Rem-リム- 呪いと再生

雨木良

文字の大きさ
28 / 114
第6節 畑 賢太郎 其の2

(1)

しおりを挟む
10月15日(3日前)

ー 畑宅 ー

22時06分

畑は足立からきた、<呪いを掛けていい?>というメッセージに対して返信できずにいた。どういう意味だ、どう返したらいいんだ、と自室で悩んでいると、部屋のドアをノックする音がして、ドアがスゥッと開いた。

「おにぃちゃん?」

スマホを目の前に返事を考えることに集中しており、畑はノックにもドアが開いたことにも気づかなかった。

「ウォアッ!…な、なんだ栞菜(かんな)か。びっくりさせるなよ。」

「ちゃんとノックもしましたぁ。てか、帰ってるなら言ってよね。誰かいる気配だけしてたからびっくりしちゃったよ。」

「あぁすまんすまん。考え事しちゃってて。」

「さっきからスマホの画面なんか眺めちゃって、まさか恋のお悩みですか?」

ニヤニヤ迫ってくる栞菜に、畑は無言でスマホの画面を見せた。

「…なにこれ?呪っていいかって、この人冗談で言ってるんじゃないの?」

畑も普通ならそう思うだろうが、この差出人がオカルトが好きすぎて堪らない足立ということが、本気か冗談かわからずに困っていたのだ。

「ホント、“言葉”ってのは、内容よりも、誰が言ったかってのが一番重要だよなぁ。」

畑はぼそりと呟いた。

「あ~あ、ちょっとトイレ。」

畑はスマホをベッドに置き、トイレに用を足しに向かい、終わって部屋に戻ると栞菜が自分のスマホをいじくってる姿が目に入った。

「ちょ、おまっ。」

慌ててスマホを栞菜から取り上げ画面を見ると、足立からメッセージが来ていた。

<ありがとう!>

畑は、えっ、と思いひとつ前のメッセージに目を向けた。

<もちろんっすよ。呪いでもなんでもかけてぇ(笑)>

「てめぇ栞菜!なんてことすんだよ!」

あまりの怒りように栞菜は少々引いていた。

「いいじゃん、面白おかしく返しておけば!大体の女の子は嫌な気持ちにはならないよ。」

「だ、か、ら、恋の悩みじゃねぇっつーの!!」

兄の恋を応援するために悪気なくやったつもりの栞菜は、爆発が止まらない兄に嫌気がさし、乱暴な歩き方で部屋を出ていった。

「たくっ。」

畑はスマホをベッドに放り投げ、ベッドを背にフローリングに座り込んだ。落ち着いてみると、まぁ、どうしていいかずっと困り果てるよりは良いか、と少し妹に感謝した。次の瞬間…

ハッと、畑は目を覚ました感覚がした。

特に眠かった感覚も寝てしまったという記憶もないが、急に目の前の画面が切り替わった気がした。不思議な感覚に、すぐに時計を見たが、多分さっきとほぼ同じ時間帯だったので、知らぬ間に寝落ちし、首がガクッとなった拍子に起きたんだと考えた。

顔でも洗って頭をスッキリさせようと洗面所に向かい、明かりを付けた。すると、目の前の鏡に映っている自分の顔が落書きだらけなのに気がついた。

「ウォアッ!なんじゃこりゃあ!」

再び独特な驚いたリアクションをすると、慌てて栞菜が洗面所にやってきた!

「お兄ちゃん、どしたの!?………プッ、ハハハ、何やってんの!?あ、私と気まずくなったから?派手にやりすぎだよ!」

一瞬栞菜がやったんじゃないかと畑は考えたが、その選択肢が一瞬で消えた今、混乱しか残っていなかった。とりあえず部屋に何かヒントがあるんじゃないかと考え、洗面所の入口に立っている栞菜をすり抜け部屋に戻った。すると、ベッドの上のスマホがメッセージ受信を表示していたのが見え、慌てて掴んだ。

<鏡見てみて!>

畑は一瞬時が止まった気がした。一旦深呼吸し、冷静にメッセージを返した。

<この落書き、足立さんの仕業ですか?>

すぐに返信が来た。

<え!ホントに!?やった☆呪い成功!>

畑はわけがわからなかった。畑が返信するまえにまたメッセージが届いた。

<呪いの機械が出来ちゃった。インターネットってすごいね。>

「呪いの…機械?」

再びメッセージが届いた。

<あ、そうそう。明日の取材さ、私も一緒に行くよ。予定だった打ち合わせが無くなっちゃって、班長に聞いたら一緒に行ってあげてくれって言われたから。時間と集合場所だけ教えて。>

さっきの呪いの機械の話については一切触れなくなり、クエスチョンマークだらけの畑は放置された感覚だった。

<あの、呪いの機械って?>

<明日教えます。ねぇ、時間と場所。>

畑は場所と時間のメッセージを送ると、よろしく、おやすみ、というメッセージが来た。

「なんなんだ一体。」

急な展開と、謎が多い状況に恐怖と混乱で頭がいっぱいの畑は、ベッドに横たわり、ストレス発散のため、手足をジタバタと乱暴に振り回し、ベッドに八つ当たりをした。

栞菜は、慌てふためく様子の兄を、心配そうにドアの隙間から見ていた。

「お兄ちゃん、好きな人と上手くいかなかったのかな…。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

私の優しいお父さん

有箱
ミステリー
昔、何かがあって、目の見えなくなった私。そんな私を、お父さんは守ってくれる。 少し過保護だと思うこともあるけれど、全部、私の為なんだって。 昔、私に何があったんだろう。 お母さんは、どうしちゃったんだろう。 お父さんは教えてくれない。でも、それも私の為だって言う。 いつか、思い出す日が来るのかな。 思い出したら、私はどうなっちゃうのかな。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。

処理中です...