桜はもう枯れた。

ミックスサンド

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山下鷹花④

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屋敷の食堂で、
二人の女性が楽しそうにきゃっきゃと話していた。

「どうだい鷹華、今日のおやつのきなこ餅は!」

「ぷるぷるしててすっごくおいしいです!
七屋さん天才コックさんです!」

鷹華はコックの七屋がつくったきなこ餅を口に含ませ笑う。
甘い物が大好きな鷹華は、零れ落ちそうになるほっぺをあわてておさえた。

鷹華がここに来てから、実に、5年の月日がたっていた。

最初こそ、食事のお盆をおとしてしまったり、食材の買い出しで迷子になったり…と、迷惑をかける事も多かったが、今はこの仕事も慣れてきていた。
それは、割れたお皿を片付け謝る鷹華を「奥様から聞いてるから、大丈夫だよ。」と笑ってなだめてくれる、コックの七屋さんや、庭師の西郷さん、主人の夫婦、それに…。


「おい、お前らサボるな。」

「坊っちゃん!」

「坊っちゃんどうしたの~?鷹華ちゃんに会いにきたのかな?」

「違うっ!話し声が聞こえたからきただけだ!」


七屋さんがにやつきながらそう言うと、坊っちゃんは慌てて訂正した。
鷹華はその間で、急にうずくまって震えだした。

「えっ!!どした鷹華ちゃん!?」
「鷹華!大丈夫か?」

二人が喧嘩をやめて鷹華を見る。
 

「……ふ、ふはッ…すみませ、おかしくて…」

鷹華が腹を抑え、笑い混じりにそう言うと、二人もまた、笑った。


鷹華は、
それに坊っちゃんのお陰です、と胸中思った。
数年前、花壇の影で泣いていたあの時の自分には、想像もつかないほど穏やかな、幸せの日々だった。


けれど、鷹華は知らなかった。
大切で、このままであって欲しいと願う物こそが、最も失いやすいのだと言う事を。
この幸せは、指の隙間からこぼれおちる砂のように、ざらざらと消えゆく運命だったのだ。
そんな事は露知らず、食堂は3人の笑い声で満ちている。


 その日、1枚の赤紙がきた。












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