2 / 114
第1章 世紀の判決 第1節 村上 正人
(1)
しおりを挟む
20×8年10月15日
ー 横浜市内 ー
正人は、25歳で今の出版社に入社し、7年目を迎えている。週刊情報誌の記者をしている為、頭の中で今回の裁判をどのように報道するかを考えていた。正人は旬な人物を掘り下げて特集する企画ページを担当している。
「やっぱり、今回の由比裁判長かなぁ。」
そんな事を考えながら歩く会社への道中も、皆今回の判決に釘付けのようだった。ちらほら聞こえてる会話は恐怖心を語るものが多く、中には自分にもできるのでは、と言った内容もある。
「…呪いなんて、やってみたいと思うのかね…。」
正人はそんな独り言を呟きながら、世の中が混乱するのではと危惧した。
ー 出版社 ー
「おはようございます。」
正人が挨拶しながら執務室のドアを開けた。
「おっす!あぁ、今日もフレックス出勤か。」
同僚の生駒(いこま)が声をかけ、そのまま続けた。
「ニュース見た?マジで呪いっつーのが認められちゃったなぁ。なんか噂だと、あの由比という裁判長、早速雲隠れ状態らしいぞ。来月で任期終了で退職らしいしな。お前が来るまでも、その話題で持ち切りだ。」
どこか楽しげにテンション高めに話す生駒に、正人はちょっと引いた。生駒は正人より一つ歳上だが、入社年は同じであり、更には同じ人物企画ページを担当している。
「本当にどんな世界になるんだかな。なぁ、今回の特集は、やっぱり由比裁判長にしようかと思ってるんだけど、どうだ?」
正人が生駒に言葉を返すと、執務室に隣接している会議室の扉が開き、編集長の山本(やまもと)が部屋から出てきた。
その姿を見て、正人は、生駒の返答は聞かずに山本に駆け寄った。
「編集長!おはようございます。」
「おはよう、村上くん。どうだ、そちらの企画は順調か?」
「はい、ぼちぼちです、今回の裁判長を特集しようかと。来月初めに長い連休を頂くので、それまでにはバッチリ終わらせます。」
「あ、そうだったな。旅行だっけ?」
「えぇ、たまには妻にサービスしないと、夫婦が破綻しそうで。」
「ハハハ、そうだな。君にはこの夏無理させてしまったから。今の企画が落ち着いたら、ゆっくり休んでくれ。三戸(さんのへ)班長には私からよく言っておくから。」
「ありがとうございます。」
山本は、手に持っていた書類に目を向け、それまでのにこやかな表情から、目を強張らせるような考え事をする表情へと変え、正人に聞いた。
「それはそうと、今言ってた裁判を特集する企画記事の関係で今打ち合わせしてたんだが、村上くんの知り合いに呪いとか詳しい人はいないか?こっちの特集も、やはり呪い裁判は外せなくてな。」
そんな知り合いはいないことはわかってるのだが、一応考えた振りをし、正人が答えた。
「いやぁ、いま…せんねぇ、思い当たらないです。あれですか、インタビュー的な?」
「あぁ。ネット上で話題の呪いのメカニズムの推測ってのが今テレビや新聞で大分詳しく取り上げられてるが、なかなか誌面だと面白く伝えるのが難しそうでな。世間は常に面白い結果を望んでいるからな。だったら、真面目な記事よりいっそ、呪い経験者にインタビューするような破天荒な記事の方が面白いんじゃないかって意見が出てさ。」
「なんか対応間違えると、自分が呪われそうで怖い仕事っすね。」
苦笑いの正人に苦笑いで山本が答える。
「まぁな。畑(はた)くんが主担当で今呪いの経験者にコンタクトとってるんだが、反応が芳しくない。畑くんも初の主担当で頑張っているから何とかやり遂げさせたいんだが相手が見つからないとなぁ。まぁ、なんか面白い企画案があったら是非畑くんに助言してやってくれ。」
山本はそう言うと、正人の肩をポンッと叩き、自席に向かった。
「…どこもかしこも呪いの話題一色だな…」
ー 横浜市内 ー
正人は、25歳で今の出版社に入社し、7年目を迎えている。週刊情報誌の記者をしている為、頭の中で今回の裁判をどのように報道するかを考えていた。正人は旬な人物を掘り下げて特集する企画ページを担当している。
「やっぱり、今回の由比裁判長かなぁ。」
