尊い国のアリス

仙 岳美

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アリスとアライグマ

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 アリスは庭の水道で手を洗っていました。
その理由は、もうすぐランチだからです。
そしてそのまた理由は、先に手を洗っておけば、早くランチが食べれるからです。
アリスは石鹸を手に擦り着け、爪先の裏まで入念に爪の下に爪を入れ洗います。
すると横からヌッと知らない手が出て来て、両手を擦り合わし始めました。
降り向くとその正体は白いアライグマでした。
アライグマはアリスに言いました。
「いつまで手を洗ってるんだい、待ちきれず横から入ってしまったよ」
アリスはそうせかされたので洗うのを止めてハンカチを取り出し少し気になっていた事を手を拭きながら、たずねました。

「アライグマさんが手を洗う意味はあるの?」
「お、君は僕の言葉が理解できるのかい天才だな」
「……」

「アリスー、ご飯よー」
待ちに待ったお母さんの声がしたのでアリスは家の中に入りました。
ハム、ツナ、タマゴ、お肉を挟んだ三角のサンドウイッチが四個お皿に乗って用意されていました。
手を洗ったかいがありました。

窓からさっきのアライグマが覗いていました。
その顔は羨ましいそうに見えました。
、から、アリスはお母さんに言いました。
「あのアライグマさんに一つサンドウイッチあげていい?」
お母さんは言いました。
「アライグマさんには、アライグマさんの食べ物があるから、ダメよ」
「ダメなの?」
「お腹壊しちゃうから」
アリスは頷きながらも一番楽しみにしていた、ローストビーフのサンドウイッチを残し、お母さんが台所に行った隙に、お皿を両手に持ち外に出ました。
両手はお皿でふさがっていたのでちゃんと靴を履けて無かったので片方の靴は投げてしまいました。
遠くの方にまだアライグマが見えました。
アリスは追いかけました。
そして少し離れた廃教会のテラスの下に潜り込んで行くアライグマの背中が見えました。
アリスもお皿の上のサンドウィッチに予備と言う事で持ったいぶって使わないでいた綺麗なブルーな金縁のハンカチをかぶせて低い姿勢でテラスの下に潜り込みました。
しゃがみながら蜘蛛の巣などに気を付けて進みます。
やっぱり奥にアライグマがいました。そこには、フカフカの藁のベットとがあり、数本の色々な花も差した空き瓶もありました。
アライグマは差し込んでる光りの下で分厚い本を読んでいました。
アリスは後ろからその本を覗き込み言いました。
「それは聖書ね」
「うん、有難い言葉をいつも頂いているよ、そして読みがいがあり、毎回見るたびに、発見があり少し内容も違う気がするんだ、これは良い物を拾ったよ、えっ!」
とそこまで言ってアライグマは、ややビックリして背側にしゃがんでいるアリスの方に振り向きました。
アリスはアライグマにハンカチを退けたサンドウィッチをサッと差し出しました。
「え、持って来てくれたの、僕にくれるのかい」
「ええ、あなたも手を洗っていたでしょ」
アライグマはサンドイッチを食べながら言いました。
「うん、やはり火の入った人間の食べ物は美味しいね、特にこのマヨネーズはエレガントに最高傑作だね、考えた人は凄いよ」
「凄いの?」
「うん、人間は本当に凄いよ、調べれは調べる程に感心するよ、中でも安心して寝れるあの鍵は羨ましい、僕に出来た事は真似して手を洗う事くらい迄だったよ、そして今日はありがとう」
「よかったね」
とアリスは言いました。
「うん、今まで良い事はひとつも無かったけど、今日は本当に良い日たよ、死ぬのが惜しくなったよ」
「あなた死ぬの?」
「うん、まだ少し先だけど、近いね」
「近いの」
「うん、身体中の毛の色が抜けて来たからね、僕には飲む薬も無いしね、繰り返すけど人間は本当に凄いよ、生まれ変わりで魂の時を繋ぎ、やがては死すら克服し、その時には作り出したあの完璧な神様さえもいらなくなるだろうね」
「……毛なら染めれば良いのよ、お母さんもそうしてるから、持って来てあげる」
「それは助かるよ」
とアライグマは藁の寝床の下から色とりどりの銀紙に小分けに包まれた色々な形の大小なチョコレートが沢山入った袋を取り出しました。
「君はお客様だから大きいの三つあげるよ、本当はもっとあげたいけど、人間のお菓子は中々手に入らないから、毎日ちょっとづつ食べてるんだ」

「お菓子も持って来てあげるわ、待ってて」

とアリスは家へ髪染め薬を取りに戻ると、玄関にお母さんが立っていました。
お母さんは言いました。
「アリスはズーとアライグマさんのお世話をできるの?」

アリスは少し考えて今は無理と答えを出し、首を横に振りました。
そしてアリスは足を洗い、アライグマさんとはそのままお別れしました。

[終]


解説
 チャイルドパワー、それは子供の頃にのみ携わっている特殊能力。内容的には、高所から落ちても怪我をしなかったり、やたらクジ運が高かったり、動物の言葉が理解できたり、精霊や悪霊が見えたり、人の死期を感じたり、親が無くした物をアッサリと見つけたり。
その多くは成長と共に役目を終えた様に消えて行く。
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