑ってません。
そんな不誠実な人ではないと信じているもの。
ましてや新婚の、長い婚約期間を経てようやく結ばれたこの新妻を差し置いて、他の女に現をぬかすとは思えない。
でも……毎夜政務が終わってから側近を一人だけ連れて出掛ける先が娼館だった事から、見て見ぬフリは出来ませんな、と思ったわけで。
え?娼館だったら浮気確定?
違います!わたしの旦那様は浮気なんか致しません!
絶対に何か訳があるはず。
だからわたしは街の清掃活動で知り合った町内会長さんの口利きで、娼館の謎多き魅惑の掃除婦コルルさんとして潜り込んだワケなのだ。
え?浮気は間違いないのに傷付くだけだから止めておけって?
だから!絶対に浮気ではないんですってば!
だって彼ってば昨夜はわたしを散々ベッドで翻弄して(キャッ♡)夜が明けて日中は騎士団の合同演習に参加して一日中剣を振るっていたのだ。
そしてその後はちゃんと政務もこなして……
まぁ政務は、わたしがポンコツだから難しい案件を全部振っちゃってるのが悪いんだけどね……
とにかく、そんなハードなスケジュールをこなした後に娼館で浮気?
いくらスーパーでハイスペで完璧な彼でも無理だと思う。
あ、ちょっと待って、誰か来た。
お客さんだわ、小柄な紳士が妖艶な娼婦のお姐サマと一緒に階段を上がって来た。
「……いらっしゃいませ」
わたしは掃除婦らしく屈んで掃除をしながら挨拶をして、やり過ごした。
その紳士とお姐サマが部屋へと入って行く。
キャ、キャー……ここは娼館なんだから、部屋に入ってする事といったら一つよね。
これでも人妻なのでウブウブな事は言わないけど、なんかドキドキするわね。
そういえば夫は何処に行ったのかしら?
この娼館に入ったのを確認して、わたしも掃除婦として潜入するために裏口から入ったのだけど……
その後見失ってしまった。
きっと何処かの部屋にいるはずなのに……
その時、また誰かが階段を上がって来た。
階を踏み締める足音が力強い。
重心をしっかり足腰に込めてる感じね。
足音にブレがない。
足音の主はもしかして騎士なのかもしれないわ。
そう思いながらまた屈んで顔を見せないように掃除をするフリをしてやり過ごす事にした。
でも、足音の主がどんな人なのか気になる……!
わたしは少しだけ視線を上に向けて、件の人物の方向を見やった。
かなり体の大きな紳士だわ。
まるで熊みたい。
ウチの騎士団の総団長みたいな。
そうクマ……
「ってええっ!?クマックスっ!?ふがっ……
足音の主が思わぬ人物過ぎて驚愕して声を上げてしまった瞬間に、後ろから口を塞がれ抱き寄せられた。
わたしだって一応は武術の嗜みがある。
これがただの暴漢の所業だったら反撃をしていたと思う。
でも抱き寄せられた瞬間に香った嗅ぎ慣れた香りに、わたしは抵抗するのは無意味だと悟り大人しくした。
だって、今わたしの口を塞いで後ろから抱いているのは……
わたしはチラリと後ろを仰ぎ見る。
ホラやっぱり。
それは我が愛しの旦那サマだった♡
眉間に深くシワを寄せてかなり怒ってる様子だけど。
「こんのっ……ポンコツがあぁぁ……!」
「へぇふぉん!」
「おいっ……お前、こんな所で何をしているんだ……?」
「へふぉふぁ、ふぁふぃひゃひゃひゃへふひゃひゃ……」
口を塞がれながらも一生懸命伝えようとしたら、
「ちっ」と舌打ちをされて手を離された。
もう、相変わらずキレッキレの舌打ちでシビれるぅ。
「シモンが何やらコソコソ調べているみたいだから気になって……何かあったの?我が国のピンチ?」
わたしがそう言うと、直ぐにそのまま近くの部屋に引きずり込まれた。
あ、シモンたらこの部屋にいたのね。
さて、ここでご紹介しましょう。
彼はわたしの夫で名をイコリス=オ=ジリル=シモン。
隣国モルトダーンの元第一王子だったけど、いずれ王配となる為に婿入りしてくれた。
そしてわたしはこのイコリス王国の第一王女で次代の女王、イコリス=オ=リリ=ニコルと申します。
先々月に結婚式を挙げたばかりのわたし達は新婚ホヤホヤなのだ♡
「なのだ♡じゃねえっ」
「ぎゃんっ」
ひ、久々に脳天チョップを頂きました……
わたしも落ち着いたオトナの女性になって、すっかりシモンの脳天チョップから縁遠くなっていたのに……
「何が落ち着いたオトナの女だ」
「あ、また声に出てた?」
心の声が表に出るのも相変わらずらしい。
「まさか俺が娼館で浮気してるとか疑ってないよな?」
