鳥籠姫は夢を見る

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第一章

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    「ゼノ、アンリ様が倒れる前後の事を夢で見たりしなかった?」

    「………いや。でもいきなりの事だったように見えた。」

    「どんな些細な事でもいいの!何か気になる事は無かった!?」

    「………すまない。」

    ゼノは申し訳なさそうに謝った。

    「ううん…。あなたのせいじゃないわ。でも何か思い出したら教えて?」




    私はゼノと別れたあと一人悶々としていた。

    事態が進んだと思ったらいきなり止まってしまった。現在の敵の様子を知る術がまるでない。
    十二年前に一体アンリ様の身に何が起こったのか知りたい。それさえわかればすべてが解決しそうなのに………。

    こうなったらもう………乗り込むしかないんじゃないかしら……。

    しかし相手は王子のために一国を滅ぼすような国だ。下手に乗り込んでも危険なだけ。

    知らない場所にもちょっと行ってパッと帰って来れるような便利な魔法は無いのかしらね……。

    転移の魔法はある。かなり高度な魔法だが。ただ問題は一度訪れた事のある場所でなければ使えないというところ。

    帰ってくる事は出来るのよね……。ただ、行く事は出来ないはず。

    行った事があるのは未来の私だ。今の私じゃない。それに万が一使えたとしても、知ってる場所が人目を避けられない所ばかりだ。鳥籠のようなあの部屋と、アンリ様の寝室と廊下。高度な魔法は詠唱にも時間がかかる。その間に兵士に見付かれば終わりだ。

    移動出来るか試してみてもいいけど……出た場所に誰かいたら困るしなぁ………そうだ!!
    夜よ!夜にアンリ様の部屋に試しに行ってみるのは!?夜なら彼も寝てるだろうからバレないんじゃない!?

    ………よし、やるわ。決行は今夜。思い立ったが吉日だ!!



    そして深夜、私はとてもやる気になっていた。
    本気の時にしか着ない白のローブ。これは守護の呪文が刺繍された特別な時にしか着ない物。
    ポケットには万が一の非常食、飴ちゃんも忍ばせている。これで完璧だ。

    頭の中で思い浮かべる。広い部屋。大きな天蓋付きのベッド。アンリ様の青銀の髪………。
    転移魔法の呪文を詠唱し始めると私の身体を光が包み始める。

    まさか………行けるの!?

    そう思った瞬間、私の身体は飛んだ。






    はっきりと憶えてる。
    壁一面の本棚。
    真っ白いシーツ。
    美しいレースの天蓋カーテン。
    ここは私が毎日通ったアンリ様の部屋。

    本当に来れたんだ………って待って!来れたはいいけどこれからどうしよう!?
    城の中をうろつく訳にもいかないし…
    そうだ!その前にアンリ様ちゃんと生きてるのかしら!?ゼノの話だと命を繋いでくれたお母様はもう………。

    私は足音を消すようにそろりそろりとベッドへと近付く。

    いた…………。

    そこには苦しそうな息遣いで横になるアンリ様が。

    寝てるのかしら………?

    確かめようと更にベッドへ近付くとアンリ様のお顔が見え、その目は閉じられていた。

    良かった……寝てる……。
    それにしても苦しそうだわ……。

    額には熱でもあるのだろうかうっすら汗をかいている。私は非常食の飴ちゃんと共に入れておいたハンカチでそっと汗を拭ってあげた。

    やっぱり同じだ………。
    アンリ様の命の器には穴が開いている。
    お母様が亡くなられてから魔力を貰ってないのかしら……アンリ様、とても弱ってる。

    私はその手を包み、アンリ様の身体に魔力を流し込んでみた。やはり熱があるようだ。とても熱い。

    駄目だわ……これじゃ時間がかかりすぎる。

    身体の接触で一気に流し込むと、身体が受けるダメージが大きい。ただでさえ弱ったアンリ様の身体はきっと耐えられない。

    仕方ない……それにもう何度も何度もしてる事だしね……未来の私がだけど。

    アンリ様の頬を両手で包み、私は少し唇を開いてアンリ様の唇に重ねる。

    あぁ……この血の気が引く感じ……久し振りだ。
    私の魔力を受け取って、アンリ様の身体からは熱が引いて行く。

    力を与え終えて唇を離すと久し振りの貧血に身体がついていかない。目の前がチカチカして焦点が合わない。

    まずい……気を失ってる場合じゃないのに……。


    「…大丈夫………?」



    あの時と同じ言葉。
    あの時と同じ私の背を優しくさする大きな手。



    「………アンリ様………」






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