colors -イロカゲ -

雨木良

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第2章 先輩と黄色

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【高校美術室】

同時刻。

ガラガラガラ。

トイレから戻った朝倉が、美術室のドアを開けると、トイレに行く前には居なかったはずの、内藤と曽我、二人の刑事がいた。

二人はドアが開く音で、入り口に目線を向けた。

「…び、びっくりしたぁ。」

朝倉は、予想してなかった展開に素直に驚いた。

「何で刑事さんが此処に?もう聞き込みは終わって帰られたのかと…。」

「勝手に入ってすみません。電気が付いてたので、中にいらっしゃるのかと思いまして。」

内藤が頭を下げた横で、曽我は並べられた環奈の絵画を凝視していた。

「…あの、先生。この絵は由比環奈さんが描いたものですよね?」

曽我の質問に、「えぇ。」と朝倉は返答した。

「この絵は何をテーマにした絵なんですか?どの作品にも様々な色をした人の影のようなものが描かれていて、それに右の絵にいくほど、その人影の色が黒くなっていってますよ。」

「色…漆黒…遺書に書かれていた単語…。」

曽我の発見に、内藤が考えながら呟いた。

「確かに遺書に書かれていた単語も連想できますが、この絵のスタイルは彼女のお決まりで。由比は、色々な生き物を影だけで表し、彼女の中でイメージする色でその影に命を吹き込む。…どれも素晴らしい作品ですよ。」

内藤は、朝倉の説明を頷きながら聞いていたが、曽我は朝倉の顔を睨み付けるような視線を送っていた。その視線に気が付いた朝倉は、曽我の顔ではなく、環奈の絵画を見つめながら聞いた。

「…曽我さん…でしたっけ?何なんですか?」

「朝倉先生、あなたは嘘をついた。色や漆黒というキーワードはこの絵画に直結するじゃないですか。何かを隠してると疑われてもしょうがないですよ!」

興奮しながら追及する曽我は、徐々に口調も荒くなってきていた。それに対し、朝倉は冷静なまま淡々と答えた。

「それは、その絵画の話ですか?それはあなたのこじつけですよ、曽我さん。私には理解が出来ない。仮に、由比の遺書をその絵画に結び付けたとして、何が分かるんですか?」

「…それは…。」

曽我は即答できなかった。

「で、でも、先生は由比環奈を特に可愛がってましたよね。他の部員が不服に感じていたようですよ。」

曽我は苦し紛れに違う切り口で攻めこんだが、朝倉は変わらず冷静に返答した。

「まぁ、部員が不服に感じていたのなら、配慮に欠けていたとして謝りますが、才能がある子の才能を更に伸ばそうとすることがいけない事ですか?由比は、部員の中でもずば抜けた才能がありました。彼女は絵描きで食べていくのが夢でした。教師が生徒の夢の手助けをしたらダメなんでしょうか?」

「………それは…。」

「もう行くわよ!先生、お時間ありがとうございました。」

内藤は、また言葉が詰まる曽我の腕を握り、引き摺るようにして美術室を出て行った。身長が150センチ程度の小柄な女性とは思えない力に、曽我はされるがままだった。

朝倉は二人の姿が視界から消えると、開けっ放しになった入口のドアを閉めて、環奈の絵画の正面に椅子を置き、ゆっくり腰を下ろして、一つ一つの絵画と対話するようにじっくりと眺めた。

「…“環奈”…。」

涙が頬を伝った。
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