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第5節 決断の瞬間(とき)
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10月24日
ー群馬県前橋市ー
10時05分
池畑は、いつもの仕事着であるスーツ姿で、予定通り“群馬旅行゛に来ていた。
前橋駅を出た池畑は、群馬県警を“たまたま”訪れる前に、長尾智美の事件現場を見に行くことにした。
場所を確認するため、鞄から資料を取り出し住所を確認していると、ブー、ブーっと電話のバイブが鳴り、取り出した資料を脇に挟み、ポケットからスマホを取り出した。
「…千代田?」
池畑は、とりあえず電話に出た。
「もしもし、千代田か?」
「あ、でた!!もー、もしもしじゃないですよ!昨日3回掛けて一回も出なかったじゃないですか。わざとですか?」
千代田は露骨にイライラしていた。
「…え、あ、わりぃ気付かなかったよ。本当に。」
池畑は、昨日、喫茶店で一時間以上も正人との佐倉の思い出話を楽しんだ。久々に胸中に溜まっていたものを吐き出せて、気分良く店を出たが、スマホを忘れてしまい、そのまま帰宅してしまったのだ。元々あまりスマホを使わないため、気付くのが今朝になってしまった。
そこで、群馬に向かう前に慌てて喫茶店に行き、スマホを取り戻してから来たのだが、千代田には馬鹿にされそうなので、真実を言えないでいた。
「…もう。まぁ今は出てくれたし、池畑さんは嘘はつかないタイプですからね、信じましょう。」
池畑は、ちょっと胸が痛かった。
「…そ、それで、どうしたんだ?」
池畑はとりあえず話題を変え、このまま千代田と話しながら、現場の方角に向かうことにした。
「あ、そうそう。漸く報告できますよ。昨日、秋吉さんに色々聞けましたよ、桐生朱美のこと。」
桐生朱美と聞き、池畑は一度立ち止まった。
「秋吉に……あいつやっぱり何か隠してたな。」
「池畑さんも、秋吉さんに色々聞いてたみたいですね。でも、池畑さんは聞き方が甘いから全部流されてたんじゃないですかぁ?」
ちょっと馬鹿にしたような口調の千代田に池畑はイラっとしたが、堪えて会話を続けた。
「秋吉が何か隠してたとしたら、上からの指示だろう。…それで何がわかったんだ?」
電話の向こうで千代田がペラペラと手帳を捲る音がした。
「えーと、桐生朱美は小学生の時に両親が離婚し、父親に引き取られ、以来ずっと父親と二人の生活なんですが、その父親は現在行方不明のようです。」
「…そんなの、娘が殺人犯で捕まれば加害者家族は身を隠すくらいするだろう。」
池畑は、また長尾の事件現場を目指して歩き出した。
「いえ、父親がいなくなったのは、桐生朱美が捕まる前じゃないかと。急に職場に来なくなったようです。職場への聞き込みによると、勤務態度も真面目で、今まで無断欠勤なんて無かったと言ってました。」
「なるほど。父親が桐生朱美の呪いのターゲットになった…ってこともあるかもな。…動機があればな。」
「動機ならありますよ。桐生朱美の家宅捜索で、桐生朱美が母親に書いたと思われる手紙の下書きが見つかりました。」
「…手紙?」
池畑は、昨日正人と畑の話を聞いた時にもそのワードが出ていたことをすぐに思い出した。
「で、その内容が本題なんですが…。」
漸く話したかった事にたどり着けて少し嬉しそうに話す千代田だったが、池畑は目の前の人物に意識を奪われ、千代田の話は全く聞いていなかった。
「おっ、あれ!?池畑!?久しぶりだなぁ!」
現場に向かう途中で、今日たまたま会って話を聞きたかった知り合いに、本当にたまたま遭遇した。
「わ、悪い、千代田!また明日にでも聞くよ。」
池畑はそう言うと一方的に電話を切った。
ー 神奈川県警 署内 ー
「ちょっ、池畑さん!?」
プー、プー、プー、と虚しく通話切断の音が鳴り響く。
「池畑ぁぁあ!!」
休憩室で周りに人がいないことをいいことに、苛つきが限界の千代田はスマホに向かって思わず吠えた。しかし、たまたま部屋の前を通り掛かった不運な溝口だけが、その声に驚き、廊下に尻餅をついていた。
