colors -イロカゲ -

雨木良

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最終章 先生と透明

(11)

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【小田原駅新幹線口】

同時刻。

愛弓が息を切らしながら到着し、辺りを見回して森末と夏音の姿を探した。

すると、駅の建物の外の喫煙所前で、話をしている夏音と森末の姿を見つけた。遠目ではあるが、夏音は少し脅えてるようにも見え、愛弓は急いで二人の元へ駆け寄った。

「かのーん!」

愛弓の声に夏音が反応し、振り返った。

「ちっ、もう来たか。」

森末の機嫌が更に悪くなった。愛弓は、二人のところに到着すりなり、夏音の前を素通りし、森末に掴みかかった。

「あんた!話が違うじゃない!この子には直接接触しないって!!」

夏音も見たことがない愛弓の姿に驚いた。

「ちょ、ちょっと待てよ!」

森末は、愛弓の腕を掴み、引き離した。

「事故だ!撮影してるのがバレたんだ。だから、ちゃんと説明して了承の上、正式に撮らせてもらおうとしたんだよ!あんたの記事に使う写真だろ!」

森末の言葉に、夏音は驚ろき、愛弓の顔を見た。

「…お姉ちゃん、記事って何?」

愛弓は、不安そうな表情の夏音から目を逸らした。

「ちゃんと説明してやれよ!」

森末の言葉に、愛弓は夏音の方を向き、頭を下げた。

「夏音の能力のこと、記事にしたかったの。私の最初の仕事にしたかったの。あなたの能力は本当に素晴らしい。もっと皆に知って欲しかったの。ごめんなさい。」

愛弓は頭を下げたまま言った。続けて、森末が、愛弓を指差しながら話し始めた。

「俺は、こいつと記者の繋がりの飲みで知り合って、小田原に住んでることを言ったら、写真の協力をお願いされただけだ。こいつの話だと、能力を使う時、君の目の色が変わるって話で、その写真を狙ってたんだ。その写真さえ撮れば、俺の仕事は終了。報酬待ちだったってわけ。」

夏音は、森末を払いのけ、愛弓に頭を上げるように促した。愛弓は、ゆっくりと頭を挙げて夏音を見つめた。

「…お姉ちゃんが私の能力のこと知っていたの知らなかったし、まさかお姉ちゃんが私に内緒で、勝手に雑誌に記事を書こうとしてたんて…ショックだよ。」

「ち、違うよ!悪い話じゃなくて、私はあたの素晴らしい能力を…。」

「もういいよ!!!」

夏音は、愛弓の話を打ち切って、走って駅の中へと入っていった。ちょっとした騒ぎに、野次馬が愛弓と森末の周りに集まりだしていた。

「…全く、今日二回目だぜ。…芸能人になった気分。」

森末は吐き捨てるように言った。

夏音には帰る場所がなかった。朝倉との関係を、何より彰の本当の子ではないことを隠していた茜のことを、もう信じることはできないし、昨夜また一緒に暮らせる喜びを話した愛弓も自分を裏切る行動を取っていた。

「…家には帰りたくない。帰れないよ。」

夏音は、駅のトイレの個室の中で泣きながら呟いた。夏音は、誰かにすがりたい気持ちで、奏に電話を掛けた。

プルルルルル。プルルルルル。プルルルルルル。

「…お願い、出て。」

プルルルルル。…ガチャ。

「ただいま電話に出ることが…」

留守番電話に切り替わり、夏音は電話を切った。

夏音は、続けて小島にも電話を掛けた。

プルルルルル。プルルルルル。プルルルルルル。

「…先輩、お願い出て。私…もう。」

プルルルルル。プルルルルル。…ガチャ。

「ただいま電話に出ることが…」

夏音は、電話を切って、そのままスマホを床に落とした。

二人はたまたま電話に出れなかっただけでも、今の夏音にとっては、自分だから電話に出てくれないという被害妄想を呼び起こす程、精神的に疲弊していた。 

「私…もうダメかな。」

夏音は、スマホを拾い、力なくフラフラとトイレから出ると、トイレからの動線に朝倉が立っていた。夏音は、朝倉の姿を見ると立ち竦んだ。朝倉は、夏音に気が付き、ゆっくりと近づき、微笑みながら言った。

「夏音…いや、三嶽さん。僕はもう君には関わらない。約束するよ。だから、死のうとか馬鹿なことは考えないでほしい。…だが、これだけは言わせてくれ。君の能力…イロカゲは神様からの授かり物だ、恥じることはない。そして、イロカゲは世の中のために使って欲しい。」

朝倉は話し終えた後も夏音をじっと見つめた。夏音は、さっと目を逸らし、首を横に振った。

「私はもうこんな能力…。」

ボォォォーンッ!!

夏音の言葉に被るように、巨大な爆発音が外から鳴り響いた。

「キャアアアアア!!」
「誰かぁぁ!」
「き、救急車!!救急車!!」

爆発音に続いて、外では様々な叫びや怒号、混乱する声が重なりあっていた。

「…何?」

夏音は、駅の入口から見える真っ黒な煙を見つめながら呟いた。

「…神が与えた試練か。これは…全く意地悪な神だ。」

朝倉はそう言うと、外に向かって歩き出した。
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