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第6節 畑 賢太郎 其の2
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村上は長居することなく、また一礼をして執務室から出ていった。
畑は、村上のつらさを想像し、村上への尊敬と感傷に浸りたい思いだったが、目の前の仕事に逆らうことはできず、先程まで足立と仕上げた原稿を読み返した。
これならイケるんじゃないかと自信が持てる物になったと自負しているが、取材相手の長尾にも目を通してもらおうと、昨日貰っていた電話番号に電話を掛けた。しかし、電話は、留守電のアナウンスに繋がってしまい、その後も何回か掛け直したが、長尾と話をすることはできなかった。
仕方がないので、畑は留守電に、記事の件で話があり、また連絡する旨のメッセージを入れた。
「あれ?まだkiriちゃん出ないの?なんかあったのかなぁ。」
畑が繰り返し電話を掛けている様子を見ていた足立が声を掛けた。
「えぇ。すぐに留守電に繋がっちゃう感じです。一回この力作を見てもらいたいんですよね。あと今回は桐生朱美の実妹って記事は見送らせてもらう話もしないとと思いまして。でも、まぁしょうがないんで、明日また電話してみます。」
「そうだね、kiriちゃんには一回見てもらいたいね。あ、そうだ!桐生朱美の事件、今日警察の記者会見あるんだよね。稗田班長が行ってるやつ。そろそろかなぁ。」
足立はそう言うと、テレビの電源を入れた。調度夕方のニュースをやっていた。
゛「…を過失運転致死罪で現行犯逮捕したとのことですが、最近お年寄りの操作ミスによる事故が後を絶ちませんね、朝倉さん。」
「そうですねぇ、単純な操作ミスで、人の命が失われてしまうわけですからね。やはり、早く国は運転者に年齢上限を定めた方がいいですね。」
「では、続いてのニュースです。一昨日判決が出ました呪い裁判に関するニュースをお伝えします。」゛
「お、調度いいタイミングだったな!!」
生駒はそう言うと、自席からテレビ前のソファに移動した。他の人は自席に座りながらテレビに釘付けとなっていたが、足立はテレビから少し離れた所にある給湯コーナーで、マグカップに紅茶を入れながら観ていた。
“「現在、警視庁は、呪い事件に関する新たな記者会見を行っております。では、会見の模様をどうぞ。」”
記者会見の映像に切り替わった。
“「呪いについて、研究を続けておりますが、新たな情報を伝えさせていただきます。研究の結果、呪いによって亡くなった方の脳には特定の症状が起こることがわかりました。具体的には、脳の一部分が熱エネルギーにより、焦げたり、溶解したりするといった現象です。
これにより、今後、自殺と判断されたご遺体に関しては、司法解剖を積極的にさせていただき、先ほどの症状が見つかった場合は、殺人事件としての取り扱いにしていく方針としました。
今後、自殺者の司法解剖につきましては、ご遺族の同意がなくても、捜査上必要と判断し、行わせていただくこととなりますので、ご理解をお願いしたい。」”
「…これって凄い話ですね。」
いつの間にか、ほとんどの人間がソファの回りに集まっており、その一人である畑が驚いた表情で言った。
畑はすぐに村上のことが思い浮かんだ。村上の奥さんはこの対象になったのかとか、呪いで殺されたんじゃないかとか、どんなに考えても村上本人にはとても聞けないなと思った。
「ふーん、警察も呪いについては口が固いねぇ。今の話じゃ脳がそうなる仕組みは全くわからんねぇよなぁ。」
荒木の言うように、警察は一切呪いの方法は明るみにしなかった。当然方法がわからなければ、脳がそうなる仕組みも理解できるわけはない。
記者会見では、マスコミからの質問が嵐のように連発されていた。司法解剖を強制的に行うなら、やはり呪いの方法を明るみにすることが必要なのではとか、国民は納得していませんがどのようなお考えですか、などと警察に対する批判が多かった。
畑は、知りたがるマスコミ、いや国民の考えは当然理解できるし、警察が隠す理由も大いに理解できた。この問題はしばらく平行線の状態だろうと思った。
「私はこればっかりは、一切呪いについてを明るみにしない警察が正しいと思うんだけどなぁ。」
山本が腕組みしながら呟いた。
「私も同感です。世の中は何でも面白たがりますからね。呪いの方法なんて公表されたら、呪いにより捕まったら死刑と言われたって試す奴は出てきますよ。」