「まさか!シモンに限ってそんな事はないと分かっているわ」
「それならいいが……ハァァァ……」
シモンが盛大にため息を吐いた。
「でも何をしているのかは気になるじゃない?あなたが動いてるなら国の大事に関わる事だろうし」
「そうやって首を突っ込もうとするから秘密裏に動いていたのに……」
「お生憎サマ。わたしのシモンセンサーを舐めないで欲しいわ。シモンのちょっとした変化もすぐに分かるんだから!」
「……喜ぶべきなのか、怖がるべきなのか判断に迷うな……」
「ふふふ」
その時、同じフロアで動きがあった。
大きな声や物が倒れたり壊れたりする音が聞こえる。
捕物が始まったような、騒然とした大きな物音が辺りに響き渡った。
わたしはシモンに腰をぐいっと引き寄せられる。
「お前はここで俺と一緒にいろ。一歩も動くな、分かったな?」
「そ、そんな恐ろしい顔しなくても飛び出して暴れたりなんかしないわよぅ……」
「どうだかな」
「部屋の外では何が起きてるの?」
「バックスを始めとするイコリスの騎士達が違法魔法薬のバイヤーを一斉に捕縛している」
「あぁ、だからさっきクマックスがいたのねって、ええっ!?違法魔法薬っ!?他の国で問題になったっ?イコリスにも入って来ているのっ!?」
こうしちゃいられない!
わたしも犯人の捕縛に協力しなくてはっ!
と思って部屋を出ようとしたけどその瞬間、シモンに横抱きにされた。
「だから大人しくしてろと言っただろうがっ!一体いつまでポンコツでいるつもりだぁ?おい゛」
あ、超絶に怒ってらっしゃる……。
きゃ、きゃぃぃ……ん。
そしてしばらくしてわたしとシモンがいる部屋にシモンの側近のアルノルトが入って来た。
「シモン殿下、バイヤーの一斉捕縛、無事に終了いたしました…って、えっ?ニコル殿下っ!?」
わたしはシモンに抱っこされたままアルノルトに挨拶をする。
「アルノルト、ご苦労様」
シモンがアルノルトに尋ねた。
「怪我人は出していないな?」
「はい。娼館側の協力を得ていたので全員無事です。騎士たちにも怪我はありません。デューダー団長が娼婦のお姐サマ方に大人気で顔中にキスの嵐が降ってましたが」
「え、何ソレ見たい」
「………」
その後城に帰ってから、シモンに落ち着いて今回の捕物の顛末を教えてもらった。
他国の王都などの主要都市で蔓延の兆しを見せた違法魔法薬。
それぞれの国の尽力のおかげで取り返しが付かなくなる前に製造販売ルートの大元を壊滅させられたそうだ。
だけど既に出回っている魔法薬の完全回収は難しいとの事だった。
その数少ない押収を逃れた魔法薬を、ウチみたいな小さな国をターゲットにして売り捌こうとしている輩がいるらしい。
そんなバイヤーが数名イコリスに入ったと、そのバイヤーの一人を昔から知っているという娼婦のお姐サマからタレ込みがあったそうなのだ。
そこでその娼婦のお姐サマと娼館の協力を得て、取り引きの場を設けてバイヤー達をおびき寄せたという事らしい。
そして数名のバイヤーが揃った所を我がイコリス騎士団が一斉に捕縛したという訳なのだ。
それをお父様やシモンが指示をして秘密裏に動いていたというのだからビックリである。
「どうしてわたしには話してくれなかったの?」
「正義感の塊のニコに話したら、絶対捜査に加わろうとする事を懸念したと言っただろう?」
「そりゃぁそうよ。国の大事に日和っていられないわ!」
「そんな性格だから黙ってたんだ」
「どうして?わたしの剣技や体術の腕はシモンも知ってるでしょう?」
「………」
わたしがそう言うと、シモンはわたしの目の前に来た。
そして額と額をくっ付けて来る。
「シモン?」
「ニコ、お前はもう俺と結婚した身だ」
「ええそうよ。ふふ、幸せ」
「……という事はいつ懐妊してもおかしくはない、という事だ。こうしている今も、じつはお腹にはもう子がいるかもしれない」
「!!」
それを聞き、わたしは思わず目を見開く。
そして途端に頬が熱くなる。
「ニコ、これからは常にそれを踏まえて行動して欲しい。日常生活は普通にしてていい。だけど荒事などに絶対に首を突っ込もうとしないでくれ。俺の心臓がいくつあっても足らん」
「う、うん……」
わたしの赤面した顔を見て、シモンが悪戯っ子の表情をする。
「なんなら、おかしな行動が取れないように毎日ベッドから起き上がれなくしてもいいんだぞ?」
「っ○☆*◎♡♡!?」
ちょっ……シモンさーーんっ!
