侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第一章

4 逃れられない

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    外は雨が降りだしていた。
    雨の道はぬかるむ。愛しいあの人は大丈夫だろうか。私は馬車に揺られながらハニエル様の事ばかり考えていた。 
    そうしているうちに見慣れた景色が見えてくる。公爵邸を出る時に、執事の男性からどうしても守るように言われた事があった。

    【万が一ルーベル殿下の手の者と思しき輩がいた場合は必ずお引き返し下さい!!】

    皆知っていたのだろう。ボロボロの私をハニエル様が連れて帰ってきた時から。それなのにあんなに優しく日々を過ごさせてくれた。こんな別れ方をしてしまったけど、感謝してもしきれない。

    侯爵邸を囲む塀が見える。門の付近を見ると…心配していた怪しい輩もいない。
    御者も執事からしっかり言われていたのだろう。周囲に誰もいない事を確認すると私を馬車から降ろし、傘をさして屋敷の入り口まで送ってくれた。

    「ありがとうございました。皆さんによろしくお伝え下さい。」

    御者は何か言いたげな顔をしていたが、残念そうな顔で来た道を戻って行った。
    
    「アマリール!!」

    「お父様…!」

    私が屋敷に入るなり父が奥から駆けてくる。 

    「お前…大丈夫だったのか!?ルーベル殿下からしばらく屋敷には帰らないと知らせが来たかと思ったら今度はアルザス公爵邸から“うちで預かる”と…一体何があったのだ!?」

    詳細までは知らされていなかったのだろうが父も最悪の事態は覚悟していたのだろう。私はルーベル殿下にされた事とハニエル様に保護して貰っていた事を包み隠さず話していった。
    父は途中辛そうに顔を歪め、無言で私を抱き締めた。悲しい思いをさせてしまった。申し訳ないと思う気持ちと、父の大きな身体に包まれて子供の頃に戻ったような安心を感じ、最後は二人で声を殺しながら泣いた。


    「そうか…マデラン侯爵のご令嬢が…。しかしその婚約もマデラン侯爵がかなり無理に推し進めたと聞いている。ハニエル様が自らお前を望んだと言うのならお前に何も罪は無い。」

    ぽつぽつと語る中に私を想う父の愛情が伺い知れて涙が出る。

    「…しかし、ハニエル様は大丈夫だろうか…」

    「何…?お父様、ハニエル様がどうしたの!?」

    「今日ハニエル様はルーベル殿下に皇宮へ召喚されたと聞いた。」

    「ハニエル様が!?」

    そんな…!でもハニエル様は今後の事を話に行くと出て行った。てっきりお父上との話し合いなのかと思っていたのに。まさかその相手がルーベル殿下だなんて…!!
    駄目…駄目…!!もし私達を許すつもりならあの殿下がハニエル様を皇宮へ呼び出すはずなど無い。あの人は無駄な事を何より嫌う。
    ならハニエル様は今頃……!!

    「お父様!!今すぐ私を皇宮へ連れて行って下さい!!」

    「ど、どうしたんだアマリール!?今から皇宮だと?」

    「お願いです!このままじゃ…このままじゃハニエル様が殺されてしまう…!!」


    私は雨の中皇宮へ向けて馬車を走らせた。
    彼を死なせたくない。ただその一心で。   

    

     
    
    
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