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連載
さわこさんと、花祭り その1
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ポン
ポンポン
青空に花火があがっています。
音と煙だけの花火ですね。
私が元いた世界でも、運動会なんかの開始をお知らせする際に打ち上げられていたように思います。
今朝の私は、辺境都市ガタコンベにいます。
ここで今日から1週間開催される花祭りというお祭に屋台を出させてもらうことにしているんです。
とはいえ、辺境都市トツノコンベにございます居酒屋さわこさんもお休みはしません。
日中はガタコンベで屋台
夜はトツノコンベで居酒屋さわこさん
少しハードな感じですが、こんな感じでの営業を行っていく予定にしております。
「さーちゃん、お手伝いならまかせるニャ!」
「さわこ、私をもっと頼ってもいいのよ!」
「シロも頑張る~」
「うむ、妾もお手伝いするのじゃ」
一緒にやって来たベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんのおチビさんチームの4人も、すごくやる気満々……と、思いきや……お祭の楽しげな雰囲気が気になるのでしょう、チラチラと屋台が並んでいる通りの方へ視線を向けています。
その光景に、私は思わず苦笑してしまいました。
「あの、バテアさん。申し訳ないのですがベル達と一緒にお祭りを回ってきては頂けないでしょうか?」
「そうね……今のままじゃあ、お手伝いどころじゃないみたいだしね、みんな」
私の言葉に、バテアさんも苦笑なさっておられます。
立ち上がり、ベル達の側へと歩みよっていくバテアさん。
「さぁ、おチビさん達。一緒に祭りを見て回りましょうか」
「え?……で、でも、ベルはさーちゃんのお手伝いを……」
「いいのよ、これは偵察なのよ。他にどんな店が出ているのか一緒に調べに行きましょう。その結果をさわこに報告するのよ」
「ニャ! そういうことならわかったニャ!」
バテアさんの言葉に、笑顔で右手をあげるベル。
その左右では、エンジェさん・シロ・ロッサさんも笑顔で右手をあげています。
機転を利かせて、ベル達を納得させるあたり……さすがバテアさんですね。
「じゃあさわこ、ちょっと行ってくるわね」
「はい、お気をつけて」
ベル達と手をつないで出かけていくバテアさん。
私は、その後ろ姿を笑顔で見送りました。
これで、屋台の中は、私とリンシンさん、それにミリーネアさんとマリーさんの4人になりました。
マリーさんは、バテアさんの魔法道具のお店の街道向かいの建物で喫茶店を営業している方でして、居酒屋さわこさんの常連客の方なんです。
私達が、ガタコンベの花祭りに参加することをお話したところ、
「さわこさん、私も一緒に屋台をださせてもらってはお邪魔かしら?」
そう言ってこられたのです。
マリーさんは、いろいろな都市へ出向いては、その都市で販売されている紅茶やお茶菓子なんかを研究して、その成果をご自分のお店で披露なさっているんです。
「ガタコンベには最近王都でも話題になっているスイーツがあるって聞いたことがあるから、ぜひ行ってみたいんです。それに、私のお茶やお茶菓子の新作が他の都市でどれくらい売れるかも興味がありますので」
「そういうことでしたら、喜んで」
マリーさんの申し出に、私も笑顔で同意させていただいた次第なんです。
そんなわけで、屋台の中は真ん中で仕切られています。
街道から見て右側がマリーさんの喫茶、左側が居酒屋さわこさんのスペースになっています。
私が元いた世界のお祭で出ている屋台に比べて、この都市の屋台のスペースは倍以上の広さがありますので2つに分けてもあまり狭くなった感じはしません。
「さぁ、では頑張って営業しましょうか」
「……うん、まかせて」
「うん、しっかりお手伝いする」
