爆力! アルティメットガール ~戦いを終えたヒーローは、異世界の日常という非日常の中で幸せを求め、新たな人生を歩き出す~

プオン

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真意

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「本当に大丈夫なのか?」

(エリオさんに心配してもらえるなんて。これがハルカだったらもっと良かったのに)

「一時的なことです。お気になさらないでください」

  滲む汗と顔色が彼女の状態の悪さを物語っている。だが、エリオを抱えているという感激と緊張でその苦しさは緩和されていた。

「いました。セミールさんの馬車です」

  馬車を追い越したアルティメットガールは少しだけ減速して高度を下げていく。

「おい、セミール。アルティメットガールだぞ」

  馬車を操るフォーユンに呼ばれてセミールが荷台から前にやってくる。フォーユンが指さす方向を見ると、エリオたちを抱えたアルティメットガールが降下してきた。

  減速して止まった馬車の前にマルクスとレミが飛び降り、ザックとエリオも降ろされる。

「エリオ! 我がライバルよ、無事だったよう……だ……、おわぁぁぁぁ!」

  彼らを出迎えに馬車から跳びおり駆け寄っていったセミールは、大きな声を上げて急制動をかけた。それは、エリオが抱える者を見たからだ。

「そいつは!」

「心配するな。決着はついた」

  地面に降ろされて座るカイルの上目遣いが睨んでいるように見えたため、セミールは以前のように卒倒しないまでも全身を硬直させて腰を落としてしまった。

「どういうことですか? いったいなにが?」

  そのセミールに代わってフレスが説明を求めるのだが、エリオたちは口ごもっている。

「いろいろあり過ぎてどう話せばいいのか」

  返答に悩むザックの横で、アルティメットガールはいつものような快活さ無くカイルに言った。

「カイル。約束どおり答えてもらうわ。あなたの真意を」

「真意か。俺も確かめたい。お前から感じた不自然さの正体をな」

  アルティメットガールとエリオが言いだしたこととその空気に、仲間たちは困惑している。

「カイル? それって彼の名前?」

「真意ってなんだ?」

  戦いの場にいなかったフレスとフォーユンは、カイルとエリオを交互に見ていた。
「このことが思ったとおりなら、わたしの仕事も心配も減るのよね。ということでカイル。質問……というかわたしの予想を聞いて」

  アルティメットガールたちに囲まれているカイルはおとなしく座っている。これまで何度も彼らを震撼しんかんさた魔族とは、同一人物とは思えないほど覇気なく静かに。

「あなたはエリオさんたちを殺すつもりはなかったでしょ?」

  最初のひと言めからあり得ない予想を口にした彼女を皆は凝視した。

「エリオさんたちだけじゃないわ。たくさんの魔造人形を操ってビギーナの町に来たときも、結界を突き破ってゴレッドさんたちを挑発したときも、城塞都市でセミールさんを追いかけたときも、さっきの戦いでも、彼は人を殺すつもりはなかったのだと思うわ」

  この言い分に対してマルクスはすぐに反論した。

「初めて町を攻めてきたときのこいつの殺気をあんたも感じたろ? そのあとギルドにやってきたときだって。俺は正直チビリそうなほどビビってた。殺されるってな」

「あたしもよ。あそこで殺されるんだって……」

「そうね。あなたたちがそう思ってしまうほどに怒っていたんでしょうね。きっと最初はその怒りから冷静さを失っていたんじゃないかしら」

「そう思う根拠はあるのか?」

  ザックの質問に彼女はコクリとうなずく。

「何十体もの魔造人形を操って町に現れたのは自分が直接手を下さないためね。怒りのままにやり過ぎないように。そういった抑制だと思えるの。それに、突然現れた大蛇に魔造人形が組み付いていったように見えたのは、皆に大きな被害が出ないようにと受け取れるわ。カイルもきっとびっくりして思わず駆け付けてきちゃったのよ。姿を消していた彼にわたしが気付けたのはそのためね」

「だけどよう、それだけじゃ説得力としては……」

  これだけではマルクスは信じられず、怪訝な目で彼女に言った。

「わたしもそのときはそう思わなかった。だけど、次に町に現れたときに使ったあの黒い球の魔法。かなり手加減していたと思うの」

  【ソーラエクリプス・クリメイション】という魔法によってそこら一体は消し飛ぶと感じたことを思い出し、彼らは肌を泡立てた。

「わたしが蹴り返して彼が自分で食らっちゃったけど、空で爆発したときの現象が不自然だったのよ。縦に長く伸びるように爆発が制御されていた感じで」

「どういうことだ?」

  ザックはまだ理解できていない。

「もし、わたしがあの魔法を受けていても、周りの被害の規模は小さかっただろうってこと。それにね、魔法で吹き飛ばされたハルカさんをわたしが助けたときだけど、風に巻かれいた彼女は地面に近付くにつれて減速しいったの。着地のときにはその風によって守られているような感じだったしね」

  彼にはエリオたちを殺す気がなかったという。このアルティメットガールの予想が信じられず、皆は驚き顔でカイルを見た。
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