colors -イロカゲ -

雨木良

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第4章 父親と黒色

(12)

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【由比宅】

同時刻。

ピンポーン。

インターホンが鳴り、環奈の母親がリビングのインターホン画面を確認した。しかし、画面には誰も映っていなかった。

「…どなたですか?」

問い掛けに、返事は無かったが、ふと画面を見ると、絵画のような物が画面いっぱいに映し出されていた。環奈の母親は驚いたが、その絵画が環奈の物だと気が付いて、急いで玄関へと走り、扉を開けた。

目の前には、インターホンに環奈の絵画を近づけている朝倉が立っていた。

「こうでもしないと出てきてくれないと思って。」

朝倉は苦笑いしながら言った。

「…もう二度と会わないって言ったのに、あの子の死で再開するなんて…ホントに最悪。」

環奈の母親は、朝倉を睨み付けながら言った。

「一言だけ、沙希(さき)に謝りたくて。…環奈を守ってやれなくて済まなかった。」

朝倉は、深く頭を下げた。

「やめてよ、こんなとこで!誰かに見られたら困るじゃない。」

沙希は、朝倉の腕を掴み、玄関の中に入れた。

「これ以上は中に上げないから。」

沙希はそう言うと、玄関の段差に腰掛けた。

「…あの子は、知らなかったんでしょ?あなたの事。」

「え?…あぁ、多分気付いては無かったと思うよ。」

「原因は…イジメ?あなた、気付いてやれなかったの?」

沙希の言葉に、朝倉は下を向き黙り込んだ。沙希は立ったままの朝倉の表情を見上げ、フンッと鼻で笑った。

「座ったら?」

「…え?あぁ。」

朝倉は、ゆっくりと沙希の隣に腰掛けた。

「別にあなたを責めるわけじゃないけど、偶然とは言え、同じ学校になって、しかもあなたの部活にまで入部して。…こんなこと言いたくないけど、運命みたいなものを感じたわ。」

沙希は、頬杖を付きながら、朝倉の反対を向きながら淡々と話した。

「…俺だって、最初は驚いたさ。でも、沙希がてっきり別の高校に通わせるものだと思ってて。」

朝倉の言葉に、沙希はムッとして振り返った。

「あの子が自分で決めたことに、正当な理由なく反対できるわけないでしょ!?その理由なんて、話せるわけないし。話したところで正当かどうかは分からないし。」

「…そうだよな。すまん。…あ、そうだ。」

朝倉は、場を逃げるように玄関を開けて外に出ていき、直ぐにまた玄関を開けて戻ってきた。

手には複数枚の絵画を抱えていた。

朝倉は、絵画を一枚一枚廊下の床に並べた。沙希は立ち上がり、朝倉が並べた絵画を一枚ずつゆっくりと眺めた。

「…これ、環奈のよね?」

沙希の問い掛けに、朝倉は頷いた。

「沙希に渡しときたくて。学校で保管していた環奈の作品だ。どれも良い絵だろ?」

絵画を並べ終えた朝倉は、中腰で絵画を眺め、微笑みながら言った。

「…ホントね。」

沙希は、自然と流れてきた涙を拭った。

【三嶽宅】

同時刻。

夏音と茜は、夏音のベッドに並んで座り、彰の話をしていた。茜の口から彰の話を聞いたのは何年ぶりだろうか、夏音は新鮮な気持ちで話をしていた。

「でね、その時父さんがね…。」

ブーッ、ブーッ、ブーッ。 

茜の話を遮るように、床に落ちていた夏音のスマホが激しく震えた。夏音は、慌ててスマホを拾い上げ、画面を見ると愛弓からの着信だった。

「お姉ちゃんだ。」

「え、愛弓?久しぶりに声聞きたいから、後で替わって。」

茜は嬉しそうに言った。夏音は頷いて電話を取った。

「もしも…。」

「夏音!?大変なの!父さんが!父さんが…ぐすっ、どうしよう!」

電話の向こうの愛弓は混乱していた。夏音は、尋常じゃない愛弓の様子に顔を曇らせ、その顔を見た茜も、何か異変を感じ取った表情をした。

「ちょ、お姉ちゃん、落ち着いて!どしたの?父さんに何があったの?」

「え?父さん!?」

茜も徐々に状況を察し、夏音の持つスマホに耳を近づけた。それを見て夏音は、スピーカー設定に切り替え、自分と茜の間にスマホを置いた。

「と、父さんが…救急車で病院に運ばれたって…。危ないって…ぐすっ、今夜が峠なんだって…。」

夏音は愛弓の言葉が信じられなかった。午前中に会った彰は、確かに昔よりは痩せ干そっていた。でも、中身は夏音の知っている元気な頃の父のままだった。そして、父が別れの時に言った言葉通り、父からは、生きてみせるという気力を感じていた。

「…嘘…。」

夏音は、大きな滴を落とした。 

「愛弓!どこなの?病院は!」

言葉を失う夏音に代わり、茜が愛弓に聞いた。

「母さん?…横浜の中央病院だよ。…ごめん、一人じゃ耐えられない。誰か…来て…。」

「今から母さんたち行くから!愛弓だけが頑張る必要なんてない、私たちは離れても家族よ!今すぐ向かうから!」

茜はそう言うと、部屋を飛び出して行った。

「…ありがとう。待ってる。」

愛弓の言葉に、茜がいない今答えられるのは自分だけだと思い、夏音はスピーカーを切って、スマホを耳に当てた。

「…お姉ちゃん、も少しだけ頑張って。…父さんをお願いね。」

夏音は、そう言うと電話を切り、出掛ける支度をして、一階へと駆け下りた。

すると、玄関には車のキーを持った茜がウズウズしながら、夏音を待っていた。

「行くよ、夏音。」

夏音は、ウズウズする茜を見て、“色んな意味”で決意をして頷いた。
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