私の言葉に、リンシンさんとミリーネアさんが笑顔で頷いてくれました。
「はい、よろしくお願いします」
2人に笑顔で頷きながら、私はクッカドウゥドルの焼き鳥を炭火コンロの上に並べていきました。
ジュワァ~
煙と一緒に、香ばしい匂いが周囲に広がっていきます。
パタパタパタ
それを、うちわで扇ぐ私。
炭火を強くするため意味もあるのですが、同時に匂いを街道に拡散させているんです。
その効果はすぐに現れました。
「……おや、なんだかいい匂いが……」
「どうやら、この屋台からみたいだな」
街道を歩いておられたお客様達が、1人、また1人と居酒屋さわこさんの屋台の前に集まってこられました。
「いらっしゃいませ。辺境都市トツノコンベから参りました居酒屋さわこさんです。焼き鳥いかがですか?」
「ほう、この匂いは焼き鳥って食べ物の匂いなのか」
「どれ、試しに1本もらおうか」
「はい、喜んで」
お客さんの声に、笑顔と元気な声を返していく私。
焼き上がったばかりの焼き鳥を包み紙で包んでお渡ししていきます。
お客様は、早速焼き鳥を口になさったのですが……
「んん!? な、なんだこりゃ!? すごく美味いじゃないか!?」
「タレが肉にあってて、すごく美味いぞ!?」
途端に、歓喜の声をあげられるお客様達。
すると、街道を歩いておられたお客様達も、その声が聞こえたらしく……
「なんだなんだ、この店で販売している食べ物はそんなに美味いのか?」
「どれ、試しに俺も食べてみるか」
口々にそんな声をあげながら、居酒屋さわこさんの屋台へと集まってきてくださったのでございます。
居酒屋さわこさんのお店では定番メニューの、肉じゃがなんかを入れている大皿も、炭火コンロの前に並べてありまして、それをリンシンさんとミリーネアさんがお客様に勧めてくださっています。
「……これも、美味しい……どう?」
「とっても美味しいよ」
居酒屋さわこさんでも、あまり接客を得意となさっておられないリンシンさんとミリーネアさんなのですが、満面の笑顔を浮かべながら、屋台に集まられた皆様に声をかけてくださっています。
その一生懸命な感じがお客様に好感を与えたみたいです。
「よし、頑張ってるお嬢ちゃん達に免じて、その肉じゃがももらおうか」
「あぁ、こっちにもくれ」
お客様達が、笑顔でリンシンさんとミリーネアさんに声をかけてくださっています。
その声に、リンシンさんとミリーネアさんも笑顔と一緒に、よそった肉じゃがが入った容器をお渡ししてくださっています。
マリーさんの喫茶コーナーにも、お客様が集まりはじめていました。
「へぇ、これ、サケカスとか言うのが入っているのね、おばちゃま、とっても美味しいと思うの。そうね、ヤルちゃまには及ばないけどね」
「はい、ありがとうございます」
以前、私と一緒に開発した酒粕のジェラートを食べておられる年配の女性の方が嬉しそうに笑顔を浮かべておられます。
マリーさんも、その方に笑顔を返されています。
そんな感じで忙しく屋台を切り盛りしていると……
「さわこ、帰ったわ」
バテアさんが、街道の向こうから歩いてこられました。
その左右には、ベルをはじめとしたおチビさんチームの4人が寄り添っているのですが……みんな手に手に串焼きを持っています。
「さーちゃん、この串焼き美味しかったニャ」
「向こうの屋台のおじさんがくれたのよ」
「うん、美味しい」
「じゃが、さわこの焼き鳥の方が美味いのじゃ」
嬉しそうに串を見せてくれるベル達。
短時間でしたけど、お祭を回れて楽しかったのでしょうね、みんなとっても嬉しそうです。
「じゃあ、ベルはさーちゃんのお手伝いをするニャ!」
そう言うと、ベルはエプロンを身につけていきました。
エンジェさん達もそれに続いています。
「じゃ、アタシはこっちね」
バテアさんは、魔法で着物に着替えると、日本酒の一升瓶と紙コップを手になさっていきました。
「はい、皆さんよろしくお願いします」
私は、そんなみんなに笑顔で頭をさげていきました。
