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第4章 父親と黒色
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「………何?」
恐らく神楽からは、画面を通して二人の姿が見えているのだろう。一言目から、ぶっきらぼうな言葉が返ってきた。
来は動じることなく、インターホンに向かって答えた。
「神楽さんだよね?小林さんと佐藤です。お節介かもしれないけど、君の事が心配で…」
「…大丈夫。だから帰って。」
神楽はそう言うと、一方的にインターホンを切った。奏が、がっかりしていると、来は躊躇うことなく、もう一度インターホンを押した。
「…何?まだいたの?」
神楽は明らかに機嫌を損ねている口調になった。
「今帰るわけには行かない。君が何故昨日のような行動をとったのか、理由を教えて貰いたいんだ。」
ガツガツいく来を、奏は呆気にとられた表情で見つめていた。
「…何で?佐藤くん、そんなに私と関わりないでしょ?」
「小林さんは関わりあるだろ?俺は付き添いだ。小林さんの気持ちも理解してあげてくれ。」
来の言葉に、奏は驚いた。来と会ったのは偶然だし、今の言葉は嘘であることがすぐに理解できたが、何故、来が嘘を付いてまで、神楽に真相を聞きたいのかは、奏には分からなかった。
「……わかったわ。今開ける。」
神楽は、奏の名前に渋々納得したようだった。来は奏に振り向き、ニコリと微笑んだ。
1分後に、神楽がゆっくり玄関を開けた。まだ、寝起きのような上下スウェット姿で、髪もボサボサの状態の神楽が顔をだした。
「…寝起きで悪かったわね。」
神楽は、指で髪を梳かしながら、二人を招き入れた。
「今日は親は仕事で、私しかいないから。…どうぞ。」
神楽は、二人を部屋に通し、ダイニングテーブルに座らせ、神楽は対面に座った。神楽が座ると、早速来が話を切り出した。
「悪かったね、急に押し掛けて。」
「別に。暇だからいいけど。…あと、命の恩人だし…ね。」
神楽は、決して来たちとは目を合わせようとはしなかった。
「…とりあえず無事で良かったよ、ホント。ね!」
来は奏の顔を伺いながら言った。奏はとっさの振りに、頷くことしかできなかった。
神楽は、来の言葉が演技臭く感じたが、特に深掘りはしないことにし、来に質問した。
「…目的は何?知ってるわよ、あなたたちが家の前で偶々会ったってことは。佐藤君が来た目的は、一体何?」
「あら、バレてたのか。じゃあ単刀直入に言うね。…スマホ、見せてよ。」
来が神楽に手を伸ばしながら言った。すると、神楽はニヤリと笑い、首を横に振った。
「残念!スマホさ、あなたに助けられた時、勢いで線路に落ちちゃったみたいなのよ。だから手元になくて。」
奏は、スマホと聞いて、神楽が駅に向かう前に、スマホの画面を見て様子がおかしくなったことを思い出した。併せて、神楽を助けた後に、夏音が来と、その話をしていたことも記憶に残っていた。
「…ホントに?」
来は、詰め寄るように聞いた。
「嘘付いてどうするのよ。…奏か三嶽さんに聞いたんでしょ、スマホのこと。」
神楽が来の目を見て聞いたが、来は特に頷くなどのリアクションは取らなかった。続けて神楽は奏の顔を見ると、奏はビクンと肩を震わせ、首を勢いよく横に振った。
「…何が知りたいのよ。」
「君を死に追い込んだ奴を知りたい。…それが、由比さんの件にもつながるかもしれないだろ?」
奏は、来が環奈の件について何かを調べていることに驚き、初めて口を開いた。
「…あの…佐藤くんは環奈の事件、気になってるの?」
「あ、うん。ただの自殺じゃないんじゃないかって噂を聞いてさ。それでその後、久保寺さんまで…。」
神楽は、深い溜息をつくと、立ち上がってキッチンに向かいながら話し出した。
「…佐藤君は命の恩人だもの。恩人の質問には答えるわ。」
神楽は、二人に紅茶を入れようと茶葉を探しながら、更に続けた。
「私ね…脅されてたのよ。」
「…誰に?」
キッチンとダイニングの間のカウンターから、来が顔を覗かせた。神楽は紅茶のティーバッグをマグカップに入れて、電気ポットからお湯を注ぎながら答えた。
「…先生よ。」
「…先生って?」
ゴボボボボ。
来の質問に答えるように、電気ポットが、中身が空になった虚しい音を立てた。
【三嶽宅前】
夕刻。
夏音は、小島と別れた後も、中々家に戻る気が起きずに、街中をブラブラとして時間を潰していた。
今日、母親の茜に会ったらどんな顔をすれば正解なのかが分からなく悩んでいたが、行く場所に尽きた夏音は、無意識に自宅に向かっていたらしく、今に至る。勿論、未だに結論は出ていない。
家の中の様子を外から伺うと、どうやら茜は帰宅しているようで、キッチンらへんから、食材を切る音が響いていた。
「…行くか。」
夏音はそう呟くと、玄関をゆっくりと開けた。
すると、すぐに廊下の先、キッチンに直接繋がる扉が開いて、茜が顔を覗かせた。夏音は、思わずハッとした表情になった。
「おかえり、夏音。」
茜は夏音のリアクションを見て、彰から全てを聞いたに違いないと思ったが、その事には何も触れなかった。
「…た、ただいま。」
夏音は、目を反らしてそう言うと、自分の部屋がある二階へと階段を駆け上っていった。
夏音は、部屋に入るなりベッドに飛び込んだ。彰からあんな話を聞いたが、別に茜を嫌いになったわけでもなく、むしろ、彰と別れた後も、本当に良い母親として、自分を大切なは育ててくれている茜には感謝しており、大好きな気持ちも変化などしていなかった。
自分からは、絶対にいつも通りの接し方にしようと心掛けて玄関を開けたが、茜に不意討ちされて、変なリアクションを取ってしまった自分を、ただただ悔いていた。
コンコン。
部屋の扉がノックされたが、夏音は今は茜に会いたくないと思い、返事をしなかった。
コンコン。
二回目のノックにも、夏音はまだ反応はできなかった。すると、茜は夏音の部屋のドアに寄り掛かるように座り、扉の向こうの夏音に語り出した。
恐らく神楽からは、画面を通して二人の姿が見えているのだろう。一言目から、ぶっきらぼうな言葉が返ってきた。
来は動じることなく、インターホンに向かって答えた。
「神楽さんだよね?小林さんと佐藤です。お節介かもしれないけど、君の事が心配で…」
「…大丈夫。だから帰って。」
神楽はそう言うと、一方的にインターホンを切った。奏が、がっかりしていると、来は躊躇うことなく、もう一度インターホンを押した。
「…何?まだいたの?」
神楽は明らかに機嫌を損ねている口調になった。
「今帰るわけには行かない。君が何故昨日のような行動をとったのか、理由を教えて貰いたいんだ。」
ガツガツいく来を、奏は呆気にとられた表情で見つめていた。
「…何で?佐藤くん、そんなに私と関わりないでしょ?」
「小林さんは関わりあるだろ?俺は付き添いだ。小林さんの気持ちも理解してあげてくれ。」
来の言葉に、奏は驚いた。来と会ったのは偶然だし、今の言葉は嘘であることがすぐに理解できたが、何故、来が嘘を付いてまで、神楽に真相を聞きたいのかは、奏には分からなかった。
「……わかったわ。今開ける。」
神楽は、奏の名前に渋々納得したようだった。来は奏に振り向き、ニコリと微笑んだ。
1分後に、神楽がゆっくり玄関を開けた。まだ、寝起きのような上下スウェット姿で、髪もボサボサの状態の神楽が顔をだした。
「…寝起きで悪かったわね。」
神楽は、指で髪を梳かしながら、二人を招き入れた。
「今日は親は仕事で、私しかいないから。…どうぞ。」
神楽は、二人を部屋に通し、ダイニングテーブルに座らせ、神楽は対面に座った。神楽が座ると、早速来が話を切り出した。
「悪かったね、急に押し掛けて。」
「別に。暇だからいいけど。…あと、命の恩人だし…ね。」
神楽は、決して来たちとは目を合わせようとはしなかった。
「…とりあえず無事で良かったよ、ホント。ね!」