三戸もテレビを眺めながら、山本に同調し、その横で畑も静かに頷いていた。
畑は、村上のつらさを想像し、村上への尊敬と感傷に浸りたい思いだったが、目の前の仕事に逆らうことはできず、先程まで足立と仕上げた原稿を読み返した。
これならイケるんじゃないかと自信が持てる物になったと自負しているが、取材相手の長尾にも目を通してもらおうと、昨日貰っていた電話番号に電話を掛けた。しかし、電話は、留守電のアナウンスに繋がってしまい、その後も何回か掛け直したが、長尾と話をすることはできなかった。
仕方がないので、畑は留守電に、記事の件で話があり、また連絡する旨のメッセージを入れた。
「あれ?まだkiriちゃん出ないの?なんかあったのかなぁ。」
畑が繰り返し電話を掛けている様子を見ていた足立が声を掛けた。
「えぇ。すぐに留守電に繋がっちゃう感じです。一回この力作を見てもらいたいんですよね。あと今回は桐生朱美の実妹って記事は見送らせてもらう話もしないとと思いまして。でも、まぁしょうがないんで、明日また電話してみます。」
「そうだね、kiriちゃんには一回見てもらいたいね。あ、そうだ!桐生朱美の事件、今日警察の記者会見あるんだよね。稗田班長が行ってるやつ。そろそろかなぁ。」
足立はそう言うと、テレビの電源を入れた。調度夕方のニュースをやっていた。
゛「…を過失運転致死罪で現行犯逮捕したとのことですが、最近お年寄りの操作ミスによる事故が後を絶ちませんね、朝倉さん。」
「そうですねぇ、単純な操作ミスで、人の命が失われてしまうわけですからね。やはり、早く国は運転者に年齢上限を定めた方がいいですね。」
「では、続いてのニュースです。一昨日判決が出ました呪い裁判に関するニュースをお伝えします。」゛
「お、調度いいタイミングだったな!!」
生駒はそう言うと、自席からテレビ前のソファに移動した。他の人は自席に座りながらテレビに釘付けとなっていたが、足立はテレビから少し離れた所にある給湯コーナーで、マグカップに紅茶を入れながら観ていた。
“「現在、警視庁は、呪い事件に関する新たな記者会見を行っております。では、会見の模様をどうぞ。」”
記者会見の映像に切り替わった。
“「呪いについて、研究を続けておりますが、新たな情報を伝えさせていただきます。研究の結果、呪いによって亡くなった方の脳には特定の症状が起こることがわかりました。具体的には、脳の一部分が熱エネルギーにより、焦げたり、溶解したりするといった現象です。
これにより、今後、自殺と判断されたご遺体に関しては、司法解剖を積極的にさせていただき、先ほどの症状が見つかった場合は、殺人事件としての取り扱いにしていく方針としました。
今後、自殺者の司法解剖につきましては、ご遺族の同意がなくても、捜査上必要と判断し、行わせていただくこととなりますので、ご理解をお願いしたい。」”
「…これって凄い話ですね。」
いつの間にか、ほとんどの人間がソファの回りに集まっており、その一人である畑が驚いた表情で言った。
畑はすぐに村上のことが思い浮かんだ。村上の奥さんはこの対象になったのかとか、呪いで殺されたんじゃないかとか、どんなに考えても村上本人にはとても聞けないなと思った。
「ふーん、警察も呪いについては口が固いねぇ。今の話じゃ脳がそうなる仕組みは全くわからんねぇよなぁ。」
荒木の言うように、警察は一切呪いの方法は明るみにしなかった。当然方法がわからなければ、脳がそうなる仕組みも理解できるわけはない。
記者会見では、マスコミからの質問が嵐のように連発されていた。司法解剖を強制的に行うなら、やはり呪いの方法を明るみにすることが必要なのではとか、国民は納得していませんがどのようなお考えですか、などと警察に対する批判が多かった。
畑は、知りたがるマスコミ、いや国民の考えは当然理解できるし、警察が隠す理由も大いに理解できた。この問題はしばらく平行線の状態だろうと思った。
「私はこればっかりは、一切呪いについてを明るみにしない警察が正しいと思うんだけどなぁ。」
山本が腕組みしながら呟いた。
「私も同感です。世の中は何でも面白たがりますからね。呪いの方法なんて公表されたら、呪いにより捕まったら死刑と言われたって試す奴は出てきますよ。」
三戸もテレビを眺めながら、山本に同調し、その横で畑も静かに頷いていた。
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