オトナのオトコのフェロモンがダダ漏れですよーー!
ていうか貴方そういう事言うタイプでしたっけーー!?
ツンツンデレツンの王子様じゃなかったかしらぁ!?
と、わたしは心の中で叫び、羞恥心の許容範囲が振り切れたのと、イケメンな旦那様の色気にあてられてそのまま撃沈してしまった………
だけどシモンは預言者だったのかもしれない。
この時、わたしはホントに既に妊娠していて、
わたしのお腹には第一子となる子どもがいたのだった。
懐妊していた事をシモンに最初に告げた時の彼の顔は一生忘れられない。
なんだか泣き出しそうな喜ぶ顔がとても印象的だった。
その顔を見てわたしの方が泣いちゃうくらいに。
こうしてわたし達の日々は続いてゆく。
最初は婚約者として。
そして今は夫婦として。
これからは親として、共に手を携えて生きてゆくのだ。
やがて女王と王配としての役割も担う時が来る。
でも絶対に変わらないのはわたしが貴方を愛している、という事。
きっとシモンもわたしと同じ気持ちだと信じている。
そしてこれからも、わたしはポンコツながらも貴方の隣で笑って生きてゆくのだ。
おしまい
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は
「こんなに好きでごめんなさい~ポンコツ姫と捨てられた王子~」からピュアピュアな二人が夫婦になってからのその後をお届けしました。
この二人、夫婦になっても相変わらずのようです。
156
あなたにおすすめの小説
カメリア――彷徨う夫の恋心
来住野つかさ
恋愛
ロジャーとイリーナは和やかとはいえない雰囲気の中で話をしていた。結婚して子供もいる二人だが、学生時代にロジャーが恋をした『彼女』をいつまでも忘れていないことが、夫婦に亀裂を生んでいるのだ。その『彼女』はカメリア(椿)がよく似合う娘で、多くの男性の初恋の人だったが、なせが卒業式の後から行方不明になっているのだ。ロジャーにとっては不毛な会話が続くと思われたその時、イリーナが言った。「『彼女』が初恋だった人がまた一人いなくなった」と――。
※この作品は他サイト様にも掲載しています。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
初恋の呪縛
緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」
王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。
※ 全6話完結予定
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
その日がくるまでは
キムラましゅろう
恋愛
好き……大好き。
私は彼の事が好き。
今だけでいい。
彼がこの町にいる間だけは力いっぱい好きでいたい。
この想いを余す事なく伝えたい。
いずれは赦されて王都へ帰る彼と別れるその日がくるまで。
わたしは、彼に想いを伝え続ける。
故あって王都を追われたルークスに、凍える雪の日に拾われたひつじ。
ひつじの事を“メェ”と呼ぶルークスと共に暮らすうちに彼の事が好きになったひつじは素直にその想いを伝え続ける。
確実に訪れる、別れのその日がくるまで。
完全ご都合、ノーリアリティです。
誤字脱字、お許しくださいませ。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
初恋にケリをつけたい
志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」
そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。
「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」
初恋とケリをつけたい男女の話。
☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18)
☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18)
☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)
愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる