侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
35 / 125
第一章

34 ゲイルの頭痛の種(前編)

しおりを挟む





 「お義兄様が帰ってくるの!?」

 急に皇宮から姿を消した義兄が帰ってくると聞かされたローザは目を輝かせた。

 「いつ?いつお義兄様は帰ってくるのゲイル?」

 「明日にはお戻りになると言う事です。」

 「明日!?大変だわ!!」

 すぐ支度をしなければ。身体中に磨きをかけて、疲れて帰ってくるだろうお義兄様を癒して差し上げなければ…!

 「ゲイル!私ちょっと自分の部屋に戻りたいのだけれどいいかしら?」

 きっとお義兄様は私を離しては下さらないだろうけど、ここは狭いし人の出入りも聞こえて落ち着かない。これじゃ満足なお手入れも出来ないわ。お風呂だって入りたいのに…。そうだ!首都で評判のハーブも急いで取り寄せなきゃ…!

 ルーベルは今度こそ自分を寝所に呼んでくれるはず。もしくはその前に正式に自分を妃に迎える発表をしてくれるだろう。ローザはそう信じて疑わなかった。
 しかしローザはこの後発せられるゲイルの言葉に驚愕する事になる。

 「お部屋にお戻りいただくのは構いません。しかし騎士を何名か付けさせていただきます。」

 「騎士?あぁ、護衛ね?もう!お義兄様ったら心配性なんだから。」

 言葉とは裏腹に照れたように赤く染まる頬。義兄はそんなにも自分を想っているのかとローザは喜びに浮かれた。しかし、

 「…護衛ではありません。見張りです。」

 「見張り…?」

 ローザは耳を疑った。しかしゲイルは事も無げに淡々と告げていった。

 「殿下からはあなた様がアマリール様を害する事のないようしっかり見張れと命令を受けています。」

 「アマリール?何言ってるのゲイル。アマリールは離宮の火事で死んだんでしょ?」

 「…どこからそんなデマを掴んだんです?あなたの情報網も大した事ありませんね。」

 「何ですって!?」

 (何て失礼な男なの…!!)
 この男も昔から私の事を馬鹿にしたような目で見ていた。下級貴族の娘と蔑むような目で…!お義兄様の側近でなければただではおかないのに。

 「明日、殿下はアマリール様と共に皇宮へ戻られます。お可哀想に…アマリール様は離宮で火事に遭われ心身共にお疲れでしてね。それで殿下の計らいで保養地に行かれていたのです。あそこは温泉が有名でしょう?今頃二人でゆっくりと湯に浸かって疲れを癒しているでしょうね。」 

 「…な…んですって……?」

 アマリールが生きている?
 そんなはずはない。だってルイザが確かに聞いたと…。
 ローザは鬼の形相で侍女のルイザを見るも、ルイザは青い顔で俯くばかり。

 「そうそうローザ様!実はアーセルのロウ公爵がもうすぐエレンディールへいらっしゃいますから、お部屋に戻られるのでしたら荷物の準備をお願いできますか?」

 「ロウ公爵が!?」

 顔合わせに来るとしても何故このタイミングなのだ。しかも荷物の準備とは一体どういう事なのか。ローザは混乱した。

 「顔合わせが終わりましたらローザ様にはロウ公爵と一緒にアーセルへ行っていただきます。」

 「何ですって!?」

 「すべてはアヴァロン陛下のご命令でございます。」

 「そんなのお義兄様が許す訳ないわ!!」

 そうよ。お義兄様はいつも私の事を心配してくれていた。こんな…こんな私の心を無視した命令なんて止めてくれるに決まってる…!!

 「やれやれ…本当はあまり言いたく無かったんですけどね。ローザ様、お気の毒ですがこれは殿下が直々に陛下に進言した事なんですよ。」

 お兄様が直々に…?そんな、そんなはずない!だって私を側に置いたのは妃に迎えるためで…あのドレスや宝石はその準備で…

 「ドレスや宝石はローザ様の嫁入り道具として揃えて下さったんです。まったく…目の飛び出るような金額でしたけどね。あぁ、そうそう。シェリダン様の分はこちらでは負担できませんのご自分で支払って貰って下さいね。」

 ゲイルは金額とその内訳の書いた紙をローザに差し出した。

 「嘘よ!そんなの信じない!お義兄様に会わせて!会って直接聞くわ!!」

 ルーベルに直接聞けばもっと残酷な現実を知る事になるだろう。
 (…馬鹿な娘だ…。)
 ゲイルは心底うんざりしていた。こんな役目を押し付けてきたルーベルもだが、一番はこの母娘だ。
 ゲイルは代々エレンディールを支える宰相一家の息子である。いわゆる由緒正しきお坊ちゃまだ。
 悪いところは視力くらい。容姿端麗、外面良しなゲイル。幼少の頃からその才能は抜きん出ており、いずれ皇帝となるルーベルの元で辣腕を振るうだろうと期待されている。
 確かにルーベルは皇帝になるべくして生まれた男。それに関してはゲイルも異存は無い。主君と認める価値のある男だ。だがしかし一つだけルーベルに対し思っていた事がある。
 それは【女運がとてつもなく悪い】事だ。
 悪い。とにかく悪い。それはもうべらぼうに。
 目を閉じれば色鮮やかに甦る。ルーベルに群がる馬鹿者共を追い払い続けた日々。自分が実行したあんな撃退やこんな撃退が頭の中を駆け巡り過ぎて行く。
 そんなゲイルも呆れるほどに質が悪いのがこの母娘だった。


しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...