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3歳

話をしましょう

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次の日、すぐにシューヤがやってきた。

とりあえず、話がしたい。とのことだそうだ。

普段なら朝ご飯の後は家の中を散歩がてら一回りするのだが、
取りやめてシューヤと向き合う。
髪の色と瞳の色は両方ともこげ茶色になっている。
落ち着いた顔をしているため、記憶の混乱なんかもあまりなかったようだ。
イシュトが前に紅茶を置いてくれる。

「まず始めに、昨日夢の中で神様に土下座されたよ」

・・・・え?

言われた内容にポカーン。となる。

「なんでも、夢の中で門前払いを食らったと泣きながら言われて・・・
 心当たりは?」

「・・・あー・・・」

うん。門前払い、とはちょっと意味合いが違う気がするけど、似たようなものか。

「いやぁ、えと・・・うーん、まぁ、なくはない。
 ちょっとかんじょうてきになっちゃった」

ふと、後ろを見るとイシュトが困った顔をしている。

「イシュト、おちつかないからこっちにすわってほしい」

「とりあえず、イシュト君もどこまで何を知っているのかを教えてほしい」

シューヤもイシュトに座るように促す。

「では、失礼します」

自分用にも紅茶を入れて、私の横へ座るイシュト。
長くなりそうだもんね。

「先に僕のことから話そうか。
 ネージュ様は視たと思うけど、
 僕はこの世界に転移するはずだったんだ。
 転移する時に手違いがあったらしい、
 赤子まで体が退行して、記憶を忘れていたんだ」

「うん、みた。
 なまえをみるときにみえたのは、わたしにルエルとなのったかみさまだったの。
 そのまえにみえたのが、シューヤのいままでのきおくで・・・」

「魔力は普通の宮廷魔法使いが5、6人ぐらいでならかかってきても
 涼しい顔して返り討ちにできるほどの魔力を有する平民、
 しかも孤児。
 魔法使いなぞほとんどが貴族しかいないもんだから、
 なかなか当たりはきつかったよねぇ」

笑顔でさらりと流すシューヤ。
うん、視たけど、その「当たり」はなかなかにヘビーだったと思うよ?

「なかなか、って、なんどもしにかけてなかった??」

「結構しっかり視えていたのかな?
 まぁ、しんどかったけど、今ここに生きてるからいいじゃないか。
 その辺の話は置いておいて・・・
 僕はこっちに来る前は20歳すぎ、19ぐらいから病気持ちでいたから
 その話をするとその前ぐらいまで体の年齢を戻して健康な状態で、って話だったんだけどね。
 簡単に言うと、やりすぎたらしい。
 あと、こっちの世界の精霊さんに気に入られたらしくて、あんな姿になったらしい。
 まぁ、事故だよね。
 昨日夢に来たルエルさんがネージュ様に門前払い食らった後に調べたらしいよ。
 土下座した後教えてくれたよ。
 ルエルさんも僕をこちらに送った後何度か様子を見ようとしたらしかったんだけど、
 精霊さんがいたからか、うまく見れなかったっていってたよ。
 だから、僕の状態は把握していなかったんだ。
 一応、この世界に来る前の記憶も思い出した。
 日本で大学生をやっていたよ、ネージュ様には通じるかな?」

「あら、どうきょうね?」

「ああ、やっぱりそうなんだね」

『日本ではどこにいた?
 僕は残念ながら親の都合であちこちいっていたから、ここに来る前は田舎にいた記憶はあるけど』

『この世界のどこかで日本語は使われているの?』

シューヤがいきなり日本語で話し出したため、ひとまず日本語で返す。

『うーん・・・僕の知るかぎりではないかな』

「では、このはなしはまたのきかいに、ってところかしら?」

こちらの言葉で返すとシューヤからは苦笑い。

「ひとまず、僕の方からはこんなところだね」

ふぅ、とシューヤが一息。

「うーんっとぉ、どこまではなしたほうがいいのかなぁ?」

「とりあえず、私が把握している部分に関しては話してもいいかと思われますよ」

私の横でお茶を飲みながらイシュトが答える。

「イシュトがしってるところって、たぶんほとんどだとおもうのだけれど?」

「問題はないかと思われますよ。
 まぁ、少々長くなるので少し休憩を入れた方が良いかもしれませんが。
 オブライエン辺境伯も特に問題はないだろうとおっしゃっておられましたので。
 さすがに、シューヤさんにそのような事情があったとは知りませんでしたが
 これからネージュ様がやりたいことも私よりも理解されているのではありませんか?」

「・・・まぁ、それはそうなんだけどね」

「後、もしかしたらなのですが、
 シューヤさんのほかにも能力はあっても身分がないがために、
 もしくは低いためにどうにもならないなどという人がいるなら、
 こちらに来てもらうというのも一つの手でしょう。
 ネージュ様のやりたいことは結構多岐に渡りますから、
 その道の専門がいれば言うことはないですし、
 そうでなくてもよく知った方がいるのといないのとではかなりの差がありますからね」

「・・・・・ごもっともです」

「私からシューヤさんに話した方がよろしいですか?」

「いや、じぶんではなします。
 ただ、なんだかおはなしばっかりでつかれてきたから、
 すこしおそとにでたい」

ずっと話ばっかりしているのもすぐ疲れる。
ある程度は体を動かさないとなんだか逆にしんどいんだよねぇ。

ちょっと寒いのがつらいけど、冬は寒いものだよね。

「では、いつもの庭に行きましょうか。
 シューヤさんも散歩がてら外に出ましょう。
 私は軽食をもらってきます」

静かにイシュトは部屋を出ていく。

「じゃぁシューヤ、おにわにいきますか」

「庭って、僕が倒れていた所かい?」

「あそこはいまたちいりきんしにされているの。
 だから、いつもわたしたちがあそびながらかんていのれんしゅうをしているおにわのほう。
 ついてきてちょうだい」

部屋を出て小走りでシューヤの前に出るも、
どうしても身長の差で追いつかれてしまう。

頑張って小走り、というより、走っていつもの庭、小さな東屋にたどり着く。

うん。なぜかガゼポじゃなくて東屋なんだ。
ちょっぴり和風。

「・・・なんか、懐かしい感じがするのはなんでだろう?」

「ちょっとわふうていすとはいってるからじゃない?」

一番奥の椅子に座り、周囲を見渡す。

・・・うん、特に何かある感じはないし、人もいない。

「とりあえず、しゅういにはなにもないからはなしてもだいじょうぶそうよ」

「お待たせしました。
 料理人からシューヤさんの朝ご飯も預かってきましたよ。
 まだ食べていないそうですね?」

「いや、僕は朝はそんなに入らない方なんだよ・・・」

「ええ、ここの使用人たちはよく食べる人が多いので、かなり多めなんですよ。
 私も最初は驚きましたけど。
 なので、少なくしてもらうように話しておきました。
 簡単に食べられるようなものをもらってきましたので、
 ちゃんと食べてください。
 また倒れますよ。
 ネージュ様はこちらです」

小さなテーブルに飲み物と小さなサンドイッチが用意されている。
いつもは私のおやつ分だけだけど、
シューヤの分として私の倍ほどの量のサンドイッチ。

「シューヤさんには食べながら聞いてもらいましょうか、ネージュ様」

「そうね」
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