colors -イロカゲ -

雨木良

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第2章 先輩と黄色

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先輩二人と別れた夏音は、片倉の子どもの父親について考えながら家路についていた。夏とはいえ、もう陽が大分傾き、近くの住宅からは、美味しそうな夕食の匂いが立ち込めていた。

「あっ、ご飯いらないって言ってきちゃったんだ。」

夕食を駅の近くで済ませてから帰るかも考えたが、母がカレーを作っていたことを思い出し、それなら自分の分も残っているはずだと思い、真っ直ぐ家に帰ることにした。

「…やはり、三嶽夏音は不思議な子だ。」

後方から、誰かが物陰に隠れて夏音を見つめていたが、夏音は全く気付いていなかった。

【車内】

同時刻。

高校から警察署へ戻る車中。曽我は運転をしながら、内藤の話を聞いていた。

「だから、単なる自殺とは思えないのよねぇ。あっ、話してる内に神谷(かみや)君から連絡来たわよ!」

内藤は、ピコンと鳴ったスマホを取り出し、同僚の神谷刑事から送られてきたメールを開いて読み上げた。

「えーと、朝倉圭介46歳独身。現在の小田原高校に赴任しつきたのは四年前ね。あれ?この人変わってるわね。大学では、心理学を学んでたみたい。社会人になってからもう一度大学に通って教員免許を取ったのね。心理学から美術…なんか繋がりがあるのかしら?」

「…うーん、でも由比環奈の作品は何と言うか、人の内面を表してるような感じがしませんでした?そういう意味で言えば、心理学とアートって繋がってくるのかもしれませんよ。」

曽我がちょっと得意気に答えた。

「…ふーん、あなた芸術とかわかる人だったのね。全然似合わないけど。」

得意気に話す曽我が気に食わなかった内藤が素っ気なく返すと、曽我は苦笑いをした。

「とりあえず署に戻ったら、係長と課長に報告して、判断煽りましょうね。」

「そうですね。でも先輩、今さらですけどこの事件、自殺濃厚ってことで多くのメディアが発表してしまってますけど、まさか…殺人なんて考えてたりしないです…よね?」

曽我が恐る恐る聞いた。過去にも同じように、自殺だと断定していた事件が殺人に切り替わったことがあり、その時の担当刑事が内藤だった。

曽我は、真実をねじ曲げたくはないとは思いつつも、殺人事件となると気持ちを入れ替えて捜査に当たらなくてはという考えがあったために聞いたのだ。

「…まだわからないわ。でも、何かありそうな予感…て感じかな。」

内藤は正面を見つめながら呟くように答えた。

【小林宅】

同時刻。

奏は、環奈の事件と神楽との一件で精神が悲鳴を上げるくらいに疲労しており、帰宅するなりベッドに倒れ込み、うつぶせ寝のまま今に至っていた。本当は疲れて眠りたいのに、胸の中のモヤモヤする気持ちが眠りを妨げており、ストレスが溜まる一方だった。

「かなー!ご飯よー!」

一階の階段下から母親が呼ぶ声が聞こえているが、何とも言えないイライラした気持ちで胸がいっぱいな奏は食欲も湧かず、無視をしていた。

プルプル、プルプル。 

顔の正面に放置したスマホのバイブが着信を知らしており、奏は嫌々スマホを手に取ると、相手が夏音だったので、電話を取った。

「…はい。」

「奏?あれ、大丈夫?何か声が小さいけど。」

「大丈夫よ。…よっこいしょ!」

奏は漸くベッドから起き上がり、そのままベッドに腰掛けた。

「で、どうしたの?夏音。…あ、ちょっと待って。」

奏の持つスマホがまた震えたため、画面を見てみると神楽からの着信を表示していた。

「ごめん、夏音!また掛け直すね!」

そう言って奏は夏音の返事を待たずに電話を切って、すぐに神楽からの着信に切り替えた。

「もしもし、神楽?」

「…奏、さっきはごめん。私もう死にたい…。」

死という言葉を連想させるように、弱々しく覇気がない声の神楽に、奏は寒気を感じた。 

ー第3章へ続くー
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