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第一章
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しおりを挟む「なぜ!?なぜこんな女を庇うのお義兄様!?」
「まずリルを“こんな女”と呼ぶのをやめろ!前も言っただろう!」
「リル!?リルって何!?この女の事!?」
ローザはルーベルの言う事も聞かずに捲し立てる。しかし今は構っている暇などない。ルーベルの傷口は応急処置しか施されていないのだ。
「ゲイル!!ローザは元通り部屋に閉じ込めておけ!!ロウ公爵が到着するまで決して出すな!!」
「お義兄様!!!」
ルーベルに追い縋ろうとするローザを何とか止めながらゲイルはアドラーに向かって叫んだ。
「エクセル!見てないで手を貸してくれ!!」
貧弱な幼馴染みを呆れ顔で見ながらアドラーは部下にローザを部屋まで連れて行くよう命じた。
「丁重にな~。」
「離しなさいよ!!お義兄様!待って!!」
尚も暴れるローザだったが騎士団の屈強な男二人に両側から押さえられ、その姿は遠くなって行った。
「お前…そんな腕力じゃ女性だって抱けないぞ?」
嫌味と言うより本気で心配してる風なアドラーにゲイルは肩で息をしながら悪態をつく。
「お前ほどアクロバティックな事しないからいいんだよ!!…あれ?殿下は?」
「もう行ったよ。アマリール嬢しか見てなかったからお前の奮闘は見ていない。」
筋肉体力とは無縁の自分がこんなに頑張ったのに…ゲイルはがっくりと肩を落とす。
「それにしても…愛する女性の頬にあんな平手打ち食らわされたんだ。これからあの皇女様、かなり厳しい罰が待ってるんじゃない?」
「そうだろうな…」
おそらくだがアーセルへ嫁いだ後、ルーベルはもう二度とローザがこの地に足を踏み入れる事を許さないだろう。
「まあ、無事に済めばいいけどね。」
「…そこはお前が身体を張って無事に済ますんだよエクセル…」
***
傷口の縫合も終わり、ルーベルは薬が効いたのか眠ってしまった。
「アマリール様、まだ痛みますか?」
ローザ様に打たれた頬は未だジンジンと熱を持って傷んだ。
「あなたも扇で打たれた時は痛かったでしょう?気持ちがよくわかったわ。」
「まあ!アマリール様ったら。」
「うふふ。こんな時だけどタミヤ……また会えてとっても嬉しいわ。」
「……はい……!!」
タミヤの声は震えていた。
まさかここへ戻って来れるなんて思ってもいなかった。そしてタミヤが自分を待っていてくれた事も……驚いたけど本当に嬉しかった。
タミヤは心配そうに私も横になる事を促すが、襲撃の恐怖から未だ混乱する頭は私を眠らせてくれそうになかった。
「ちゃんと身体は休めるようにするわ。ありがとうタミヤ。」
タミヤが部屋を出て行った後、アマリールはルーベルの額に汗が出ているのに気付いた。
「熱が出始めたのね…」
優しく拭ってやると僅かに表情が緩んだ気がする。
(……また…守ってくれた……。)
頬を打たれた私を見て烈火のごとく怒りを爆発させたルーベルのあの時の顔が目に浮かぶ。
(…ルーの言う通り…本当にローザ様とは何もなかったのね……。)
ずっとずっと、ローザの片想いだったのだ。
何も心配する事などない。これからは彼の婚約者として堂々としていればいい。
「……ルー……ありがとう……。」
待っていてくれて……許してくれて……。
「もう絶対にあなたの側を離れないわ……。」
アマリールは眠るルーベルに向かって誓ったのだった。
***
襲撃事件から十日ほど過ぎたある日、ロウ公爵が首都に到着したと連絡が入った。
「ようやくですね、殿下。」
やっとローザのお守りから解放されるからかゲイルは安堵の表情だ。
「ああ……アドラーは?」
「あの戦闘狂ならもう出勤してますよ。今頃皇宮内の美形侍女でもナンパ中でしょう。あれだけ食い散らかしても恨まれないのは天性のたらし力の為せる技ですね。」
聞いてはいけない話がたくさん飛び交っている。ルーよりも年上の二人は家柄が同格なだけでなく幼馴染みだそうで、気安く話していたのはそういう事かと納得した。
「アマリール様も後でご挨拶だけお願い出来ますか?」
「私も……ですか?」
私なんかが顔合わせの場所に行こうものならローザ様の頭にまた血が上る事間違い無しだろうに。
「ええ、殿下と一緒にお願いします。」
「ルーと!?まだ完全に傷も塞がってないのに!?」
無理をしたらまた傷口が開いてしまうからと、さっきも医師から念を押されたばかりだ。しかしゲイルは額に皺を寄せて言う。
「……国内のゴタゴタを……しかも皇太子が襲われて斬られたなんて話はアーセルに持ち帰ってもらっちゃ困るんですよ。」
確かに……そんな事知られれば弱みにつけ込まれるような事になってしまうかも……。
「…でもルー……」
「大丈夫だ。辛ければお前に寄り掛かるから離れるなよ。」
「うん……。」
こうして私達はロウ公爵の到着を待つ事となったのだ。
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