10 / 59
第一章
9
しおりを挟むやっぱり………青銀の髪。間違いない。
ゼノが夢で見た少年はアンリ様だ。
でもわからない事が多すぎる。アンリ様のお母様の力。神官服を身に纏った集団。燃えるような赤い髪の聖女。
燃えるような赤い髪の聖女………?
聖女かどうかは知らないが、燃えるような赤い髪の女性なら知ってる。私を殺すよう命じたあの女性がそうだった。
「ゼノ。私はあなたの事を信じるわ。だからあなたも信じて欲しい。このままでは悲劇は必ず再び起きる。あなたの夢がその証拠よ。私の夢が一体何のためにあるのかはわからない。でもお願い!どうか協力して!!」
ゼノはしばらく考え込んでいたが、意を決したように顔を上げ“わかった”と言ってくれた。
緋色の玉についての質問書は毎日のように各国から届いていたが、肝心のローゼンガルドからは未だ届いていない。
しかしゼノのやらかした事は必ずローゼンガルドにいる現在のアンリ様に伝わったはずだ。
とにかく私達は敵について知らなすぎる。私とゼノはローゼンガルドという国について知るために王宮書庫室へと出向いた。
「ローゼンガルドについて知りたい?」
書庫の管理を任されている年配の男性は私達の質問に首を捻った。
「そうなの。ちょっと色々と見聞を広めようと思って……えへへ。」
「そうですか……。ローゼンガルドについての資料はこちらの棚になります。ですが………」
男性は何やら口ごもる。
「だけど何?何かあるの?」
「いえ…。最近の資料についてはあまりないのです。ローゼンガルドはここ数年とても閉鎖的な国となってしまっていて……。」
「理由は?知ってる範囲で良いから教えてくれる?」
「ローゼンガルドは極寒の地。春の陽射しですらその厚い雪を解かす事は難しいとされています。ですからローゼンガルドでは昔から火を象徴するものが尊ばれ、民の間では昔から火を操るサラマンドラが守護神として信仰されてきたそうです。しかしそのサラマンドラを祀る大神殿側と王家は対立しており、国内は大変乱れている………ここまでが十二年前の記述です。」
「十二年前!?そんなに前の資料しかないの!?」
「詳しいものについてはそこまでです。そしてローゼンガルドが他国との関わりを避けるようになったのも十二年前。なのでこれ以上の事は………。」
「わかったわ。じゃあその資料を見せて貰うわね。」
管理人の男性の言った通り、ローゼンガルドについての情報は十二年前で途絶えてしまっている。
「でも…この時点ではローゼンガルドは軍事力をさほど持たない国のようだわ。」
「……でもたった一日でグレンドールは滅ぼされたんだろう?この国だってまるで抵抗する力が無い訳じゃない。」
ゼノは納得の行かない顔だ。
「俺のように攻撃魔法に長けてる奴だって多くいるんだ。たった一日でなんてあり得ない。」
「確かにね………。私ほどじゃなくても回復魔法の使い手だってたくさんいるのに…おかしいわよね。」
「そもそも何で十二年前なの………?」
十二年前に一体何があったと言うのか。
十二年前………。
「私をアンリ様の妻にとローゼンガルドから書状が届いたのが十四の時。今から一年後よね……確か第一王子のアンリ様は二十歳だった…。ねぇゼノ……あなた確か言ったわよね。アンリ様は七歳の時に倒れたって…。」
「あぁ。確かに七歳の時だった。」
「それだわ!ちょうど今から十二年前じゃない!」
39
あなたにおすすめの小説
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる