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第5節 伝播
(2)
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20時05分
「じゃあ明日はあまり無茶はするなよ、本当に。まいどー!」
武井は手を振って三人を見送った。
「ごちそうさまでした!お休みなさい。」
畑たちは明日に備えて早めに切り上げて店を出た。店の前で解散とし、畑は一人で駅に、足立と粟田は近くの粟田のアパートに行くことにした。
アパートに向かう道中、ほろ酔いで上機嫌に歩く足立に、粟田が冷静に忠告した。
「ねぇ、かぐらちゃん。本当に気をつけてよ。かぐらちゃん、のめり込みやすいでしょ?呪いなんて、UFOの時とは訳が違うわよ。人が死んでるんだから。」
「大丈夫だって!霞ちゃん心配し過ぎぃ。私はただ…オカルトファンとして、詳しく知りたいだけ。危険なことなんて、するつもりもないわよ。…それに、私のこと詳しい霞ちゃんも一緒でしょ。村上さんもいるし…何かあったら助けてね。ふぅ、よぉし、いくぞぉーー!」
足立はいたずらな笑顔を見せて、酔った勢いでテンションが上がり、粟田のアパート目指してスキップで走り出した。
「ちょ、かぐらちゃん!もう。」
粟田も何か楽しくなり、呆れた顔を捨て、笑顔で足立を追いかけた。
10月28日
ー 駅構内 ー
7時40分
池畑はダメ元で昨日の夕方、溝口に対して前橋市への出張同行の依頼メールを送っていた。池畑は、佐倉の件で混乱している溝口との仲を戻したかった。
特に返事は来なかったが、昨日の内に追加で、駅への集合時間を記したメールも送っていた。
池畑は、集合時間五分前から駅で溝口を待っていた。
淡い期待は抱いていたが、姿は現さないだろうと確信していると、時間ぴったりに溝口がやって来た。
溝口は何も言わず、軽く会釈しただけで、二人はそのまま無言で改札を通って電車に乗り、ボックスシートで向かい合わせに座った。
二人は走り出した電車から流れ行く景色をただ眺めているだけだった。
出発してから20分ほどが経っただろうか、溝口を気にかけ、気付かれないように表情を確認しようとした池畑に対し、同じことを考えていた溝口と調度目が合い、二人は慌てて逸らす素振りをした。
その出来事が可笑しく感じ、池畑は思わず吹き出すように笑ってしまった。
「ハハハ、くだらんな。…ありがとうな、今日来てくれて。それから、昨日は恐い思いをさせちまったみたいで、すまん。」
「……いえ、自分がビビりなだけです。別に気味悪がってるとかじゃないんです。家に帰ってよく考えたら、呪って人が殺せるんだから、逆に生き返らせることができても不思議じゃないんじゃないかと思いました。むしろ、内容的には呪いの数万倍素晴しいことです。…ただ、昨日、佐倉先生を見た時に逃げ出すように帰ってしまい、傷付けてしまったものだと…。」
溝口も本音を話し、頭を下げた。
「もういい。もういいんだ。もし良かったら、今度ゆっくり佐倉に会いに来てやってくれ。」
溝口は笑顔を見せて頷いた。
「今日、長尾智美の金融機関の口座を犬童さんたちが調べる。その中に、呪いの紙を購入した振込みがあるかもしれない。つまり、その中の誰かが千代田に呪いをかけた犯人かもしれないってことだ。」
池畑が緊張感ある話題に変えたが、溝口は、気持ちが落ち着いたのか、リュックサックからハンバーガーとポテト、飲み物を取り出し、周りを気にせずに食べ始めた。
「…お前、よく電車で匂いを気にせずにそんなもん食えるな。あとわざわざリュックに入れなくても…。はぁ…。」
池畑の心中では、相変わらず溝口は溝口だと、安心する気持ちと呆れた気持ちが渦を巻いた。
対して溝口は、何を言われているのかあまり理解してないように、大きな口でハンバーガーに齧りついた。
「食いながらでいいから、これを見ろ。」
池畑は鞄からノートパソコンを取り出し、溝口に画面を向けた。
「これは、千代田の通夜の時に、秋吉さんから貰ったディスクの映像だ。」
「ふぉれって、けぇいしゃつしょみゃいぶの…。」
「…きったねぇなぁ、たくっ、ちゃんと飲み込んでから話せ。」
池畑は一発頭を叩いた。
「あぁ、警察署内部の監視カメラだ。」
池畑は、カメラ映像を早回しし、暫くして通常回しに戻した。
「ここだ。見ろ。」
それは、千代田が落下する五分前のカメラ映像だった。
「この人って…。てか、この更衣室は…。」
「あぁ、呪いをかけた方向は、前に瀬古先生から報告があった通り、平面じゃなく立体的に把握することができることがわかった。千代田の位置を屋上の喫煙スペースだと仮定すると、この更衣室がドンピシャだ。…更に。」
またカメラ映像を早回しし、すぐに通常回しに戻した。
「千代田が落下してからすぐの画像だ。」
そこには、五分前に入って行った人物が、逆に更衣室から出てくる映像だった。
「そんな…。」
溝口は、ハンバーガーを食べる仕草を止め、絶句した。
「だが、まだこの映像だけじゃ弱い。何か決め手となる証拠がないとな。」
「…………。」
溝口は、今の推論が真実でないことを願っていた。
「じゃあ明日はあまり無茶はするなよ、本当に。まいどー!」
武井は手を振って三人を見送った。
「ごちそうさまでした!お休みなさい。」
畑たちは明日に備えて早めに切り上げて店を出た。店の前で解散とし、畑は一人で駅に、足立と粟田は近くの粟田のアパートに行くことにした。
アパートに向かう道中、ほろ酔いで上機嫌に歩く足立に、粟田が冷静に忠告した。
「ねぇ、かぐらちゃん。本当に気をつけてよ。かぐらちゃん、のめり込みやすいでしょ?呪いなんて、UFOの時とは訳が違うわよ。人が死んでるんだから。」
「大丈夫だって!霞ちゃん心配し過ぎぃ。私はただ…オカルトファンとして、詳しく知りたいだけ。危険なことなんて、するつもりもないわよ。…それに、私のこと詳しい霞ちゃんも一緒でしょ。村上さんもいるし…何かあったら助けてね。ふぅ、よぉし、いくぞぉーー!」
足立はいたずらな笑顔を見せて、酔った勢いでテンションが上がり、粟田のアパート目指してスキップで走り出した。
「ちょ、かぐらちゃん!もう。」
粟田も何か楽しくなり、呆れた顔を捨て、笑顔で足立を追いかけた。
10月28日
ー 駅構内 ー
7時40分
池畑はダメ元で昨日の夕方、溝口に対して前橋市への出張同行の依頼メールを送っていた。池畑は、佐倉の件で混乱している溝口との仲を戻したかった。
特に返事は来なかったが、昨日の内に追加で、駅への集合時間を記したメールも送っていた。
池畑は、集合時間五分前から駅で溝口を待っていた。
淡い期待は抱いていたが、姿は現さないだろうと確信していると、時間ぴったりに溝口がやって来た。
溝口は何も言わず、軽く会釈しただけで、二人はそのまま無言で改札を通って電車に乗り、ボックスシートで向かい合わせに座った。
二人は走り出した電車から流れ行く景色をただ眺めているだけだった。
出発してから20分ほどが経っただろうか、溝口を気にかけ、気付かれないように表情を確認しようとした池畑に対し、同じことを考えていた溝口と調度目が合い、二人は慌てて逸らす素振りをした。
その出来事が可笑しく感じ、池畑は思わず吹き出すように笑ってしまった。
「ハハハ、くだらんな。…ありがとうな、今日来てくれて。それから、昨日は恐い思いをさせちまったみたいで、すまん。」
「……いえ、自分がビビりなだけです。別に気味悪がってるとかじゃないんです。家に帰ってよく考えたら、呪って人が殺せるんだから、逆に生き返らせることができても不思議じゃないんじゃないかと思いました。むしろ、内容的には呪いの数万倍素晴しいことです。…ただ、昨日、佐倉先生を見た時に逃げ出すように帰ってしまい、傷付けてしまったものだと…。」
溝口も本音を話し、頭を下げた。
「もういい。もういいんだ。もし良かったら、今度ゆっくり佐倉に会いに来てやってくれ。」
溝口は笑顔を見せて頷いた。
「今日、長尾智美の金融機関の口座を犬童さんたちが調べる。その中に、呪いの紙を購入した振込みがあるかもしれない。つまり、その中の誰かが千代田に呪いをかけた犯人かもしれないってことだ。」
池畑が緊張感ある話題に変えたが、溝口は、気持ちが落ち着いたのか、リュックサックからハンバーガーとポテト、飲み物を取り出し、周りを気にせずに食べ始めた。
「…お前、よく電車で匂いを気にせずにそんなもん食えるな。あとわざわざリュックに入れなくても…。はぁ…。」
池畑の心中では、相変わらず溝口は溝口だと、安心する気持ちと呆れた気持ちが渦を巻いた。
対して溝口は、何を言われているのかあまり理解してないように、大きな口でハンバーガーに齧りついた。
「食いながらでいいから、これを見ろ。」
池畑は鞄からノートパソコンを取り出し、溝口に画面を向けた。
「これは、千代田の通夜の時に、秋吉さんから貰ったディスクの映像だ。」
「ふぉれって、けぇいしゃつしょみゃいぶの…。」
「…きったねぇなぁ、たくっ、ちゃんと飲み込んでから話せ。」
池畑は一発頭を叩いた。
「あぁ、警察署内部の監視カメラだ。」
池畑は、カメラ映像を早回しし、暫くして通常回しに戻した。
「ここだ。見ろ。」
それは、千代田が落下する五分前のカメラ映像だった。
「この人って…。てか、この更衣室は…。」
「あぁ、呪いをかけた方向は、前に瀬古先生から報告があった通り、平面じゃなく立体的に把握することができることがわかった。千代田の位置を屋上の喫煙スペースだと仮定すると、この更衣室がドンピシャだ。…更に。」
またカメラ映像を早回しし、すぐに通常回しに戻した。
「千代田が落下してからすぐの画像だ。」
そこには、五分前に入って行った人物が、逆に更衣室から出てくる映像だった。
「そんな…。」
溝口は、ハンバーガーを食べる仕草を止め、絶句した。
「だが、まだこの映像だけじゃ弱い。何か決め手となる証拠がないとな。」
「…………。」
溝口は、今の推論が真実でないことを願っていた。
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