colors -イロカゲ -

雨木良

文字の大きさ
18 / 55
第2章 先輩と黄色

(7)

しおりを挟む
「イテテテ。凄い力ですね。」

内藤に力いっぱい引っ張られながら歩く曽我が悲鳴をあげると、内藤は掴んでいた手を離した。曽我が掴まれていた部分が赤くなってないかを確認していると、内藤は何も言わずに学校の出口へと向かって歩き出した。

「ちょ、待ってくださいよ。先輩!」

曽我が慌てて追い付いた。

「彼、何か隠してるわ。」

内藤は足を止めることなく、正面を向きながら言った。

「へ?…だったら…。」

「今は何も追及する材料がないのよ。今は引き下がるのが正解。…署に戻るわよ。曽我くんは朝倉圭介について調べて。」

【中央公園】

同時刻。

夏音ら三人はまだ中央公園のベンチで話をしていた。片倉が、環奈の死に朝倉が関係していると口に出してから、夏音は、環奈と朝倉が二人でいる日常の部活中などの場面を思い出していた。

「確かに部員の中には朝倉先生は環奈の事ばっかり可愛がってって、陰で文句言ってる人はいますけど。…私は何というか、環奈は本当に絵の才能があるから、先生も期待して環奈の為に色々尽くしてるのかなって思ってたんですけど。」

「初めはそうでも、どっかで行き過ぎた関係になったのかも…。」

夏音の意見に、片倉はすぐに切り返した。すると、今まで黙って聞いていた小島がスクッとベンチから立ち上がり、座ったままの二人の顔を見ながら話始めた。

「結局、夏音ちゃんも由比さんのプライベートについては余り知らないみたいだな。だったら、俺たちで由比さんの死の真相を調べようぜ。俺は俺で、夏音ちゃんは夏音ちゃんで責任をそれぞれ感じてるんだからさ。縁の話のような違った真相がわかれば、自分たちも救われるし、本当に原因となった奴に罰を与えないと。」

小島の提案に女子二人は顔を見合わせた。

夏音は、正直罰を与えるとか、罪を償わせるとか、そんな大層なことは望んではいないが、自分のせいで死んだわけではないという事実が分かれば、今の自分にとっては救いになると感じた。それに、環奈のことを全く知らないという現実に、環奈に申し訳なく思い、今からでも彼女のことを知りたいと感じていた。

「まぁ、いいんじゃない?絶対朝倉先生が関係していると思ってるから。私は先生のことを調べてみるわ。」

そう言ってベンチから立ち上がった片倉は、急に眩暈がしてよろめいた。

「せ、先輩!!危ない!」

夏音は、片倉が倒れてしまうと思い、お腹の子を守るべく身を呈して片倉の身体を支えようと必死に駆け寄ったが、勢い余って夏音が転んでしまった。

「ちょ、大丈夫?ごめんなさい、ちょっと立ち眩みしちゃって。」

「夏音ちゃん、凄い勢いで縁を助けに行ったな。」

片倉と小島は転んだ夏音に駆け寄り、立ち上がる夏音を支えた。キョトンとした片倉の顔を見て夏音は確信した。

(やっぱり片倉先輩、自分が妊娠してること気付いてないんだ。)

「…だ、大丈夫です。すみません、何か焦っちゃって。」

夏音は、そう言いながら膝に付いた土を払った。小島は夏音が大丈夫そうなのを確認すると、ベンチに置いといた鞄を手に取った。

「今日は急に来てもらってすまなかった。ありがとう。また連絡するから、由比さんの死の背景に何があったか突き止めよう。」

「またね。三嶽さん。」

そう言うと、二人は公園の出入口に向かってゆっくり歩き出した。

「あ、あの!」

夏音が二人を呼び止めると、二人は夏音に振り返った。

「そ、そのぅ…お二人は付き合ってるんですか?」

夏音の急な質問に、小島は“俺らのこと?”という意味で自分たちを指差すジェスチャーで質問を返すと、夏音はコクンと頷いた。

二人は顔を見合わせて笑い出した。

「まさかぁ!それは無いって!ハハハハ。」

「三嶽さん、私が小島くん選ぶと思う?」

笑い飛ばす二人に、夏音は予想が外れたと理解しキョトンとした。

「あ…すみません。仲が良く見えたんで、つい…。」

(じゃあ、片倉先輩の子どもは誰の子…?)

夏音はまた無意識に片倉のお腹を見つめていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

処理中です...