侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
41 / 125
第一章

40 戻る

しおりを挟む





 「なぜ!?なぜこんな女を庇うのお義兄様!?」

 「まずリルを“こんな女”と呼ぶのをやめろ!前も言っただろう!」

 「リル!?リルって何!?この女の事!?」

 ローザはルーベルの言う事も聞かずに捲し立てる。しかし今は構っている暇などない。ルーベルの傷口は応急処置しか施されていないのだ。

 「ゲイル!!ローザは元通り部屋に閉じ込めておけ!!ロウ公爵が到着するまで決して出すな!!」

 「お義兄様!!!」

 ルーベルに追い縋ろうとするローザを何とか止めながらゲイルはアドラーに向かって叫んだ。

 「エクセル!見てないで手を貸してくれ!!」

 貧弱な幼馴染みを呆れ顔で見ながらアドラーは部下にローザを部屋まで連れて行くよう命じた。

 「丁重にな~。」

 「離しなさいよ!!お義兄様!待って!!」

 尚も暴れるローザだったが騎士団の屈強な男二人に両側から押さえられ、その姿は遠くなって行った。

 「お前…そんな腕力じゃ女性だって抱けないぞ?」

 嫌味と言うより本気で心配してる風なアドラーにゲイルは肩で息をしながら悪態をつく。

 「お前ほどアクロバティックな事しないからいいんだよ!!…あれ?殿下は?」

 「もう行ったよ。アマリール嬢しか見てなかったからお前の奮闘は見ていない。」

 筋肉体力とは無縁の自分がこんなに頑張ったのに…ゲイルはがっくりと肩を落とす。

「それにしても…愛する女性の頬にあんな平手打ち食らわされたんだ。これからあの皇女様、かなり厳しい罰が待ってるんじゃない?」

 「そうだろうな…」

 おそらくだがアーセルへ嫁いだ後、ルーベルはもう二度とローザがこの地に足を踏み入れる事を許さないだろう。

 「まあ、無事に済めばいいけどね。」

 「…そこはお前が身体を張って無事に済ますんだよエクセル…」



 ***


 傷口の縫合も終わり、ルーベルは薬が効いたのか眠ってしまった。

 「アマリール様、まだ痛みますか?」 

 ローザ様に打たれた頬は未だジンジンと熱を持って傷んだ。

 「あなたも扇で打たれた時は痛かったでしょう?気持ちがよくわかったわ。」 

 「まあ!アマリール様ったら。」

 「うふふ。こんな時だけどタミヤ……また会えてとっても嬉しいわ。」

 「……はい……!!」

 タミヤの声は震えていた。
 まさかここへ戻って来れるなんて思ってもいなかった。そしてタミヤが自分を待っていてくれた事も……驚いたけど本当に嬉しかった。

 タミヤは心配そうに私も横になる事を促すが、襲撃の恐怖から未だ混乱する頭は私を眠らせてくれそうになかった。

 「ちゃんと身体は休めるようにするわ。ありがとうタミヤ。」

 タミヤが部屋を出て行った後、アマリールはルーベルの額に汗が出ているのに気付いた。

 「熱が出始めたのね…」

 優しく拭ってやると僅かに表情が緩んだ気がする。
 (……また…守ってくれた……。)
 頬を打たれた私を見て烈火のごとく怒りを爆発させたルーベルのあの時の顔が目に浮かぶ。
 (…ルーの言う通り…本当にローザ様とは何もなかったのね……。)
 ずっとずっと、ローザの片想いだったのだ。
 何も心配する事などない。これからは彼の婚約者として堂々としていればいい。

 「……ルー……ありがとう……。」

 待っていてくれて……許してくれて……。

 「もう絶対にあなたの側を離れないわ……。」

 アマリールは眠るルーベルに向かって誓ったのだった。 



 ***


 襲撃事件から十日ほど過ぎたある日、ロウ公爵が首都に到着したと連絡が入った。

 「ようやくですね、殿下。」
 
 やっとローザのお守りから解放されるからかゲイルは安堵の表情だ。

 「ああ……アドラーは?」

 「あの戦闘狂ならもう出勤してますよ。今頃皇宮内の美形侍女でもナンパ中でしょう。あれだけ食い散らかしても恨まれないのは天性のたらし力の為せる技ですね。」

 聞いてはいけない話がたくさん飛び交っている。ルーよりも年上の二人は家柄が同格なだけでなく幼馴染みだそうで、気安く話していたのはそういう事かと納得した。

 「アマリール様も後でご挨拶だけお願い出来ますか?」

 「私も……ですか?」

 私なんかが顔合わせの場所に行こうものならローザ様の頭にまた血が上る事間違い無しだろうに。

 「ええ、殿下と一緒にお願いします。」

 「ルーと!?まだ完全に傷も塞がってないのに!?」

 無理をしたらまた傷口が開いてしまうからと、さっきも医師から念を押されたばかりだ。しかしゲイルは額に皺を寄せて言う。

 「……国内のゴタゴタを……しかも皇太子が襲われて斬られたなんて話はアーセルに持ち帰ってもらっちゃ困るんですよ。」

 確かに……そんな事知られれば弱みにつけ込まれるような事になってしまうかも……。

 「…でもルー……」

 「大丈夫だ。辛ければお前に寄り掛かるから離れるなよ。」

 「うん……。」

 こうして私達はロウ公爵の到着を待つ事となったのだ。


しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...