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17 三か月前の真実⑥ エミル
しおりを挟む「ここがヤノシュ伯爵邸なのは間違いないな?」
頷いた男の顎が腕に当たる。
「お前たちは私を見張るように命令された。違うか?」
男から反応がない。
その答えが自分に不利益をもたらすかもしれないことを恐れているのだろう。
私は再び腕に力を加えた。
「ぅっ……ぅぅ……」
「苦しいな。可哀想だとは思うんだが、正直に答えてくれなければこのまま殺すしかなくなってしまう」
男は私の腕を外そうと必死にもがくが、敵わないと気付いたのか“答えます”とでも言うように腕を叩いた。
少しだけ緩めてやると、男は浅い呼吸を何度か繰り返した。
「その通りです。ヤノシュ伯爵からあなたを見張るように言われました」
「私の他に生き残った者は?」
「正確な数はわかりませんが、別室で治療を受けているようです」
どうせ、“治療”という名の監禁だ。
万が一に備え、私を脅すための人質にするつもりだろう。
「それにしてもかなりの大事故だったと思うんだが、私を含めて数名生き残るなんて……随分と生存者が多いな」
「そ、それは、すぐに救助したから……!」
「どうしてお前たちは、そんなにすぐ事故現場に駆け付けることができたんだ?あの街道を通るのは、せいぜい旅人くらいのものだ。誰かが偶然見つけなければ、ヤノシュ伯爵に連絡が入るまで、事故後早くても数時間はかかるだろうに」
──まさか、一部始終を見ていたのか?それだけじゃない、まさかあの事故も……
耳元で囁いてやると、男の全身が怖気だつのがわかった。
(やっぱりな)
あの街道で落石なんて、嵐でもない快晴の日におかしいと思った。
国境の砦へ向かう重要な道だ。
整備だって定期的に行われている。
間違いない。これは仕組まれた事故だ。
しかしあのヤノシュ伯爵が、たった一人でこんな大それたことを計画するだろうか。
この男たちだって訓練された兵士でもなんでもない、元はおそらく農民だろう。
(何もかもお粗末すぎてものが言えないな……)
だがそのお陰で思ったより楽に脱出できそうだ。
「私が誰だか知ってるか?」
「こ、皇族の方とだけは……」
「あらかじめ聞いていた?」
「いいえ!俺たち急に呼び出されたんです。それで岩を落とせと脅されて……逆らえなかったんです」
一度口を割ると、そこからは早かった。
一部始終を聞いた私は、男が腰に付けた剣を抜き取り、腕から解放した。
「どうする?私を助け、家族ごと救ってもらうか。それとも一生あのヤノシュ伯爵に脅されながら奴隷のように生きるか。後者を選ぶなら、悪いが今すぐに殺す」
「俺たちを救えるって?そんな、証拠はあるんですか」
「そんなものはない。お前たちが出来るのは私を信じることだけだ」
「あ、あなたいったい誰なんだ」
「妖精だ。早くしろ、私は気が短い」
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