来は奏の顔を伺いながら言った。奏はとっさの振りに、頷くことしかできなかった。
神楽は、来の言葉が演技臭く感じたが、特に深掘りはしないことにし、来に質問した。
「…目的は何?知ってるわよ、あなたたちが家の前で偶々会ったってことは。佐藤君が来た目的は、一体何?」
「あら、バレてたのか。じゃあ単刀直入に言うね。…スマホ、見せてよ。」
来が神楽に手を伸ばしながら言った。すると、神楽はニヤリと笑い、首を横に振った。
「残念!スマホさ、あなたに助けられた時、勢いで線路に落ちちゃったみたいなのよ。だから手元になくて。」
奏は、スマホと聞いて、神楽が駅に向かう前に、スマホの画面を見て様子がおかしくなったことを思い出した。併せて、神楽を助けた後に、夏音が来と、その話をしていたことも記憶に残っていた。
「…ホントに?」
来は、詰め寄るように聞いた。
「嘘付いてどうするのよ。…奏か三嶽さんに聞いたんでしょ、スマホのこと。」
神楽が来の目を見て聞いたが、来は特に頷くなどのリアクションは取らなかった。続けて神楽は奏の顔を見ると、奏はビクンと肩を震わせ、首を勢いよく横に振った。
「…何が知りたいのよ。」
「君を死に追い込んだ奴を知りたい。…それが、由比さんの件にもつながるかもしれないだろ?」
奏は、来が環奈の件について何かを調べていることに驚き、初めて口を開いた。
「…あの…佐藤くんは環奈の事件、気になってるの?」
「あ、うん。ただの自殺じゃないんじゃないかって噂を聞いてさ。それでその後、久保寺さんまで…。」
神楽は、深い溜息をつくと、立ち上がってキッチンに向かいながら話し出した。
「…佐藤君は命の恩人だもの。恩人の質問には答えるわ。」
神楽は、二人に紅茶を入れようと茶葉を探しながら、更に続けた。
「私ね…脅されてたのよ。」
「…誰に?」
キッチンとダイニングの間のカウンターから、来が顔を覗かせた。神楽は紅茶のティーバッグをマグカップに入れて、電気ポットからお湯を注ぎながら答えた。
「…先生よ。」
「…先生って?」
ゴボボボボ。
来の質問に答えるように、電気ポットが、中身が空になった虚しい音を立てた。
【三嶽宅前】
夕刻。
夏音は、小島と別れた後も、中々家に戻る気が起きずに、街中をブラブラとして時間を潰していた。
今日、母親の茜に会ったらどんな顔をすれば正解なのかが分からなく悩んでいたが、行く場所に尽きた夏音は、無意識に自宅に向かっていたらしく、今に至る。勿論、未だに結論は出ていない。
家の中の様子を外から伺うと、どうやら茜は帰宅しているようで、キッチンらへんから、食材を切る音が響いていた。
「…行くか。」
夏音はそう呟くと、玄関をゆっくりと開けた。
すると、すぐに廊下の先、キッチンに直接繋がる扉が開いて、茜が顔を覗かせた。夏音は、思わずハッとした表情になった。
「おかえり、夏音。」
茜は夏音のリアクションを見て、彰から全てを聞いたに違いないと思ったが、その事には何も触れなかった。
「…た、ただいま。」
夏音は、目を反らしてそう言うと、自分の部屋がある二階へと階段を駆け上っていった。
夏音は、部屋に入るなりベッドに飛び込んだ。彰からあんな話を聞いたが、別に茜を嫌いになったわけでもなく、むしろ、彰と別れた後も、本当に良い母親として、自分を大切なは育ててくれている茜には感謝しており、大好きな気持ちも変化などしていなかった。
自分からは、絶対にいつも通りの接し方にしようと心掛けて玄関を開けたが、茜に不意討ちされて、変なリアクションを取ってしまった自分を、ただただ悔いていた。
コンコン。
部屋の扉がノックされたが、夏音は今は茜に会いたくないと思い、返事をしなかった。
コンコン。
二回目のノックにも、夏音はまだ反応はできなかった。すると、茜は夏音の部屋のドアに寄り掛かるように座り、扉の向こうの夏音に語り出した。
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