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迷惑な勇者
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アルティメットガールに予想外の反撃をされたマグフレアは、顎に指を当てて何事か考えている。
「カイルだったか。そいつとの戦いを見る限りじゃ、あんたがここまでヤル奴とは思えなかった。印象としては、そうとうな身体能力はあるが戦い方は力任せなうえにムラがある未熟な奴だなってよ。今後のためにどの程度か探りを入れようとしただけだったが、さっきよりも力強いじゃねぇか」
(それはあなたが彼より強いからよ)
だが、そんなことを口にすれば、面倒なことになりそうなので彼女はそれを口にはしなかった。
「あんたから伝わる余裕な感じと余裕のなさはなんだろうなぁ」
「力試しだったわけね。それでお眼鏡にかなったかしら?」
「わからねぇ。力を込めているようでありながらそれほどでもなく、手を抜いているようでありながら思った以上の力を感じる」
考えるほどにわからないマグフレアは、突き立てた剣の鍔に肘を乗せて頬杖をついていた。
「女性のことを理解することは男性の永遠の課題よ。強さだけじゃなくて男磨きと感性を高めることに努めるべきね」
「そうか、ならば俺ともっと交わってくれ」
引き抜いた聖剣をぐるりと回して構えると、マグフレアの闘気が荒ぶり高まる。それは先ほどまで無かった意思ある闘気。
乱入者が現れるたびに状況が変わり、戦いのレベルも上がっていく。比例するように緊張感も増していくのだが、その元凶となるふたりの空気だけが緩い。
「残念だけどわたしの興味はあなたにないの。自分に見合った人を見つけられることを願っているわ」
彼の意思を手の甲で弾くしぐさで返し、彼女は低空で素早く後方に下がってエリオとカイルを抱えた。
「アルティメットガール?!」
エリオはその行動に驚きながらも彼女に身を任せると、続けてザックも反対の腕で抱え込む。
「おい、なにを?!」
「レミさん、マルクスさん、足に捕まってください」
名を呼ばれた彼らが離陸しながら向かってくる彼女の足を慌てて掴むと、体がグンと上空に引っ張り上げられた。
「あっ! 逃げやがった!」
「これ以上あなたとお付き合いする気はないわ。じゃぁねぇぇぇ」
アルティメットガールは聖域パーンへと向かったセミールを追いかけて飛び去った。
「くそっ。飛んで逃げるのかよ。行き先は聖域か? 奴らの目的が成長の壁の突破なら儀式は聖域でおこなうか。そのついでにまた結界を張られたら面倒だな」
「面倒なのはおめぇだぜ、バーンエンド」
飛び去るアルティメットガールを見ながらブツブツとつぶやいているマグフレアを、ハークマイン兵が取り囲んでいた。
「おめぇはここで捕まえる。聖剣は返却、勇者の称号も返上。ふたつ名は消失しておめぇは監獄行きだ」
「人数そろえただけで俺が捕まえられると? 聖剣を使わなくったって無理なことだぜ」
聖剣を鞘に納めて背負った彼の行動が、絶対の自信の現れだ。
サクバーンと共にマグフレアへにじり寄るハークマイン兵たち。目の前で彼の強さを見たことで兵たちはこれ以上ないほど緊張しているのだが、サクバーンは笑いながら言った。
「タイミングが悪かったな」
「なに?」
「俺たちは彼らを追ってきた」
「それがどうした? ヴェルガンはそうとうな素質を持っている。これからグングン強くなっていくだろうが、俺に比べりゃまだまだだ。あいつに対して用意した戦力で俺を抑えられるかよ」
二百名を超える兵の中には王具を使わない素エリオと同格の者は数人いる。それ以外の者でもかなりの手練れで構成されていた。
「舐めるな。と言いたいが、さすがに爆炎の勇者相手じゃ役不足だな」
「ならその自信はどこから来るんだ? お前が俺の相手を?」
「最前線を退いた俺が王具も無しにおめぇと戦えるもんかよ」
こう返すサクバーンの表情には強い緊張があったが、マグフレアは彼の瞳の奥の自信を察し、わずかに警戒心を強めて聞き返した。
「……だったらどうする?」
「俺たちが追ってきたヴェルガンは賢者の石を所持していた。それに対する対策を持ってここにやってきたってことだ! 全魔道具起動」
サクバーンの合図に兵たちは体の陰に隠していた魔道具を振り上げた。
「「「アクティベーション」」」
数種類の魔道具が持ち主の魔力を受けて起動し、ドーム状の結界を生成する。その結界は精霊への交信を阻害し、力場が対象を抑え、内部には電撃が荒れ狂う。
「ぐがぁぁぁぁぁぁ……」
抗うマグフレアだが賢者の石を持つ者を想定して用意された魔道具の力は半端ではない。聖剣を抜いていても対抗できるか怪しい拘束効果で彼は封殺されていた。
「抵抗して力を使い果たしたところで完全拘束する。ぬかるな!」
魔道具を使う者たちも効果にともなう力を吸われている。エリオが用意した拘束魔道具とは違い、使用者の力量によってその効果が上下するため、彼らも必死だった。
「こいつは……想定外だったぜ。こりゃ無理だ」
その声が聞こえたサクバーンはほくそ笑んだが、続く言葉を聞いて表情を一変させる。
「……今までの俺だったらな」
「なんだと?」
「ブレイクシャックルチェーン」
マグフレアから発せられた光が拘束する結界を内側から打ち破る。
「うおぉぉぉぉぉぉ」
気が付くとサクバーンはベッドの上だった。まわりには部下たちが全身を包帯で巻かれて寝かされており、自分が身動きできない理由が同じだと理解する。
