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第4章 父親と黒色
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最初に彰のイロカゲを見た時は、感情を表す部分のオレンジ色が嬉しくて感情が高ぶってしまい、下半分の真っ黒なイロカゲを気に止めることがなかった。だが、改札から遠ざかっていく彰の後ろ姿のイロカゲは、まだイロカゲの操作が出来ない時期に、大型病院で救急搬送されてきた患者をたまたま見かけたり、同じく偶然、道端で倒れた人を見た時と、全く同じ印象だった。
そして、真っ黒なイロカゲをしていた人たちは、それから遠くない内に亡くなってしまったことも、夏音は知っていた。きっと、紫色になる一歩手前の色なんだろうと夏音は考えていた。
そのイロカゲが、自分の父親に現れたのだ。夏音は、この現実を受け止めたくはなかった。
夏音の視界から彰が消えるまでの間、彰は一切夏音には振り返らることはなかった。それは、彰の反省の表れだった。
「…一番言わなければならないことが、言えなかった。」
彰は、夏音には一切聞こえることのない呟きとともに、夏音の視界から消えていった。
夏音は涙を拭い、とりあえず家に帰るため、彰とは違う路線の改札へと向かった。
夏音の頭の中では、次は母親の茜のことが過っていた。
幸せだった四人家族を真っ二つにした原因は、茜にあったことを知った今、家に帰って、仕事から帰ってきた茜と普通に接することが出来るのか、自分で自分が不安だった。
しかし、茜は今日、自分が彰に会うことを知っているようだったし、彰から離婚の原因を聞いているんだと、端から思っているかもしれない。…勿論、そうじゃないかもしれない。
等々、結論が一切出ない無駄な悩みが脳内を駆け巡り、少し気晴らししてから帰ろうと、改札の前で方向転換し、駅の外へと歩き出した。
夏音は、宛てもなく、とりあえず目印に小田原城を目指して歩き始めた。夏音は、漸く涙は止まったが、真っ赤な目を人に見られたくはなく、ハンカチで顔を隠しながら歩いていた。
「…夏音ちゃん?」
対向者とすれ違い様に声を掛けられ、夏音はビクッとして恐る恐る振り向いた。
「やっぱり!何でハンカチで…あ、あれ?何かあったのか?」
「…小島先輩。」
小島は、夏音が泣いていることに気が付き、心配そうに聞いた。今、一番知り合いに会いたくなかった夏音は、自分の運の無さに落胆した。
「…大丈夫?」
小島がしつこく、顔を覗き込むように聞いてきた。
「だ、大丈夫です。ちょっと、目に…ゴミが…入って。」
安易な嘘で誤魔化そうとした夏音。そんな夏音を察し、小島はこれ以上、目の腫れについては聞かなかった。
「そ、そっか、そりゃ大変だぁ!」
小島の演技も大根だった。夏音は、思わず笑いそうになってしまったが、自分の為に演技してくれてると思い、表情には出さないように頑張った。
「…ところで、何してるの?」
小島の言葉に、夏音は一瞬詰まり、そう言う小島も何をしているのか推測するために、小島の足元から頭の先まで、格好を見て答えた。
「…ちょっと家族と会ってて、今から小田原城に行こう…かと。先輩は…これからお出掛けですか?」
家族と会ってて小田原城に、のくだりがよく理解出来ない小島だったが、会話を続けた。
「いや、今日は急遽学校休みになったもんだから、早朝のコンビニバイト行っててさ、今帰りなんだ。…家族は今から会うの?」
「…あ、いえ。もう会ってきて。なんか気持ち落ち着けたくなって、一人で散歩っていうか…。」
「つまりは、一人で、今は暇?」
グイグイ迫り来る小島に、夏音は呆気をとられながらも、首を縦に振った。すると、小島は満面の笑みで言った。
「俺も行っていい?小田原城!」
「ふぇ!?」
夏音はまた一瞬固まってしまったが、やはり小島の勢いに押され、首を縦に振った。
ここから小田原城への道中。10分間もない中で、また夏音にとって衝撃なことが起きることになる。
小田原城へと通じる広めの歩道を並んで歩き出した二人。平日ということもあり、通行人はそこまで多くは無かったが、夏音は知り合いに見られたら、良からぬ誤解を与えそうで、少し心配していた。
そんな夏音とは裏腹に、小島は嬉しそうな表情で言った。
「急にごめんね。邪魔だったかな?」
夏音は、確かに一人になりたかったのだが、先輩に対して真っ正直に、邪魔ですとは言えずに、首を横に振った。
「あ、それと昨日はありがとうね。急に呼び出しちゃった上、情けない話しちゃって。三嶽さんのお陰で、気持ちが少し落ち着いたよ。」
夏音は、小島の言葉で、片倉の妊娠の件を思い出したが、小島に聞けるわけもなく、もう一つ抱いていた疑問をぶつけた。
「…あの、昨日のって、何で私だったんですか?奏の方が良かったんじゃ…あ、いや、迷惑だったとかじゃなくて、奏の方が環奈とは仲が良かったんで…。」
「…………。」
さっきまで威勢の良かった小島が急に黙ってしまい、驚いた夏音は、小島の表情を伺った。
夏音の視線に気が付いた小島は、立ち止まり、夏音の顔を見つめた。
「ふぇ!?」
夏音は不思議そうな表情を浮かべ、小島に合わせて立ち止まった。二人は歩道の真ん中で立ち止まっていたため、通行人は左右に枝分かれして二人を避けて通っていた。
「…あの…どうしました?……先輩?」
小島は一瞬目を反らし、下を向くと、何かを決意したかのように、顔を上げ、再び夏音の目を見つめた。夏音は、さっきと違う小島の眼差しに、少しドキっとした。
「…それは…夏音ちゃん、君に来て欲しかった。…君に話を聞いて欲しかった……君の顔が見たかった。………好き…なんだ、君が。」
小島は、言葉を紡ぐうちに、遠回しな言い方じゃ伝わらないと思い、最後にストレートな言葉を伝えた。
「…………ふぇ!?」
夏音は、思いも寄らない展開に、顔を真っ赤にしてまた固まってしまった。
そして、真っ黒なイロカゲをしていた人たちは、それから遠くない内に亡くなってしまったことも、夏音は知っていた。きっと、紫色になる一歩手前の色なんだろうと夏音は考えていた。
そのイロカゲが、自分の父親に現れたのだ。夏音は、この現実を受け止めたくはなかった。
夏音の視界から彰が消えるまでの間、彰は一切夏音には振り返らることはなかった。それは、彰の反省の表れだった。
「…一番言わなければならないことが、言えなかった。」
彰は、夏音には一切聞こえることのない呟きとともに、夏音の視界から消えていった。
夏音は涙を拭い、とりあえず家に帰るため、彰とは違う路線の改札へと向かった。
夏音の頭の中では、次は母親の茜のことが過っていた。
幸せだった四人家族を真っ二つにした原因は、茜にあったことを知った今、家に帰って、仕事から帰ってきた茜と普通に接することが出来るのか、自分で自分が不安だった。
しかし、茜は今日、自分が彰に会うことを知っているようだったし、彰から離婚の原因を聞いているんだと、端から思っているかもしれない。…勿論、そうじゃないかもしれない。
等々、結論が一切出ない無駄な悩みが脳内を駆け巡り、少し気晴らししてから帰ろうと、改札の前で方向転換し、駅の外へと歩き出した。
夏音は、宛てもなく、とりあえず目印に小田原城を目指して歩き始めた。夏音は、漸く涙は止まったが、真っ赤な目を人に見られたくはなく、ハンカチで顔を隠しながら歩いていた。
「…夏音ちゃん?」
対向者とすれ違い様に声を掛けられ、夏音はビクッとして恐る恐る振り向いた。
