鳥籠姫は夢を見る

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第一章

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    「何度も往復させてしまって…疲れてない?エルフィリア。」

    「魔法を使う事は全然大丈夫。…それより今日は別の事で疲れちゃった…。」

    彼女は少しだけ疲れた顔でふふっと笑う。きっと突然降って湧いた父王との謁見と、城の者達の大騒ぎでだろう。一緒にいたかったという私のわがままのために本当に申し訳ないことをしてしまった。
    
    「ごめんね…。夜は無理しなくても大丈夫だよ?私ならさっき元気を貰ったから…。」

    本当は夜も来て欲しい。
    そんな気持ちが無意識に表情に現れていたのだろうか。

    「ふふ。アンリ様は優しいのね。でもお顔は何だか心配そうだわ。」

    「……うん……。」

    心配だよ。この身体の事じゃなく、君の事が。君はいつもいつも他人の事ばかり考えて、自分の事を全然大切にしないから。

    「じゃあ本当の事を言うね。……本当は今夜も会いに来て欲しい。」

    「うん。じゃあベッドに落ちないように頑張る。」

    「そのつもりでいるから落ちても大丈夫だよ?猫ちゃん達も淋しがっていたら連れておいで。」

    ちょっと太めだったけど、何だか妙に可愛い子達だった。懐いてくれたから余計そう思うのだろうか。

    「駄目よ!そんな事したらあの子達絶対にアンリ様の所から帰らなくなっちゃうわ!」

    「それでもいいんだよ?お家が二つあるなんてあの子達も楽しいだろうし。」

    それに…そうしたら面倒見のいい君はあの子達の様子を見に、これからもずっと私の元へ来てくれるだろうから……。

    「もう…アンリ様は優し過ぎだわ。」

    君にだけだ。本当の私は君が思うような優しい人間じゃないよ。

    「今夜はからは寝間着でおいで?どっちで寝てもいいように。もうお父上にも了解はとったし、エルフィリアもその方が楽でしょう?」

    「……ど、どっちで寝てもって!アンリ様駄目よ!今夜はちゃんと帰りますからね!…でも夜来る時に寝間着だと、帰ってから着替える必要がないからとっても楽よね……でも恥ずかしいかも……。」

    「私なんて初めて会った時からいつも寝間着だよ?」

    「うふふっ。そうね。そう考えると恥ずかしくないかも!じゃあ今夜は寝間着で来ようかな。でもちゃんと帰りますからね?アンリ様。」

    またすぐ会えるのに。あとほんの数時間の事なのに帰したくない。でも彼女の両手を握り、その短い旅路が無事であるよう祈る。

    「行ってらっしゃい。」

    「はい。行ってきますアンリ様。」

    そして彼女の身体は光に包まれた。


    彼女のいない部屋はとても空虚だ。
    今まではそれが日常だったのに。
    エルフィリアの笑顔はまるで春の陽射し。彼女がいるだけで部屋に花が咲くようだ。


    「お帰りなさいませ殿下。」

    「キランか。今戻った。変わったことは?」

    「…いつも通り、神殿より殿下に謁見したいと再三の申し出がありました。それと殿下の具合はどうか?と探るような物言いも。」

    「そうか……。」

    脱いだ服を渡すとキランの眉間に皺が寄る。

    「ああ、猫の毛だ。すまないが取っておいてくれるか?」

    「猫?」

    「ああ。もしかしたらここで預かる事もあるかもしれないからそのつもりでいてくれるか。可愛い良い子達だ。ちょっと大きいけど。」

    「はあ……。」

    キランは信頼の置ける数少ない侍従だ。
    余計な事も一切聞かない。あの二匹が来ても黙ってしっかり面倒を見てくれるだろう。

    「叔父上…陛下とギャレットの様子は?」

    「ギデオン陛下については何も…ですがギャレット様については良くない噂が入ってきております。」

    「良くない噂?」

    「……はい。城内の見目麗しい侍女を召し上げては無理矢理…飽きたら裸のまま兵士の前に捨てるそうです…その後は……。」

    想像するまでもない。身体が持たずに死ぬか正気を失って死ぬかのどちらかだろう。

    「城内の侍女は貴族出身が多い……反発は必至だな。」

    話して済む問題ではない。血が流れる事になるだろう。

    「神殿がギャレットを野放しにする理由は何だろうね。ローゼンガルドを掌握したいのであれば、民の反感を買うのは得策ではないだろうに…。」

    まさか恐怖で支配しようとでも言うつもりか。しかしそれならばギャレットを次期国王にすれば良いだけの話。私など用無しだろうに。なぜファルサはそこまで私にこだわるのか。

    「キラン。ギャレットに暴行を受けた侍女達の生家を調べておいてくれ。場合によってはこちらの味方についてくれるかもしれない。」

    「かしこまりました。」

    キランは部屋を後にした。

    



    

    
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