ー群馬県前橋市ー
10時05分
池畑は、いつもの仕事着であるスーツ姿で、予定通り“群馬旅行゛に来ていた。
前橋駅を出た池畑は、群馬県警を“たまたま”訪れる前に、長尾智美の事件現場を見に行くことにした。
場所を確認するため、鞄から資料を取り出し住所を確認していると、ブー、ブーっと電話のバイブが鳴り、取り出した資料を脇に挟み、ポケットからスマホを取り出した。
「…千代田?」
池畑は、とりあえず電話に出た。
「もしもし、千代田か?」
「あ、でた!!もー、もしもしじゃないですよ!昨日3回掛けて一回も出なかったじゃないですか。わざとですか?」
千代田は露骨にイライラしていた。
「…え、あ、わりぃ気付かなかったよ。本当に。」
池畑は、昨日、喫茶店で一時間以上も正人との佐倉の思い出話を楽しんだ。久々に胸中に溜まっていたものを吐き出せて、気分良く店を出たが、スマホを忘れてしまい、そのまま帰宅してしまったのだ。元々あまりスマホを使わないため、気付くのが今朝になってしまった。
そこで、群馬に向かう前に慌てて喫茶店に行き、スマホを取り戻してから来たのだが、千代田には馬鹿にされそうなので、真実を言えないでいた。
「…もう。まぁ今は出てくれたし、池畑さんは嘘はつかないタイプですからね、信じましょう。」
池畑は、ちょっと胸が痛かった。
「…そ、それで、どうしたんだ?」
池畑はとりあえず話題を変え、このまま千代田と話しながら、現場の方角に向かうことにした。
「あ、そうそう。漸く報告できますよ。昨日、秋吉さんに色々聞けましたよ、桐生朱美のこと。」
桐生朱美と聞き、池畑は一度立ち止まった。
「秋吉に……あいつやっぱり何か隠してたな。」
「池畑さんも、秋吉さんに色々聞いてたみたいですね。でも、池畑さんは聞き方が甘いから全部流されてたんじゃないですかぁ?」
ちょっと馬鹿にしたような口調の千代田に池畑はイラっとしたが、堪えて会話を続けた。
「秋吉が何か隠してたとしたら、上からの指示だろう。…それで何がわかったんだ?」
電話の向こうで千代田がペラペラと手帳を捲る音がした。
「えーと、桐生朱美は小学生の時に両親が離婚し、父親に引き取られ、以来ずっと父親と二人の生活なんですが、その父親は現在行方不明のようです。」
「…そんなの、娘が殺人犯で捕まれば加害者家族は身を隠すくらいするだろう。」
池畑は、また長尾の事件現場を目指して歩き出した。
「いえ、父親がいなくなったのは、桐生朱美が捕まる前じゃないかと。急に職場に来なくなったようです。職場への聞き込みによると、勤務態度も真面目で、今まで無断欠勤なんて無かったと言ってました。」
「なるほど。父親が桐生朱美の呪いのターゲットになった…ってこともあるかもな。…動機があればな。」
「動機ならありますよ。桐生朱美の家宅捜索で、桐生朱美が母親に書いたと思われる手紙の下書きが見つかりました。」
「…手紙?」
池畑は、昨日正人と畑の話を聞いた時にもそのワードが出ていたことをすぐに思い出した。
「で、その内容が本題なんですが…。」
漸く話したかった事にたどり着けて少し嬉しそうに話す千代田だったが、池畑は目の前の人物に意識を奪われ、千代田の話は全く聞いていなかった。
「おっ、あれ!?池畑!?久しぶりだなぁ!」
現場に向かう途中で、今日たまたま会って話を聞きたかった知り合いに、本当にたまたま遭遇した。
「わ、悪い、千代田!また明日にでも聞くよ。」
池畑はそう言うと一方的に電話を切った。
ー 神奈川県警 署内 ー
「ちょっ、池畑さん!?」
プー、プー、プー、と虚しく通話切断の音が鳴り響く。
「池畑ぁぁあ!!」
休憩室で周りに人がいないことをいいことに、苛つきが限界の千代田はスマホに向かって思わず吠えた。しかし、たまたま部屋の前を通り掛かった不運な溝口だけが、その声に驚き、廊下に尻餅をついていた。
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