「やっぱり!何でハンカチで…あ、あれ?何かあったのか?」
「…小島先輩。」
小島は、夏音が泣いていることに気が付き、心配そうに聞いた。今、一番知り合いに会いたくなかった夏音は、自分の運の無さに落胆した。
「…大丈夫?」
小島がしつこく、顔を覗き込むように聞いてきた。
「だ、大丈夫です。ちょっと、目に…ゴミが…入って。」
安易な嘘で誤魔化そうとした夏音。そんな夏音を察し、小島はこれ以上、目の腫れについては聞かなかった。
「そ、そっか、そりゃ大変だぁ!」
小島の演技も大根だった。夏音は、思わず笑いそうになってしまったが、自分の為に演技してくれてると思い、表情には出さないように頑張った。
「…ところで、何してるの?」
小島の言葉に、夏音は一瞬詰まり、そう言う小島も何をしているのか推測するために、小島の足元から頭の先まで、格好を見て答えた。
「…ちょっと家族と会ってて、今から小田原城に行こう…かと。先輩は…これからお出掛けですか?」
家族と会ってて小田原城に、のくだりがよく理解出来ない小島だったが、会話を続けた。
「いや、今日は急遽学校休みになったもんだから、早朝のコンビニバイト行っててさ、今帰りなんだ。…家族は今から会うの?」
「…あ、いえ。もう会ってきて。なんか気持ち落ち着けたくなって、一人で散歩っていうか…。」
「つまりは、一人で、今は暇?」
グイグイ迫り来る小島に、夏音は呆気をとられながらも、首を縦に振った。すると、小島は満面の笑みで言った。
「俺も行っていい?小田原城!」
「ふぇ!?」
夏音はまた一瞬固まってしまったが、やはり小島の勢いに押され、首を縦に振った。
ここから小田原城への道中。10分間もない中で、また夏音にとって衝撃なことが起きることになる。
小田原城へと通じる広めの歩道を並んで歩き出した二人。平日ということもあり、通行人はそこまで多くは無かったが、夏音は知り合いに見られたら、良からぬ誤解を与えそうで、少し心配していた。
そんな夏音とは裏腹に、小島は嬉しそうな表情で言った。
「急にごめんね。邪魔だったかな?」
夏音は、確かに一人になりたかったのだが、先輩に対して真っ正直に、邪魔ですとは言えずに、首を横に振った。
「あ、それと昨日はありがとうね。急に呼び出しちゃった上、情けない話しちゃって。三嶽さんのお陰で、気持ちが少し落ち着いたよ。」
夏音は、小島の言葉で、片倉の妊娠の件を思い出したが、小島に聞けるわけもなく、もう一つ抱いていた疑問をぶつけた。
「…あの、昨日のって、何で私だったんですか?奏の方が良かったんじゃ…あ、いや、迷惑だったとかじゃなくて、奏の方が環奈とは仲が良かったんで…。」
「…………。」
さっきまで威勢の良かった小島が急に黙ってしまい、驚いた夏音は、小島の表情を伺った。
夏音の視線に気が付いた小島は、立ち止まり、夏音の顔を見つめた。
「ふぇ!?」
夏音は不思議そうな表情を浮かべ、小島に合わせて立ち止まった。二人は歩道の真ん中で立ち止まっていたため、通行人は左右に枝分かれして二人を避けて通っていた。
「…あの…どうしました?……先輩?」
小島は一瞬目を反らし、下を向くと、何かを決意したかのように、顔を上げ、再び夏音の目を見つめた。夏音は、さっきと違う小島の眼差しに、少しドキっとした。
「…それは…夏音ちゃん、君に来て欲しかった。…君に話を聞いて欲しかった……君の顔が見たかった。………好き…なんだ、君が。」
小島は、言葉を紡ぐうちに、遠回しな言い方じゃ伝わらないと思い、最後にストレートな言葉を伝えた。
「…………ふぇ!?」
夏音は、思いも寄らない展開に、顔を真っ赤にしてまた固まってしまった。
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