居酒屋さわこさんの屋台は、今から本営業開始です。
ーつづく
ポンポン
青空に花火があがっています。
音と煙だけの花火ですね。
私が元いた世界でも、運動会なんかの開始をお知らせする際に打ち上げられていたように思います。
今朝の私は、辺境都市ガタコンベにいます。
ここで今日から1週間開催される花祭りというお祭に屋台を出させてもらうことにしているんです。
とはいえ、辺境都市トツノコンベにございます居酒屋さわこさんもお休みはしません。
日中はガタコンベで屋台
夜はトツノコンベで居酒屋さわこさん
少しハードな感じですが、こんな感じでの営業を行っていく予定にしております。
「さーちゃん、お手伝いならまかせるニャ!」
「さわこ、私をもっと頼ってもいいのよ!」
「シロも頑張る~」
「うむ、妾もお手伝いするのじゃ」
一緒にやって来たベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんのおチビさんチームの4人も、すごくやる気満々……と、思いきや……お祭の楽しげな雰囲気が気になるのでしょう、チラチラと屋台が並んでいる通りの方へ視線を向けています。
その光景に、私は思わず苦笑してしまいました。
「あの、バテアさん。申し訳ないのですがベル達と一緒にお祭りを回ってきては頂けないでしょうか?」
「そうね……今のままじゃあ、お手伝いどころじゃないみたいだしね、みんな」
私の言葉に、バテアさんも苦笑なさっておられます。
立ち上がり、ベル達の側へと歩みよっていくバテアさん。
「さぁ、おチビさん達。一緒に祭りを見て回りましょうか」
「え?……で、でも、ベルはさーちゃんのお手伝いを……」
「いいのよ、これは偵察なのよ。他にどんな店が出ているのか一緒に調べに行きましょう。その結果をさわこに報告するのよ」
「ニャ! そういうことならわかったニャ!」
バテアさんの言葉に、笑顔で右手をあげるベル。
その左右では、エンジェさん・シロ・ロッサさんも笑顔で右手をあげています。
機転を利かせて、ベル達を納得させるあたり……さすがバテアさんですね。
「じゃあさわこ、ちょっと行ってくるわね」
「はい、お気をつけて」
ベル達と手をつないで出かけていくバテアさん。
私は、その後ろ姿を笑顔で見送りました。
これで、屋台の中は、私とリンシンさん、それにミリーネアさんとマリーさんの4人になりました。
マリーさんは、バテアさんの魔法道具のお店の街道向かいの建物で喫茶店を営業している方でして、居酒屋さわこさんの常連客の方なんです。
私達が、ガタコンベの花祭りに参加することをお話したところ、
「さわこさん、私も一緒に屋台をださせてもらってはお邪魔かしら?」
そう言ってこられたのです。
マリーさんは、いろいろな都市へ出向いては、その都市で販売されている紅茶やお茶菓子なんかを研究して、その成果をご自分のお店で披露なさっているんです。
「ガタコンベには最近王都でも話題になっているスイーツがあるって聞いたことがあるから、ぜひ行ってみたいんです。それに、私のお茶やお茶菓子の新作が他の都市でどれくらい売れるかも興味がありますので」
「そういうことでしたら、喜んで」
マリーさんの申し出に、私も笑顔で同意させていただいた次第なんです。
そんなわけで、屋台の中は真ん中で仕切られています。
街道から見て右側がマリーさんの喫茶、左側が居酒屋さわこさんのスペースになっています。
私が元いた世界のお祭で出ている屋台に比べて、この都市の屋台のスペースは倍以上の広さがありますので2つに分けてもあまり狭くなった感じはしません。
「さぁ、では頑張って営業しましょうか」
「……うん、まかせて」
「うん、しっかりお手伝いする」
私の言葉に、リンシンさんとミリーネアさんが笑顔で頷いてくれました。
「はい、よろしくお願いします」
2人に笑顔で頷きながら、私はクッカドウゥドルの焼き鳥を炭火コンロの上に並べていきました。
