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第3節 村上 正人 其の2
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ー 解剖医学センター ー
来るのは当然初めてである、解剖医学センターに入ると、白を基調にしたとても清潔感があり、また最新の施設であろうと思わせる造りだった。
ロビーの椅子に腰掛けていた刑事二人がゆっくりと正人たちの元に歩いてきた。
「ご足労ありがとうございます。神奈川県警の池畑と、こっちは溝口(みぞぐち)です。」
溝口は一礼した。
「この度は御愁傷様でした。早速ですが、千里さんの所にご案内いたします。」
正人たちは、池畑に先導されてエレベーターに乗り、地下2階で下り、少し暗めの廊下を歩くと、「遺体安直室」と書かれた部屋の前で立ち止まった。
「お姉ちゃん、ここにいるのかな。」
紗希の呟きに、池畑は頷き、ゆっくりとドアを開いた。
中に入ると白い布を被された横たわる千里と白衣を着た人物が待っていた。その女性は正人たちに近づくと一礼した。
「この度はご愁傷さまでした。私は当センターの解剖医の久保寺です。」
「元々ご遺体に目立った傷や汚れ等はございませんでしたが、綺麗に顔などはお拭きし安置させていただいております。」
池畑がそう言うと、久保寺が千里の顔に掛かっていた白い布を取った。正人たちは両側から一斉に覗きこんだ。
正人は、いつもの寝ているときの千里だと、本当にそう思った。
あだち充原作のタッチの場面が思い浮かび、正に達也のセリフがぴったりだと思うほど、千里は綺麗だった。
絵美子は嗚咽しながら床に座り込み、他の人も涙を流しながら千里の顔を見ていた。
「村上さん。少しいいですか?」
池畑に呼ばれ正人が歩み寄り、皆に聞こえない声で池畑が続けた。
「千里さんの解剖の話ですが…」
「はい、ここにいる親族のみに話をし、了承を得ました。」
「そうですか、ありがとうございます。」
すると池畑は久保寺に歩み寄り、了承を得たことを伝えているようだった。
しばらく話をすると、久保寺が話を切り出した。
「皆さん、大変お辛い中、千里さんの解剖についての同意の意志をお示しいただき感謝いたします。私が責任もって執刀させていただきますので、よろしくお願いいたします。」
久保寺が一礼し皆も一礼した。
「日程が決まりましたら、池畑警部を通じてご主人様に連絡させていただきます。おおよそ3日以内には終了させますので、それに合わせてご葬儀のご準備をお進めいただければと存じます。またこの後同意書のご記入だけよろしくお願いいたします。」
そう言うと久保寺は一礼して部屋を出ていった。
正人は池畑の顔を見つめ、涙声で聞いた。
「…池畑さん。…千里の脳に何か症状があったら自殺じゃなく、殺人事件になるんですよね?」
「そうです。すぐに立件し捜査を開始します。」
「…呪いって何なんですかね。一般的には何か霊的なイメージが強いんですが。」
「私も専門ではないので、まだまだ詳しいことは。ただ、実際に起こりうる話であることだけは事実です。」
皆が黙り込んでしまった中、絵美子が千里の頬を撫でながら、千里に話しかけるように話をし出した。
「難しいことはわからないね。でも母さんは、あんたが自分から命を絶つような、家族に辛い思いをさせるような子じゃないことはわかってるからね。…何…も、出来ない…母さん…で、…ごめんなさい…」
大粒の涙が千里の身体に落ちた。和彦は絵美子の両肩を支えた。
「千里は母さんの泣いてる顔は見たくないと思うぞ。千里、また会いに来るよ。正人くん、そろそろ。」
正人が頷くと、皆池畑と溝口に一礼し、部屋をを出ていった。
来るのは当然初めてである、解剖医学センターに入ると、白を基調にしたとても清潔感があり、また最新の施設であろうと思わせる造りだった。
ロビーの椅子に腰掛けていた刑事二人がゆっくりと正人たちの元に歩いてきた。
「ご足労ありがとうございます。神奈川県警の池畑と、こっちは溝口(みぞぐち)です。」
溝口は一礼した。
「この度は御愁傷様でした。早速ですが、千里さんの所にご案内いたします。」
正人たちは、池畑に先導されてエレベーターに乗り、地下2階で下り、少し暗めの廊下を歩くと、「遺体安直室」と書かれた部屋の前で立ち止まった。
「お姉ちゃん、ここにいるのかな。」
紗希の呟きに、池畑は頷き、ゆっくりとドアを開いた。
中に入ると白い布を被された横たわる千里と白衣を着た人物が待っていた。その女性は正人たちに近づくと一礼した。
「この度はご愁傷さまでした。私は当センターの解剖医の久保寺です。」
「元々ご遺体に目立った傷や汚れ等はございませんでしたが、綺麗に顔などはお拭きし安置させていただいております。」
池畑がそう言うと、久保寺が千里の顔に掛かっていた白い布を取った。正人たちは両側から一斉に覗きこんだ。
正人は、いつもの寝ているときの千里だと、本当にそう思った。
あだち充原作のタッチの場面が思い浮かび、正に達也のセリフがぴったりだと思うほど、千里は綺麗だった。
絵美子は嗚咽しながら床に座り込み、他の人も涙を流しながら千里の顔を見ていた。
「村上さん。少しいいですか?」
池畑に呼ばれ正人が歩み寄り、皆に聞こえない声で池畑が続けた。
「千里さんの解剖の話ですが…」
「はい、ここにいる親族のみに話をし、了承を得ました。」
「そうですか、ありがとうございます。」
すると池畑は久保寺に歩み寄り、了承を得たことを伝えているようだった。
しばらく話をすると、久保寺が話を切り出した。
「皆さん、大変お辛い中、千里さんの解剖についての同意の意志をお示しいただき感謝いたします。私が責任もって執刀させていただきますので、よろしくお願いいたします。」
久保寺が一礼し皆も一礼した。
「日程が決まりましたら、池畑警部を通じてご主人様に連絡させていただきます。おおよそ3日以内には終了させますので、それに合わせてご葬儀のご準備をお進めいただければと存じます。またこの後同意書のご記入だけよろしくお願いいたします。」
そう言うと久保寺は一礼して部屋を出ていった。
正人は池畑の顔を見つめ、涙声で聞いた。
「…池畑さん。…千里の脳に何か症状があったら自殺じゃなく、殺人事件になるんですよね?」
「そうです。すぐに立件し捜査を開始します。」
「…呪いって何なんですかね。一般的には何か霊的なイメージが強いんですが。」
「私も専門ではないので、まだまだ詳しいことは。ただ、実際に起こりうる話であることだけは事実です。」
皆が黙り込んでしまった中、絵美子が千里の頬を撫でながら、千里に話しかけるように話をし出した。
「難しいことはわからないね。でも母さんは、あんたが自分から命を絶つような、家族に辛い思いをさせるような子じゃないことはわかってるからね。…何…も、出来ない…母さん…で、…ごめんなさい…」
大粒の涙が千里の身体に落ちた。和彦は絵美子の両肩を支えた。
「千里は母さんの泣いてる顔は見たくないと思うぞ。千里、また会いに来るよ。正人くん、そろそろ。」
正人が頷くと、皆池畑と溝口に一礼し、部屋をを出ていった。
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