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第1章 世紀の判決 第1節 村上 正人
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17時00分
業務終了を知らせるチャイムが鳴り響く。本日フレックス出勤の正人には関係のないチャイムなので、気にせずにパソコンを相手に仕事を続けた。
すると急に肩を叩かれ、入力作業に集中していた正人は少し驚いたリアクションをした。
「悪いな正人、先にあがるよ。昨日も遅かったんだから無理するなよな。」
「なんだ、生駒か。びっくりさせんなよ。おつかれちゃん!」
生駒が執務室を出ていくのを見送り、周りを見渡すと室内には自分と後輩の畑のみになってることに気付いた。
正人はパソコンに集中し過ぎて、皆がお疲れ様と言いながら部屋を出ていく姿を見落としていたようだ。
「畑、残業か?」
正人から見て、向かいの斜め右方向に座っている畑に話しかけた。畑は新卒入社で、3年目の後輩に当たり、正人とは担当ページが異なる係りの下っ端だ。
「そうですよぉ、例の判決特集のページ構成考えなくちゃならなくて。」
「あぁ、そいや企画の主担当任せられてたな。初めての主担当だろ?おめでたいじゃないか。で、見つかったの?呪い経験者。編集長から少し聞いたけど。」
「あ、見つかりましたよ。と言っても、ネットでそれらしい掲示板見つけて、書き込み者にコンタクト取ってみたんすよ。謝礼の話をしたら、急に相手もノリノリになりまして。明日取材に行ってきます。」
「へぇ、トントン拍子で何よりじゃん。どこまで?」
「群馬です、前橋。」
「そうか。まぁ、変な対応してお前が呪われないようにな。」
ニヤニヤしながら正人が冗談ぽく言った。畑は握りこぶしに親指を立て゛グー!゛のポーズで返事をし、自席のパソコンに振り向き直し、仕事を再開し始めた。
20時32分
ブーッ、ブーッっと正人のスマホのバイブレーションが鳴り響いた。
調度、畑がトイレに行ってた為、執務室には正人一人の状況であり、併せて省エネ施策として自席上の電気以外は消灯していたため、静かな薄暗い執務室に突如鳴り響いたバイブレーション音は、正人を恐怖のどん底に突き落とした。
あるいは、一日中゛呪い゛という単語に付き合ってたため、無意識に恐怖心が芽生えたのかもしれない。
いずれにしろ、オーバーなリアクションをしてしまった自分が情けなくなり、半ば笑いそうな状態で正人はスマホの画面を見た。
「あれ、千里からだ。」
通話ボタンを押した。
「正人、正人、…あ、良かった!!出てくれて。」
電話の向こうの千里は、息を切らしながら、弱々しい声をしていた。
「どうした、そんなに慌てた声で。…ていうか泣いてるのか?」
「あのね、由実(ゆみ)が、由実が死んじゃった、、、」
力のない声で千里がそう言った。
業務終了を知らせるチャイムが鳴り響く。本日フレックス出勤の正人には関係のないチャイムなので、気にせずにパソコンを相手に仕事を続けた。
すると急に肩を叩かれ、入力作業に集中していた正人は少し驚いたリアクションをした。
「悪いな正人、先にあがるよ。昨日も遅かったんだから無理するなよな。」
「なんだ、生駒か。びっくりさせんなよ。おつかれちゃん!」
生駒が執務室を出ていくのを見送り、周りを見渡すと室内には自分と後輩の畑のみになってることに気付いた。
正人はパソコンに集中し過ぎて、皆がお疲れ様と言いながら部屋を出ていく姿を見落としていたようだ。
「畑、残業か?」
正人から見て、向かいの斜め右方向に座っている畑に話しかけた。畑は新卒入社で、3年目の後輩に当たり、正人とは担当ページが異なる係りの下っ端だ。
「そうですよぉ、例の判決特集のページ構成考えなくちゃならなくて。」
「あぁ、そいや企画の主担当任せられてたな。初めての主担当だろ?おめでたいじゃないか。で、見つかったの?呪い経験者。編集長から少し聞いたけど。」
「あ、見つかりましたよ。と言っても、ネットでそれらしい掲示板見つけて、書き込み者にコンタクト取ってみたんすよ。謝礼の話をしたら、急に相手もノリノリになりまして。明日取材に行ってきます。」
「へぇ、トントン拍子で何よりじゃん。どこまで?」
「群馬です、前橋。」
「そうか。まぁ、変な対応してお前が呪われないようにな。」
ニヤニヤしながら正人が冗談ぽく言った。畑は握りこぶしに親指を立て゛グー!゛のポーズで返事をし、自席のパソコンに振り向き直し、仕事を再開し始めた。
20時32分
ブーッ、ブーッっと正人のスマホのバイブレーションが鳴り響いた。
調度、畑がトイレに行ってた為、執務室には正人一人の状況であり、併せて省エネ施策として自席上の電気以外は消灯していたため、静かな薄暗い執務室に突如鳴り響いたバイブレーション音は、正人を恐怖のどん底に突き落とした。
あるいは、一日中゛呪い゛という単語に付き合ってたため、無意識に恐怖心が芽生えたのかもしれない。
いずれにしろ、オーバーなリアクションをしてしまった自分が情けなくなり、半ば笑いそうな状態で正人はスマホの画面を見た。
「あれ、千里からだ。」
通話ボタンを押した。
「正人、正人、…あ、良かった!!出てくれて。」
電話の向こうの千里は、息を切らしながら、弱々しい声をしていた。
「どうした、そんなに慌てた声で。…ていうか泣いてるのか?」
「あのね、由実(ゆみ)が、由実が死んじゃった、、、」
力のない声で千里がそう言った。
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