Rem-リム- 呪いと再生

雨木良

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第4節 池畑 一輝

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「溝口、取調室空いてるか見てこい。」

溝口は取調室が使えるかを確認をしに行き、使えるのを確認すると池畑の携帯に掛けた。池畑は女性を連れ、一つ上の階にある取調室に向かった。

取調室に入ると奥の席に女性を座らせ、対面に池畑が座った。溝口は池畑の斜め後ろにパイプ椅子を置き、書記の役目を果たすつもりで、手帳とボールペンを用意した。池畑が話を切り出した。

「わざわざ移動していただいてすみません。廊下で話すことじゃないと思いまして。神奈川県警の池畑です。後ろは溝口。昨日の菅野茜さんの件を担当しています。まず、あなたのお名前とご年齢教えて貰えますか。」

「桐生朱美(きりゅうあけみ)、32歳。」

「桐生さんね。それで先ほどおっしゃってたことはどういう内容ですか?」

「菅野茜は自殺じゃない。私が殺したんだ。」

さっきと同じセリフに池畑は頭をかいた。

「殺したとは?菅野さんの遺体の状況ご存知ですか?」

池畑は、桐生の話の信憑性を確かめるためにカマをかけた。

「腹に包丁が刺さってたんだろ?あいつの指紋しか付いてなかったはずだ。何故なら刺したのはあいつ自身だからな。私は呪っただけ。私が呪って殺したんだ。」

桐生は、不敵な笑みを浮かべながら、淡々と話した。

溝口は、ん?という感じで前かがみになり、もう一度同じセリフを期待した。

「呪って殺した、ですか。それは、菅野さんに恨みか何かをお持ちで、言葉汚いですが、死んでほしいと願ってたということですか?」

「違う!!私が呪って殺したんだ!!」

桐生は先程よりも興奮しながら同じセリフを繰り返した。池畑はまた頭をかいた。

「呪って殺すというのは、どういうことですか?」

「私が呪って、自分の腹に包丁を突き刺すように命じた。だから私が殺したんだ。逮捕してほしい。」

「桐生さん、あなたが菅野さんが死ぬことを願って、結果がたまたま似たようなことになっただけなら、あなたに罪はありません。確認ですが、あなたが菅野さんのお腹を刺したんですか?」

「違う!菅野茜が自分で刺したんだ。だが、それは、私が呪って命じたことで、私が殺したことと同義なんだ。」

平行線の話に、池畑はまた頭をかいた。切り口を変えてみた。

「桐生さん、あなたのおっしゃってることはわかりました。ですが、あなたが菅野茜さんの死に関わっている証拠がないと、あなたを逮捕することはできません。

もう一度確認ですが、あなたは菅野茜の死亡推定時刻である2月6日の午前8時頃は何をされてましたか?菅野さんに会っていたんですか?」

「私は寝ていた。菅野茜を呪ったのは前日の夜だ。その時間にすることは特にないからな。」

「つまり、あなたは菅野茜さんに会ってなかったわけで、あなたが菅野茜さんのお腹を刺したわけではないんですね?なら、今の日本の法律ではあなたを逮捕することはできません。」

すると桐生は、また身体を小刻みに震わせ怒りをフツフツとさせるような様子に変わった。

「何故だぁ!!何故逮捕しない!?私が殺したんだ!」

とてつもない大声を上げ、机を叩き出した。池畑と溝口は慌てて桐生の両腕を持ち上げ、落ち着かせようとした。

「桐生さん!やめてください。」

「何故だ!何故だ!!!」

桐生は、腕を掴まれたため、今度は机を蹴りだした。バンバンと蹴る音が室内に響き渡る。

「桐生さん!落ち着いてください!わかりました、ではその呪いについて詳しく教えていただけますか?」

池畑は何とか落ち着かせるため、とりあえず相手寄りの回答をした。すると、桐生はすっと大人しくなり、トートバッグから、ペーパーを取り出し池畑に渡した。

「これは?」

そのペーパーは A4用紙15枚分ほどあり、びっしり図や数値で紙が埋められていた。

「呪いのメカニズムだ。これが成功して菅野茜は死んだ。」

「…呪いのメカニズムですか。」

池畑は少し恐怖を感じながらも、ペラペラ捲りながらサーッと目を通してみたが、全くちんぷんかんぷんだった。

「…あの、お恥ずかしい話ですが…すみませんが私には理解できません。」

「そうか。なら、わかる人間に渡せ。このメカニズムが証拠となれば私は殺人犯だ。その時は逮捕しろ。」

桐生はそう言うと立ち上がり部屋を出ようとした。池畑も立ち上がり一旦桐生を静止させる。

「できれば桐生さんのご連絡先と住所いただけないでしょうか?科学部署に桐生さんのこの紙を渡してみますので、何か進捗があったらご連絡差し上げたいのですが。」

すると桐生は、溝口から手帳とボールペンを取り上げ、なんとか読める文字で電話番号と住民を書き、乱暴に溝口に手帳を返した。

その迫力に池畑と溝口が呆気にとられている間に桐生は部屋を出ていった。

「…あ、僕のボールペンは…」

手元に手帳しかないことに気付いた溝口の独り言が虚しく聞こえた。
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