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第一章
35 ゲイルの頭痛の種(中編)
しおりを挟む妃の多さは歴代一。女癖の悪さも歴代一だが現皇帝は決して暗君ではない。それどころか賢帝と呼んでもいい。今のエレンディールはその歴史上最盛期と言っても過言ではない。近年の対外戦争は負け知らず。属州を増やし帝国領は最大となった。元老院との仲も良好。このまま行けばルーベルは最高の形で皇帝に即位する事となるだろう。
そんなアヴァロンの唯一にして最大の欠点が【女好き】だ。しかしそれは彼に世継ぎの男子が生まれなかった事が原因だった。
皇后マデリーンとの間に、今は隣国ローランへ嫁いだルーベルの姉クロエが産まれた時の事だった。
何としてでも娘を皇妃にしたいと願う腹黒い貴族達は、産まれたのが女子と知るやいなやすぐに横槍を入れてきた。
【皇后は女腹だ。すぐに皇妃を!】と。
また、第一子となる皇女を産んだ後なかなか子宝に恵まれなかった事も、周囲の心無い噂に傷付くマデリーンに更に追い打ちをかけた。
最初のうちこそ優しく寄り添ったアヴァロンだったが、男子が産まれぬ事に誰よりも焦っていたのは他ならぬアヴァロン自身だった。
あくまでやむなくと言った体で第一皇妃を迎えた。アヴァロンが肉欲に目覚めたのはそこからだ。
第一皇妃は初めてのお産の最中に腹の子と共に命を落とした。彼女は細身のマデリーンに比べ豊満で魅惑的な女性だった。その容貌と肉体に夢中になった若き日のアヴァロンは、彼女が亡き後もその面影を追い続けた。第一皇妃の座が今も空席なのはそのせいだ。
そしてアヴァロンの目に留まり第二皇妃となったトリシアは、その欲求を存分に満たす存在ではあったがしかし産んだのは女子二人。
自分には男の子種が無いのかもしれない。そう思い始めた頃マデリーンが懐妊した。どうせまた女子だろう。アヴァロンも周りもそう思っていた。しかし生まれたのは雄々しき獅子の如く金色の瞳をした黒髪の男子。アヴァロンに瓜二つのルーベルだった。
待望の男子の誕生にアヴァロンもマデリーンも涙を流し歓喜した。そして長らく隙間風の吹いていた二人の関係もこれを機に修復に向かったのだ。
(そこまでは良かったんですけどね…はぁ…)
ゲイルは心の中で大きな溜め息をつく。
子はかすがい。アヴァロンはルーベルを溺愛し、暇さえあればマデリーンの部屋に入り浸った。そんなアヴァロンの様子を見てマデリーンもこれまでの浮ついた彼の行いを許した。ルーベルの誕生は、アヴァロンとマデリーンに深い絆を結ばせたのだ。
しかしルーベルが成長し、手を離れて行く年頃になったある日。気付かぬように隠していた心の隙間に再び風を吹かせるものが現れた。
それが第三皇妃シェリダン。ローザの母親だった。
美しく肉感的な身体。寡婦という身の上もまた男の庇護欲を誘ったのだろう。
アヴァロンは再び肉欲に負けたのだ。
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