そんな事を考えながら歩く会社への道中も、皆今回の判決に釘付けのようだった。ちらほら聞こえてる会話は恐怖心を語るものが多く、中には自分にもできるのでは、と言った内容もある。
「…呪いなんて、やってみたいと思うのかね…。」
正人はそんな独り言を呟きながら、世の中が混乱するのではと危惧した。
ー 出版社 ー
「おはようございます。」
正人が挨拶しながら執務室のドアを開けた。
「おっす!あぁ、今日もフレックス出勤か。」
同僚の生駒(いこま)が声をかけ、そのまま続けた。
「ニュース見た?マジで呪いっつーのが認められちゃったなぁ。なんか噂だと、あの由比という裁判長、早速雲隠れ状態らしいぞ。来月で任期終了で退職らしいしな。お前が来るまでも、その話題で持ち切りだ。」
どこか楽しげにテンション高めに話す生駒に、正人はちょっと引いた。生駒は正人より一つ歳上だが、入社年は同じであり、更には同じ人物企画ページを担当している。
「本当にどんな世界になるんだかな。なぁ、今回の特集は、やっぱり由比裁判長にしようかと思ってるんだけど、どうだ?」
正人が生駒に言葉を返すと、執務室に隣接している会議室の扉が開き、編集長の山本(やまもと)が部屋から出てきた。
その姿を見て、正人は、生駒の返答は聞かずに山本に駆け寄った。
「編集長!おはようございます。」
「おはよう、村上くん。どうだ、そちらの企画は順調か?」
「はい、ぼちぼちです、今回の裁判長を特集しようかと。来月初めに長い連休を頂くので、それまでにはバッチリ終わらせます。」
「あ、そうだったな。旅行だっけ?」
「えぇ、たまには妻にサービスしないと、夫婦が破綻しそうで。」
「ハハハ、そうだな。君にはこの夏無理させてしまったから。今の企画が落ち着いたら、ゆっくり休んでくれ。三戸(さんのへ)班長には私からよく言っておくから。」
「ありがとうございます。」
山本は、手に持っていた書類に目を向け、それまでのにこやかな表情から、目を強張らせるような考え事をする表情へと変え、正人に聞いた。
「それはそうと、今言ってた裁判を特集する企画記事の関係で今打ち合わせしてたんだが、村上くんの知り合いに呪いとか詳しい人はいないか?こっちの特集も、やはり呪い裁判は外せなくてな。」
そんな知り合いはいないことはわかってるのだが、一応考えた振りをし、正人が答えた。
「いやぁ、いま…せんねぇ、思い当たらないです。あれですか、インタビュー的な?」
「あぁ。ネット上で話題の呪いのメカニズムの推測ってのが今テレビや新聞で大分詳しく取り上げられてるが、なかなか誌面だと面白く伝えるのが難しそうでな。世間は常に面白い結果を望んでいるからな。だったら、真面目な記事よりいっそ、呪い経験者にインタビューするような破天荒な記事の方が面白いんじゃないかって意見が出てさ。」
「なんか対応間違えると、自分が呪われそうで怖い仕事っすね。」
苦笑いの正人に苦笑いで山本が答える。
「まぁな。畑(はた)くんが主担当で今呪いの経験者にコンタクトとってるんだが、反応が芳しくない。畑くんも初の主担当で頑張っているから何とかやり遂げさせたいんだが相手が見つからないとなぁ。まぁ、なんか面白い企画案があったら是非畑くんに助言してやってくれ。」
山本はそう言うと、正人の肩をポンッと叩き、自席に向かった。
「…どこもかしこも呪いの話題一色だな…」
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
私の優しいお父さん
有箱
ミステリー
昔、何かがあって、目の見えなくなった私。そんな私を、お父さんは守ってくれる。
少し過保護だと思うこともあるけれど、全部、私の為なんだって。
昔、私に何があったんだろう。
お母さんは、どうしちゃったんだろう。
お父さんは教えてくれない。でも、それも私の為だって言う。
いつか、思い出す日が来るのかな。
思い出したら、私はどうなっちゃうのかな。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる