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第二章
36 招待状
しおりを挟む殿下からの再度の婚約の打診に一度は絶句した父だったが、意外にもすぐ気を取り直した。
しかし理由を聞いて納得だ。
「殿下はアマリールの質問に対して何も答えてくれなかった訳だよね?殿下にその気がないのならまだ逃げ切れる!大丈夫だ!」
そういう事か……。
殿下が強くお望みなら断ることなど許されないが、そうでないなら話は別だ。
父の目が生き生きとしだした。嬉しいような、けれど複雑な気分である。
「でもお父様?私……あんな事を言った手前次の殿下とのお約束はどうしたらいいかしら……」
「うーん。そうだねぇ……。」
しかし悩むだけ無駄だった。
何故なら“来週は来なくていい”と、ただそれだけが書かれたそっけない手紙が殿下から届いたからだ。
**
しかし手紙はその週だけではなく、翌週も届いた。内容はまったく同じ。
そして陛下達が心配していた私に傷が付くような噂も流れている気配は無い。
(もしかして……このまま会わないつもりなのかな……)
あの殿下の事だ。まったく考えられない訳ではない。
やっぱりあの時素直に頷いておけば良かったのだろうか。婚約した後に関係改善に努めれば良かったのだろうか……。
(後悔先に立たずとは正にこの事よね。)
何度やり直しても人生とはままならないものだ。
朝から部屋で一人悩んでいると、誰かが廊下を駆けてくる音がする。
「お嬢様!」
「どうしたのミーナ?そんなに息を切らせて。」
「お手紙です!皇后陛下から!」
「マデリーン様から?」
封蝋の印璽は間違いなく皇后陛下のもの。
(何かしら……)
あんな事があったばかりだからつい身構えてしまう。
しかしその内容は至極平和なもので、近々貴族の子供達を集めてお茶会を開くから出席を求めるというものだった。
(何だ……お茶会か……ん!?待てよ……)
貴族の子供達が集まる茶会……。
まさかこれ……いや、間違い無い。
「……このお茶会だわ……ハニエル様と初めて出会ったのは……」
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