「畜生め」
朧げな記憶はマグフレアから広がる灼熱の熱波を受けたところで途切れていた。
「カイルだったか。そいつとの戦いを見る限りじゃ、あんたがここまでヤル奴とは思えなかった。印象としては、そうとうな身体能力はあるが戦い方は力任せなうえにムラがある未熟な奴だなってよ。今後のためにどの程度か探りを入れようとしただけだったが、さっきよりも力強いじゃねぇか」
(それはあなたが彼より強いからよ)
だが、そんなことを口にすれば、面倒なことになりそうなので彼女はそれを口にはしなかった。
「あんたから伝わる余裕な感じと余裕のなさはなんだろうなぁ」
「力試しだったわけね。それでお眼鏡にかなったかしら?」
「わからねぇ。力を込めているようでありながらそれほどでもなく、手を抜いているようでありながら思った以上の力を感じる」
考えるほどにわからないマグフレアは、突き立てた剣の鍔に肘を乗せて頬杖をついていた。
「女性のことを理解することは男性の永遠の課題よ。強さだけじゃなくて男磨きと感性を高めることに努めるべきね」
「そうか、ならば俺ともっと交わってくれ」
引き抜いた聖剣をぐるりと回して構えると、マグフレアの闘気が荒ぶり高まる。それは先ほどまで無かった意思ある闘気。
乱入者が現れるたびに状況が変わり、戦いのレベルも上がっていく。比例するように緊張感も増していくのだが、その元凶となるふたりの空気だけが緩い。
「残念だけどわたしの興味はあなたにないの。自分に見合った人を見つけられることを願っているわ」
彼の意思を手の甲で弾くしぐさで返し、彼女は低空で素早く後方に下がってエリオとカイルを抱えた。
「アルティメットガール?!」
エリオはその行動に驚きながらも彼女に身を任せると、続けてザックも反対の腕で抱え込む。
「おい、なにを?!」
「レミさん、マルクスさん、足に捕まってください」
名を呼ばれた彼らが離陸しながら向かってくる彼女の足を慌てて掴むと、体がグンと上空に引っ張り上げられた。
「あっ! 逃げやがった!」
「これ以上あなたとお付き合いする気はないわ。じゃぁねぇぇぇ」
アルティメットガールは聖域パーンへと向かったセミールを追いかけて飛び去った。
「くそっ。飛んで逃げるのかよ。行き先は聖域か? 奴らの目的が成長の壁の突破なら儀式は聖域でおこなうか。そのついでにまた結界を張られたら面倒だな」
「面倒なのはおめぇだぜ、バーンエンド」
飛び去るアルティメットガールを見ながらブツブツとつぶやいているマグフレアを、ハークマイン兵が取り囲んでいた。
「おめぇはここで捕まえる。聖剣は返却、勇者の称号も返上。ふたつ名は消失しておめぇは監獄行きだ」
「人数そろえただけで俺が捕まえられると? 聖剣を使わなくったって無理なことだぜ」
聖剣を鞘に納めて背負った彼の行動が、絶対の自信の現れだ。
サクバーンと共にマグフレアへにじり寄るハークマイン兵たち。目の前で彼の強さを見たことで兵たちはこれ以上ないほど緊張しているのだが、サクバーンは笑いながら言った。
「タイミングが悪かったな」
「なに?」
「俺たちは彼らを追ってきた」
「それがどうした? ヴェルガンはそうとうな素質を持っている。これからグングン強くなっていくだろうが、俺に比べりゃまだまだだ。あいつに対して用意した戦力で俺を抑えられるかよ」
二百名を超える兵の中には王具を使わない素エリオと同格の者は数人いる。それ以外の者でもかなりの手練れで構成されていた。
「舐めるな。と言いたいが、さすがに爆炎の勇者相手じゃ役不足だな」
「ならその自信はどこから来るんだ? お前が俺の相手を?」
「最前線を退いた俺が王具も無しにおめぇと戦えるもんかよ」
こう返すサクバーンの表情には強い緊張があったが、マグフレアは彼の瞳の奥の自信を察し、わずかに警戒心を強めて聞き返した。
「……だったらどうする?」
「俺たちが追ってきたヴェルガンは賢者の石を所持していた。それに対する対策を持ってここにやってきたってことだ! 全魔道具起動」
サクバーンの合図に兵たちは体の陰に隠していた魔道具を振り上げた。
「「「アクティベーション」」」
数種類の魔道具が持ち主の魔力を受けて起動し、ドーム状の結界を生成する。その結界は精霊への交信を阻害し、力場が対象を抑え、内部には電撃が荒れ狂う。
「ぐがぁぁぁぁぁぁ……」
抗うマグフレアだが賢者の石を持つ者を想定して用意された魔道具の力は半端ではない。聖剣を抜いていても対抗できるか怪しい拘束効果で彼は封殺されていた。
「抵抗して力を使い果たしたところで完全拘束する。ぬかるな!」
魔道具を使う者たちも効果にともなう力を吸われている。エリオが用意した拘束魔道具とは違い、使用者の力量によってその効果が上下するため、彼らも必死だった。
「こいつは……想定外だったぜ。こりゃ無理だ」
その声が聞こえたサクバーンはほくそ笑んだが、続く言葉を聞いて表情を一変させる。
「……今までの俺だったらな」
「なんだと?」
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「うおぉぉぉぉぉぉ」
気が付くとサクバーンはベッドの上だった。まわりには部下たちが全身を包帯で巻かれて寝かされており、自分が身動きできない理由が同じだと理解する。
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