異世界でスポーツ科学の達人〜パフォーマンス向上と怪我予防の冒険者ギルド日記

あさあき

文字の大きさ
48 / 51
エリカの限界を見極めろ!

バックスクワットの基本(1)

しおりを挟む
「次は、バックスクワットの1RM推定だ!」

バックスクワットは、ウェイトを利用して行うスクワットとしては、もっとも基本的であるとも言える代表的なスクワットだ。ウェイトを使ったスクワットとについて語られるときに、単にスクワットと表現される場合、バックスクワットを示すことも多い。

「これからバックスクワットの1RM推定をするが、その前に、そもそもバックスクワットをどのようにするのか、そこからやろうか!」

バックスクワットは、ウェイトを用いて行われるスクワットのうち、おそらく最も行われているスクワットではあるが、実はエラーが発生しやすく難易度が決して低くない、そんなエキササイズだ。
エラーに気が付かず、そのまま重たいウェイトでバックスクワットを繰り返してしまい、怪我をしてしまった、そんな話をこれまで何度も聞いてきた。

そうならないためにも、バックスクワットそのものをどのように行うのかにこだわることも大事だとフジカルは考えている。

「バックスクワットに関して、色々な人が色々な意見を言うこともあるが、今回は2014年の論文[Myer2014]が推奨する方法を使うことにする」
「この2014年の論文は、バックスクワットのアセスメントを論じている」
「アセスメントというのは、評価や分析を行うという意味だ。要は、バックスクワットがちゃんとできているのかを見分けようってことだ」

「まずは、軽い木の棒を使って荷重しない状態でのバックスクワットをやりながらフォームを確認しようか!」

そう言って、フジカルは太さ3cmぐらいのひのきの棒をエリカに渡した。
うまく使えば、鈍器として、もしくは棒術で使えそうな、そんな棒だ。
しかし、武器としての攻撃力はハガネの剣よりは弱そうだ。

「こんな軽い棒を使ってバックスクワットをするんですか?」

エリカが不思議そうに質問した。

「そうだ。バックスクワットを行うときと同じように棒を持つことで、肩甲骨の位置が実際のバックスクワットに近い形になることが促進されるんだ。これは、ウェイトを抱えるのと同じ体勢でしゃがむ時の課題を探すためで、ウェイトによる負荷とは関係なく発生している課題をチェックするんだ。」

「よし。じゃあ、まずは、この棒を抱えた状態でバックスクワットをやってみよう!」

「まず、最初に棒の持ち方だが、棒を首の裏側の肩に乗せ、手のひらを前に向ける形で棒を握ろう。このときの両手の位置は、肩幅よりも少し広いぐらいの位置だ」
「棒が肩に触れる位置は、後部三角筋の部分だ。頸椎の7番目、C7の直下ぐらいだ」

と言いながら、フジカルはエリカの後部三角筋や、頸椎C7の少し下を触って位置を示した。

(C7とは何かの呪文だろうか?)
エリカは疑問に思ったが、あまり深く考えずに今回は流した。

エリカは指定された場所に棒が触れるように背中に抱えた。

「ここで、棒を背中を使って曲げてしまうぐらいのイメージを持ちがなら、実際には追ってしまうような力加減ではなく軽く引っ張ってみよう」
「それによって、脊柱起立筋などの背中を伸展させる筋群であったり、広背筋などを活性化させ、体幹部の剛性を高めて安定させ、怪我のリスクを下げることもできる」

エリカは、何度か背中に担いだ棒を曲げるイメージを持って引っ張っているようだ。
実際には棒が大きく曲がるわけではないので、外部から観測していると、なんとなく力を入れているようにしか見えないかも知れないが、この試行錯誤も大事な時間である。

「次は、足の位置、スタンスだ。」
「足はだいたい肩幅ぐらいが基本としては推奨されている。」

「なぜ肩幅ぐらいか、だが、足のスタンスが広すぎると、スクワットで身体を下げていくときに、膝蓋骨(しつがいこつ)や、脛骨と大腿骨の間を圧縮する力が肩幅のときと比べて15%増す可能性があるとする論文[Escamilla2001]がある」

「逆に、極端に狭い足幅では、膝の前部に対する剪断力(せんだんりょく)が大きくなってしまうという可能性が考えられるようだ[Myer2014]」

フジカルが何を言っているのか良くわからなかったエリカは質問した。

「剪断力ってなんですか?」

「剪断力というのは、逆方向にかかる2つの外力によって、特定の箇所がズレるように切断されるような力の働き方だ。刀で切るようなイメージで考えても良いかも知れない。」
「この剪断力という力の働き方は、運動という視点で身体を考えるときに大きなポイントになることが多いので、良い子のみんなは、覚えておこう!」

「良い子って、誰に向かって言ってるんですか???」

「まあ、いい。スクワットについて続けよう!」

「バックスクワットをするときの足の向きだが、つま先は正面を向けるか、外側に向けたとしても10度ぐらいの開きにしよう。極端につま先を外側に向けるバックスクワットは、基本的なバックスクワットとしては推奨されない。ただし、足の位置やつま先の向きによって身体に加わる刺激も変わってくるので、それを有効活用するという明確な目的があって行うのであれば、それを否定するものもない。目的に応じて足の位置や向きを戦略的に使うこともできるわけだ。」

「さて、じゃあ、今度は、実際にしゃがんでみようか!」


======
参考文献
======

[Myer2014]
Myer, G. D., Kushner, A. M., Brent, J. L., Schoenfeld, B. J., Hugentobler, J., Lloyd, R. S., ... & McGill, S. M. (2014). The back squat: A proposed assessment of functional deficits and technical factors that limit performance. Strength and conditioning journal, 36(6), 4.
https://doi.org/10.1519/SSC.0000000000000103

[Escamilla2001]
Escamilla, R. F., Fleisig, G. S., Lowry, T. M., Barrentine, S. W., & Andrews, J. R. (2001). A three-dimensional biomechanical analysis of the squat during varying stance widths. Medicine and science in sports and exercise, 33(6), 984-998.
https://journals.lww.com/acsm-msse/fulltext/2001/06000/a_three_dimensional_biomechanical_analysis_of_the.19.aspx
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...