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第一章
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しおりを挟む「ひっ!!姫様!?」
「「ぶにゃーーーーーーー!!!」」
アンリ様と共に空中からベッドの上へとダイブした私達にレニーは比喩でなく腰を抜かし、おデブちゃんのくせに気の弱い二匹は全身の毛を逆立てて臨戦態勢をとった。
「い、いたた…アンリ様大丈夫ですか!?」
綺麗に撫で付けた髪を少し乱れさせ、アンリ様は………笑った。
「あはははは!!」
寝起きボサ髪の私と腰抜けレニーとデブ猫二匹は美青年の突然の笑顔に呆気に取られた。
そしてなんと猫二匹はじりじりとアンリ様ににじり寄り、何やらフンフンと鼻息荒くアンリ様の匂いを嗅いだ。そしてピカーンと閃いたかのようにアンリ様に飛び付く。
「ぶにゃぶにゃぶにゃ!!」
「ぶにゃぶにゃぶにゃぶにゃ!!」
発情ですか!?
「何何何?あはは、くすぐったいよ!」
興奮した二匹はアンリ様を押し倒し、その首筋に額をグリグリと押し当てている。
いやこれはこれで眼福かも………って違う!
ふとレニーを振り返ると、彼女もまた美しいアンリ様が笑顔で猫と戯れる姿に目をキラキラ潤ませて、プルプルと身悶えている。
いかん!!このままではいかん!!
「こらっ!アンリ様から離れなさい!」
二匹を引き剥がそうと奮闘するも奴らは激しい猫キックで応酬する。
「痛い痛い痛ーーーーーい!!!」
行き場のないお前達を拾ってあげた心優しい私に対するこの仕打ち!許せぬ!
「こらこら、止めてあげて?この人は私の大切な人なんだ。」
アンリ様の言葉に二匹の蹴りが止まる。
「ぶにゃ?」
「ぶにゃーにゃ?」
二匹は私を市中にいる不良のように睨め上げる。【こいつが大切な人?本当かよ?】と言う心の声が聞こえた気がする。いや聞こえた。絶対に。
「君たちが私の上掛けを気に入ってくれた猫ちゃんだね?私の匂いを憶えていてくれたの?とても賢いんだね。」
「ぶにゃー♡」
「ぶにゃにゃー♡」
二匹はちょこんとお座りしてアンリ様に顎を撫でられている。
「とても可愛い子たちだねエルフィリア。」
「本当ですか…?」
アンリ様の笑顔は嘘をついていない。せっかく着替えたお洋服に二匹の毛がたくさんついちゃっても気にしていない様子だ。
「レニー立てる?アンリ様のお洋服に付いちゃった毛を取るから手伝って?」
「姫様その方は……?」
一体何て説明すればいいんだろう。事情のわからないレニーにいきなりローゼンガルドの王子様を連れて来たなんて言っても混乱するだけだろうし。うーん……。
「詳しくはまだ説明出来ないの。ごめんねレニー。でもこの方は……私のとても大切な方なの。」
「えっ!?」
私の言葉にレニーは目を丸くして驚く 。
何か変な事言ったかしら?心配になってアンリ様を見ると何故かアンリ様の顔は赤く、そして少し恥ずかしそうに微笑んでいた。
城内は私がいなくなって大騒ぎになっているんじゃないかレニーに聞くと、どうやらそうでもないらしい。
アンリ様の所へ飛ぶ時はいつも万が一を考えて、あたかも人が寝ているかのようにクッションで人型を作り毛布を掛けていた。朝私を起こしに来たレニーがそれを見付けお父様に報告すると、お父様は私の仕業と正確に見抜き『あいつめ…一体どこに行きおった……』と怒りながらも少し様子を見ようと言ったそうなのだ。
「でもとても心配されてますから…戻られた事を早くお伝えに行かれた方がよろしいかと思います。」
「わかったわ。ありがとうレニー。」
アンリ様についた毛も綺麗に取れた。
寂しがってぶにぶに泣く二匹を宥め、私とアンリ様は部屋を後にした。
まさかこんなところをアンリ様と歩く事になるなんて思いもしなかった。
アンリ様をチラリと横目で見ると、優しい笑みを返してくれる。
……さすが王族と言うべきなのかしら。こんな時でも全然緊張してないわ。
堂々と歩く彼からは気品が溢れ、すれ違う衛兵達も彼を見て自然と背筋を伸ばした。
「あそこが父の部屋です。」
父の部屋が見えてくると途端に緊張してしまう。どうしよう…この状況をなんて説明しよう。怒っているだろうなぁ…。そんな事を考えていたら私の手をアンリ様が優しく握った。
「大丈夫。何も心配いらない。私がいる。」
「………はい。」
アンリ様の声に安心した私は、そっとその手を握り返した。
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