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安堵と感謝
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3ヶ月と14日後。
「うん、順調だ。」
鵺野医師は、エコーの画面を見ながら笑顔であずさに言った。
「…どれが赤ちゃん?」
一緒に来院してきた拓海が画面を指差しながら聞いた。
「もう、わかんないのぅ?ほら、あのへん、頭みたいな形してるでしょ?」
あずさが画面に向かって丸を描きながら教えた。
「ん?…あ!ほんとだ!…ということはあれが身体で…あの濃い色した部分が心臓…か?」
興奮している拓海に、鵺野医師が頷いた。
「凄いなぁ。…まさに命が創られてる過程を見てるわけだよな。…ほんとに凄いよ。…あずさが産むことを決心してくれたおかげだよ、ありがとう。」
「もう、先生の前で恥ずかしいこと言わないでよ。…拓海くんだって、私のために仕事辞めて、地元に戻ってきてくれたじゃない。…あ、お店の時間は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。…あずさとこの子のために仕事頑張らないとな。」
鵺野医師は、二人の会話を微笑ましく見ていた。
検診が終わり、診察室から出る際、先に拓海が診察室から出ると、鵺野医師があずさを呼び止めた。
「…君自身の身体はどうなんだ?」
「…そんなに変わった自覚はないんですけど、ちょっと体力が落ちたようには感じます。」
「…そうか。勿論お腹の子も大事だが、君が自分を大切にしないと。お腹の子にも響くことだし、彼だって心配するだろ。…片野先生の後任の先生はどうなんだい?」
「野々村先生はいい人ですよ。看護師さんに聞いたんですけど、野々村先生は片野先生が指名して、他の病院からヘッドハンティングしてきた先生みたいですよ!だから、片野先生が全面的に信頼されてる方で、医者としての知識だけじゃなくて、考え方とかも片野先生に似てるって、その看護師さんが言ってました。私もそう思ってます。」
「そうか。それは良かった。…ごめんね、引き留めて。ではまた次回に。」
あずさはペコリと頭を下げて診察室を出ていった。
「やるなぁ、片野先生。流石だ。」
鵺野医師は安堵した表情で呟いた。
その日の19時過ぎ。
片野邸。
「お父さん、ご飯よ。」
晃子が片野の部屋に、夕飯を乗せたお盆を持って入ってきた。
片野は、あれから病魔が急激に進行し、自由に起き上がれない身体になっていた。
「…あ、もうそんな時間か…。…1日は早いな。」
力ない声で呟く片野。晃子は、お盆を机に置きながら、わざと大きな声で答えた。
「1日が早いって感じるなら、その日が充実してたってことでしょ!最高の1日だったって意味になるわ!」
「…あぁ、晃子がいてくれるから…毎日が幸せだよ。」
「ちょ、急に何よ。…ほら、ご飯よ。今日はお父さんの大好物の魚の煮付け。…お母さんの味に挑戦してみたんだけどさ。…まぁ、食べてみてよ。」
晃子はそう言うと、一口大に切り分けた魚を片野の口に運んだ。
「…どう?」
「…うん、美味いよ。まぁ、まだ安祐美(あゆみ)の味とまではいかないけどな…。」
「もう、そこは社交辞令で嘘でも母さんの味だ、くらい言ってよ!…でも、美味いって言ってくれて嬉しいよ。」
晃子はニヤついた。すると、片野が動きを止め、晃子に視線を送った。
「…どしたの、お父さん?」
「…ほんとに晃子、お前には感謝しかない。」
涙声で話す片野に晃子は慌て始めた。
「ちょ、ちょっと、何よ急に。」
「…自分の身体のことはよくわかる。…もうじきなんだと思う。」
「…え?」
「…最期にお前に会えて、こうして看取ってくれるなんて…私にしては出来すぎた最期だよ。」
「…や、やめてよ!縁起でもない…。」
晃子はふて腐れて目を背けた。
「ほんとにそう思ってるんだ。私は自分の病気の深刻さを知った時、お前と距離を置いてしまったことをひたすらに後悔した。もう二度とお前と会えないだろうと自分を責めていた。あの頃の自分に教えてやりたいよ、また晃子に会えるから安心しろってね。…大丈夫、後は自分で食べれるから。仕事残ってるんだろ?自分の部屋に戻りなさい。」
「…えぇ、うん。ありがとう。何かあったら携帯で呼んでね。」
晃子は、片野の言葉が嬉しくて、微笑んだまま部屋を出ていった。
片野は、そっと涙を拭い、視線を斜め右下に向けた。枕元には、祐太郎が片野に宛てた手紙が丁寧に置かれていた。
「…どうやら、あなたのようなとても良い最期を迎えられそうです。」
片野は手紙に向かって呟いた。
翌日朝方4時過ぎ。
総合病院救急科の電話が鳴り響いた。
「はい、こちら横浜総合病院救急科です。…はい、60代男性…はい、自宅で…はい、名前はカタノトモヒロ…え!?」
電話に出ていた日比野医師が固まった。
「日比野先生?」
近くで受け入れ準備をしていた嬉野医師が心配そうに聞いた。
「…わかりました。受け入れできます。」
ガチャン。
日比野医師は、受話器を置くと、嬉野医師の目を見つめて言った。
「…片野先生よ。心肺停止ですって…。」
「…え!?」
ガチャーン!
嬉野医師は、持っていた器具を床に落とした。
「うん、順調だ。」
鵺野医師は、エコーの画面を見ながら笑顔であずさに言った。
「…どれが赤ちゃん?」
一緒に来院してきた拓海が画面を指差しながら聞いた。
「もう、わかんないのぅ?ほら、あのへん、頭みたいな形してるでしょ?」
あずさが画面に向かって丸を描きながら教えた。
「ん?…あ!ほんとだ!…ということはあれが身体で…あの濃い色した部分が心臓…か?」
興奮している拓海に、鵺野医師が頷いた。
「凄いなぁ。…まさに命が創られてる過程を見てるわけだよな。…ほんとに凄いよ。…あずさが産むことを決心してくれたおかげだよ、ありがとう。」
「もう、先生の前で恥ずかしいこと言わないでよ。…拓海くんだって、私のために仕事辞めて、地元に戻ってきてくれたじゃない。…あ、お店の時間は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。…あずさとこの子のために仕事頑張らないとな。」
鵺野医師は、二人の会話を微笑ましく見ていた。
検診が終わり、診察室から出る際、先に拓海が診察室から出ると、鵺野医師があずさを呼び止めた。
「…君自身の身体はどうなんだ?」
「…そんなに変わった自覚はないんですけど、ちょっと体力が落ちたようには感じます。」
「…そうか。勿論お腹の子も大事だが、君が自分を大切にしないと。お腹の子にも響くことだし、彼だって心配するだろ。…片野先生の後任の先生はどうなんだい?」
「野々村先生はいい人ですよ。看護師さんに聞いたんですけど、野々村先生は片野先生が指名して、他の病院からヘッドハンティングしてきた先生みたいですよ!だから、片野先生が全面的に信頼されてる方で、医者としての知識だけじゃなくて、考え方とかも片野先生に似てるって、その看護師さんが言ってました。私もそう思ってます。」
「そうか。それは良かった。…ごめんね、引き留めて。ではまた次回に。」
あずさはペコリと頭を下げて診察室を出ていった。
「やるなぁ、片野先生。流石だ。」
鵺野医師は安堵した表情で呟いた。
その日の19時過ぎ。
片野邸。
「お父さん、ご飯よ。」
晃子が片野の部屋に、夕飯を乗せたお盆を持って入ってきた。
片野は、あれから病魔が急激に進行し、自由に起き上がれない身体になっていた。
「…あ、もうそんな時間か…。…1日は早いな。」
力ない声で呟く片野。晃子は、お盆を机に置きながら、わざと大きな声で答えた。
「1日が早いって感じるなら、その日が充実してたってことでしょ!最高の1日だったって意味になるわ!」
「…あぁ、晃子がいてくれるから…毎日が幸せだよ。」
「ちょ、急に何よ。…ほら、ご飯よ。今日はお父さんの大好物の魚の煮付け。…お母さんの味に挑戦してみたんだけどさ。…まぁ、食べてみてよ。」
晃子はそう言うと、一口大に切り分けた魚を片野の口に運んだ。
「…どう?」
「…うん、美味いよ。まぁ、まだ安祐美(あゆみ)の味とまではいかないけどな…。」
「もう、そこは社交辞令で嘘でも母さんの味だ、くらい言ってよ!…でも、美味いって言ってくれて嬉しいよ。」
晃子はニヤついた。すると、片野が動きを止め、晃子に視線を送った。
「…どしたの、お父さん?」
「…ほんとに晃子、お前には感謝しかない。」
涙声で話す片野に晃子は慌て始めた。
「ちょ、ちょっと、何よ急に。」
「…自分の身体のことはよくわかる。…もうじきなんだと思う。」
「…え?」
「…最期にお前に会えて、こうして看取ってくれるなんて…私にしては出来すぎた最期だよ。」
「…や、やめてよ!縁起でもない…。」
晃子はふて腐れて目を背けた。
「ほんとにそう思ってるんだ。私は自分の病気の深刻さを知った時、お前と距離を置いてしまったことをひたすらに後悔した。もう二度とお前と会えないだろうと自分を責めていた。あの頃の自分に教えてやりたいよ、また晃子に会えるから安心しろってね。…大丈夫、後は自分で食べれるから。仕事残ってるんだろ?自分の部屋に戻りなさい。」
「…えぇ、うん。ありがとう。何かあったら携帯で呼んでね。」
晃子は、片野の言葉が嬉しくて、微笑んだまま部屋を出ていった。
片野は、そっと涙を拭い、視線を斜め右下に向けた。枕元には、祐太郎が片野に宛てた手紙が丁寧に置かれていた。
「…どうやら、あなたのようなとても良い最期を迎えられそうです。」
片野は手紙に向かって呟いた。
翌日朝方4時過ぎ。
総合病院救急科の電話が鳴り響いた。
「はい、こちら横浜総合病院救急科です。…はい、60代男性…はい、自宅で…はい、名前はカタノトモヒロ…え!?」
電話に出ていた日比野医師が固まった。
「日比野先生?」
近くで受け入れ準備をしていた嬉野医師が心配そうに聞いた。
「…わかりました。受け入れできます。」
ガチャン。
日比野医師は、受話器を置くと、嬉野医師の目を見つめて言った。
「…片野先生よ。心肺停止ですって…。」
「…え!?」
ガチャーン!
嬉野医師は、持っていた器具を床に落とした。
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