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第二章
11 殿下の記憶①
しおりを挟む『殿下!!殿下ーー!!どちらですか!?』
『……うるさいな……。』
呼ばれて素直に出て行く奴などいないだろうに馬鹿なのか?
さっきから俺を血眼になって探しているのは母上のところの侍従。
痺れを切らした母上が、“早く茶会に顔を出せ”と迎えに寄越したのだろう。
『……面倒くさい……。』
何で小うるさい女達と茶なんか飲まなきゃならないんだ。
妃を娶るなんてまだまだ先の話……しかもそれだって俺の意見なんて何一つ通りはしないのだろう。惚れた女よりも政治に役立つ女……本当に愛する者が出来たとしても……まあ家柄次第だろうが、きっと正妃になど出来ない……。
(……それなら俺なんて関係無い……勝手に決めればいいだろうに……。)
血を絶やさぬよう子を為すのが王族の務めなのはよくわかっているつもりだ。その時が来たら……義務だ。仕方無いから抱いてやるさ……。
けれどそこは親心なのだろう。例え政略結婚であろうと息子には精神の充足を図れるような相手と一緒になって欲しい……おそらくそう考えての事だと思う。
(でも余計なお世話だ……。)
ルーベルが庭園の茂みに隠れるようにして横になり、足を伸ばしたその時だった。
『きゃあっっ!!』
『うわっっ!!』
ドサッという音と共にフワフワしたものが自分の上に落ちてきた。
慌てて抱きとめると柔らかなものが顔にかかる。
(……金の……髪……?)
サラサラと流れるそれはほのかに甘い香りがする。
『……ん……イタタ……』
耳元でした声はまだ幼い。落ちてきた時に咄嗟に俺に抱き付いたのだろう。ぷにぷにとした頬が自分のそれとピッタリくっついていた。
『……おい、早くどけよ……!』
さっき伸ばした足に躓いたのだろう。足先が蹴られたようにジンジン痛む。
『え!?人!?ご、ごめんなさいっっ!!』
そう言って顔を上げた瞬間、俺の上にいたその子は大きく目と口を開け、時を止めたように動かなくなった。
『おい……大丈夫か……?』
しばらく反応が無いので声を掛けると
『綺麗!!』
『!?』
そう叫び、鼻先が触れそうな距離まで顔を近付けてきた。
『うわぁ……!!何て綺麗なの!!とれたての蜂蜜みたい……綺麗……』
蜂蜜?この金眼が?冗談だろう……この黒髪と金眼のせいで俺の事を悪魔だと言う奴だっているのに……でもそんな事どうでもいい。俺の目よりお前の目だ……!
菫色の瞳なんて初めて見た……信じられないくらい神秘的で目が離せない。
俺達はしばらくそのままお互いを見つめ合っていた。
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