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第4節 池畑 一輝
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20×7年2月7日(一年半前)
ー 菅野宅 ー
10時25分
「ご遺体はこの部屋の住人、菅野茜(かんのあかね)29歳、厚労省の職員です。」
池畑と溝口は屈んで手を合わせ、遺体を覆っているブルーシートを剥がした。
「まだ若いな…腹を包丁で一刺しか…溝口はどう思う?」
「パッと見、部屋が荒らされた形跡は無さそうですし、遺体を見る感じだと自分で刺したようにも見えますね。」
池畑は頷きながら、辺りを見渡した。
「自殺の線もあるな。ただ遺書はない。」
「そうですね。それに、自殺にしても、自分で自分の腹を刺すのはなかなか無いですね。誰かを刺して殺してしまった後に、パニックになって自分も刺すというのなら何となくあり得るかと思いますが、わざわざこの方法での自殺は…私は初めて見ました。」
「あぁ、俺もだ。ただ、方法はともかく、部屋や凶器、遺体に他殺を示すものが無ければ、状況から見て自殺だろうな。鑑識の結果を待つか。」
「そうですね。」
ー 神奈川県警 署内ー
池畑は、ガラス張りの喫煙所内で一服しながら今回の事件の報告書の内容を考えていた。
池畑は、今の刑事課に来て10年になるが、今回の自殺が何故か単純に自殺で片付くとは思っていなかった。
ただ、そう思う明確な理由がわからずイライラが増し、煙草が二本目になろうかとした時、溝口が慌てて喫煙所のガラス戸を開けて入ってきた。
「池畑さん、鑑識の結果です。」
池畑は煙草に火を点けるのを止めて、溝口から資料を受け取った。
「部屋の中、凶器、遺体に被害者以外の指紋はなし…か。これ見ると凶器には被害者の指紋がしっかりと付いてたみたいだな。」
「はい、鑑識の話ですと、包丁を自分に向けて持つ形で間違いなく、誰かに無理矢理握らされたような、不可解な点も無いそうです。」
「そうか決まりだな。…自殺だ。…勘が鈍ってきたか…。」
池畑はそう言うと、二本目の煙草に火を点けた。溝口は最後の言葉に首を傾げた。
その後、池畑は溝口に指示し、今回の事件は自殺という結論で報告書を作成させ、上司もこの報告書の内容で決裁を通した。
ー 村上宅 ー
21時15分
“「続いてのニュースです。本日の午前10時頃、横浜市のアパートの一室で女性の遺体が発見されました。遺体の腹部には刃物が刺さっており、自殺と他殺両面での捜査が行われています。
亡くなった女性は、厚生労働省職員の菅野茜さん29歳です。現場には橋本記者がいます。橋本さん。」
「はい、こちら現場アパート前です。発見当時は現場は騒然とした状況でしたが、今は落ち着きを徐々に取り戻しています。
先ほど、警察への最新の取材で、当初は遺体の状況から他殺説が有力でしたが、自殺の可能性が高くなってきているようです。近くに会見があるようです。周辺住民は近くに殺人犯がいるのではと恐怖に怯えています。住民が安心できる日が早く来ることを願います。
先ほど第一発見者である菅野さんのご友人に話を伺うことができました。ご友人によると、菅野さんは昨日から仕事を無断欠勤しており、携帯に連絡しても連絡がつかなかったことから、午前10時頃大家さんを通じて部屋を開けて入ったところ、リビングに倒れていたということです。以上、現場からでした。」゛
正人はテレビに釘付けだった。
「千里!うちから結構近いとこで事件だってさ、女性が一人死んだらしい。自殺か他殺かはまだ不明だって。厚生労働省の職員らしいけど知り合いか?」
「え?」
千里は正人の声で、キッチンから顔を出した。
「厚生労働省の菅野さんって女性、29歳だって。知り合い?今日、遺体で見つかったってさ。」
正人はもう一度説明した。
「知らないなぁ、菅野さんは。いくら厚生労働省の直属の研究所でも、省庁の知り合いはそんなにいないよぉ。」
「そうか。でも、29歳の若さで。…自殺だったら、やっぱり国の職員って仕事大変なのかね。」
この時の正人は、まさかこの事件が呪いだなんだのと発展し、世紀の判決が出るなどとは全く考えていなかった。
2月8日
ー 神奈川県警 署内 ー
9時05分
菅野茜の事件の翌日、刑事課の執務室に一人の女性が来た。女性は執務室を覗くと一番手前に座っている職員と目が合い、話をし出した。
「昨日の菅野茜の件で話があって来た。」
「昨日の…あ、今捜査担当者を呼んできます。廊下のベンチでお待ちください。」
職員がそう言うと、女性は一番近いベンチにゆっくり座った。しばらくすると、執務室から池畑と溝口が出てきて、女性に歩み寄った。
「おはようございます。あなたですか?菅野茜さんの件でお話があるというのは。」
女性は何も答えずに下を向いたままだった。両手は握りこぶしにし身体を小刻みに震わせ、まるで怒りに耐えてるようだった。