ジュワァ~
煙と一緒に、香ばしい匂いが周囲に広がっていきます。
パタパタパタ
それを、うちわで扇ぐ私。
炭火を強くするため意味もあるのですが、同時に匂いを街道に拡散させているんです。
その効果はすぐに現れました。
「……おや、なんだかいい匂いが……」
「どうやら、この屋台からみたいだな」
街道を歩いておられたお客様達が、1人、また1人と居酒屋さわこさんの屋台の前に集まってこられました。
「いらっしゃいませ。辺境都市トツノコンベから参りました居酒屋さわこさんです。焼き鳥いかがですか?」
「ほう、この匂いは焼き鳥って食べ物の匂いなのか」
「どれ、試しに1本もらおうか」
「はい、喜んで」
お客さんの声に、笑顔と元気な声を返していく私。
焼き上がったばかりの焼き鳥を包み紙で包んでお渡ししていきます。
お客様は、早速焼き鳥を口になさったのですが……
「んん!? な、なんだこりゃ!? すごく美味いじゃないか!?」
「タレが肉にあってて、すごく美味いぞ!?」
途端に、歓喜の声をあげられるお客様達。
すると、街道を歩いておられたお客様達も、その声が聞こえたらしく……
「なんだなんだ、この店で販売している食べ物はそんなに美味いのか?」
「どれ、試しに俺も食べてみるか」
口々にそんな声をあげながら、居酒屋さわこさんの屋台へと集まってきてくださったのでございます。
居酒屋さわこさんのお店では定番メニューの、肉じゃがなんかを入れている大皿も、炭火コンロの前に並べてありまして、それをリンシンさんとミリーネアさんがお客様に勧めてくださっています。
「……これも、美味しい……どう?」
「とっても美味しいよ」
居酒屋さわこさんでも、あまり接客を得意となさっておられないリンシンさんとミリーネアさんなのですが、満面の笑顔を浮かべながら、屋台に集まられた皆様に声をかけてくださっています。
その一生懸命な感じがお客様に好感を与えたみたいです。
「よし、頑張ってるお嬢ちゃん達に免じて、その肉じゃがももらおうか」
「あぁ、こっちにもくれ」
お客様達が、笑顔でリンシンさんとミリーネアさんに声をかけてくださっています。
その声に、リンシンさんとミリーネアさんも笑顔と一緒に、よそった肉じゃがが入った容器をお渡ししてくださっています。
マリーさんの喫茶コーナーにも、お客様が集まりはじめていました。
「へぇ、これ、サケカスとか言うのが入っているのね、おばちゃま、とっても美味しいと思うの。そうね、ヤルちゃまには及ばないけどね」
「はい、ありがとうございます」
以前、私と一緒に開発した酒粕のジェラートを食べておられる年配の女性の方が嬉しそうに笑顔を浮かべておられます。
マリーさんも、その方に笑顔を返されています。
そんな感じで忙しく屋台を切り盛りしていると……
「さわこ、帰ったわ」
バテアさんが、街道の向こうから歩いてこられました。
その左右には、ベルをはじめとしたおチビさんチームの4人が寄り添っているのですが……みんな手に手に串焼きを持っています。
「さーちゃん、この串焼き美味しかったニャ」
「向こうの屋台のおじさんがくれたのよ」
「うん、美味しい」
「じゃが、さわこの焼き鳥の方が美味いのじゃ」
嬉しそうに串を見せてくれるベル達。
短時間でしたけど、お祭を回れて楽しかったのでしょうね、みんなとっても嬉しそうです。
「じゃあ、ベルはさーちゃんのお手伝いをするニャ!」
そう言うと、ベルはエプロンを身につけていきました。
エンジェさん達もそれに続いています。
「じゃ、アタシはこっちね」
バテアさんは、魔法で着物に着替えると、日本酒の一升瓶と紙コップを手になさっていきました。
「はい、皆さんよろしくお願いします」
私は、そんなみんなに笑顔で頭をさげていきました。
居酒屋さわこさんの屋台は、今から本営業開始です。
ーつづく
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