「…あの…」
溝口がもう一度話しかけると、女性はゆっくり話し出した。
「菅野茜は自殺じゃない。…わ、私が殺したんだ。」
衝撃の発言に二人は目を見合わせた。
ー 菅野宅 ー
10時25分
「ご遺体はこの部屋の住人、菅野茜(かんのあかね)29歳、厚労省の職員です。」
池畑と溝口は屈んで手を合わせ、遺体を覆っているブルーシートを剥がした。
「まだ若いな…腹を包丁で一刺しか…溝口はどう思う?」
「パッと見、部屋が荒らされた形跡は無さそうですし、遺体を見る感じだと自分で刺したようにも見えますね。」
池畑は頷きながら、辺りを見渡した。
「自殺の線もあるな。ただ遺書はない。」
「そうですね。それに、自殺にしても、自分で自分の腹を刺すのはなかなか無いですね。誰かを刺して殺してしまった後に、パニックになって自分も刺すというのなら何となくあり得るかと思いますが、わざわざこの方法での自殺は…私は初めて見ました。」
「あぁ、俺もだ。ただ、方法はともかく、部屋や凶器、遺体に他殺を示すものが無ければ、状況から見て自殺だろうな。鑑識の結果を待つか。」
「そうですね。」
ー 神奈川県警 署内ー
池畑は、ガラス張りの喫煙所内で一服しながら今回の事件の報告書の内容を考えていた。
池畑は、今の刑事課に来て10年になるが、今回の自殺が何故か単純に自殺で片付くとは思っていなかった。
ただ、そう思う明確な理由がわからずイライラが増し、煙草が二本目になろうかとした時、溝口が慌てて喫煙所のガラス戸を開けて入ってきた。
「池畑さん、鑑識の結果です。」
池畑は煙草に火を点けるのを止めて、溝口から資料を受け取った。
「部屋の中、凶器、遺体に被害者以外の指紋はなし…か。これ見ると凶器には被害者の指紋がしっかりと付いてたみたいだな。」
「はい、鑑識の話ですと、包丁を自分に向けて持つ形で間違いなく、誰かに無理矢理握らされたような、不可解な点も無いそうです。」
「そうか決まりだな。…自殺だ。…勘が鈍ってきたか…。」
池畑はそう言うと、二本目の煙草に火を点けた。溝口は最後の言葉に首を傾げた。
その後、池畑は溝口に指示し、今回の事件は自殺という結論で報告書を作成させ、上司もこの報告書の内容で決裁を通した。
ー 村上宅 ー
21時15分
“「続いてのニュースです。本日の午前10時頃、横浜市のアパートの一室で女性の遺体が発見されました。遺体の腹部には刃物が刺さっており、自殺と他殺両面での捜査が行われています。
亡くなった女性は、厚生労働省職員の菅野茜さん29歳です。現場には橋本記者がいます。橋本さん。」
「はい、こちら現場アパート前です。発見当時は現場は騒然とした状況でしたが、今は落ち着きを徐々に取り戻しています。
先ほど、警察への最新の取材で、当初は遺体の状況から他殺説が有力でしたが、自殺の可能性が高くなってきているようです。近くに会見があるようです。周辺住民は近くに殺人犯がいるのではと恐怖に怯えています。住民が安心できる日が早く来ることを願います。
先ほど第一発見者である菅野さんのご友人に話を伺うことができました。ご友人によると、菅野さんは昨日から仕事を無断欠勤しており、携帯に連絡しても連絡がつかなかったことから、午前10時頃大家さんを通じて部屋を開けて入ったところ、リビングに倒れていたということです。以上、現場からでした。」゛
正人はテレビに釘付けだった。
「千里!うちから結構近いとこで事件だってさ、女性が一人死んだらしい。自殺か他殺かはまだ不明だって。厚生労働省の職員らしいけど知り合いか?」
「え?」
千里は正人の声で、キッチンから顔を出した。
「厚生労働省の菅野さんって女性、29歳だって。知り合い?今日、遺体で見つかったってさ。」
正人はもう一度説明した。
「知らないなぁ、菅野さんは。いくら厚生労働省の直属の研究所でも、省庁の知り合いはそんなにいないよぉ。」
「そうか。でも、29歳の若さで。…自殺だったら、やっぱり国の職員って仕事大変なのかね。」
この時の正人は、まさかこの事件が呪いだなんだのと発展し、世紀の判決が出るなどとは全く考えていなかった。
2月8日
ー 神奈川県警 署内 ー
9時05分
菅野茜の事件の翌日、刑事課の執務室に一人の女性が来た。女性は執務室を覗くと一番手前に座っている職員と目が合い、話をし出した。
「昨日の菅野茜の件で話があって来た。」
「昨日の…あ、今捜査担当者を呼んできます。廊下のベンチでお待ちください。」
職員がそう言うと、女性は一番近いベンチにゆっくり座った。しばらくすると、執務室から池畑と溝口が出てきて、女性に歩み寄った。
「おはようございます。あなたですか?菅野茜さんの件でお話があるというのは。」
女性は何も答えずに下を向いたままだった。両手は握りこぶしにし身体を小刻みに震わせ、まるで怒りに耐えてるようだった。
「…あの…」
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