侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

35 帰宅

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 「……とても虚しいわ……。」

 パカッパカッと馬の蹄の音がやけに耳に付く。
 私アマリールは現在侯爵邸への帰路についている。
 わかってる。覚悟もある程度は出来ていた。でもほんの少し、ほんの少しだけ期待していたのだ。 
 “この婚約は俺が望んだものだ” と言ってくれるのではないかと。

 殿下が口を開くまで待った。すごく待った。けれど結局殿下が口を開く事はなかった。
 慌てた陛下とマデリーン様は“ルーベルは照れてうまく言えないのだ”とかなんとか理由をつけて、婚約についてはまた後日話そうという事になったのだった。

 (…私が我慢すれば良かったのかしら…。)

 動機はなんであれ殿下が自分の口から“婚約するぞ”と言ってくれたのだ。しかも私を皇宮に住まわせるという破格の条件付きで。
 これが普通の令嬢なら家族総出で大喜びだろう。
 (……そうか、もしかしたらそれもショックだったのかしら……。)
 どうだ、俺はお前のためにここまでしてやったんだぞ。もし殿下がそんな事を考えていたのだとしたら、私の言葉にさぞかし面食らった事だろう。
 けれど私達は言葉が足りない関係では駄目なのだ。何でも話せるようにならないと……何かあるたびに口ごもって本心を隠すようでは信頼は築けない。
 (どうしたらいいの……?)
 変えるのは運命だ。殿下の性質ではない。
 しかしどんなに考えてもいい考えは浮かばなかった。


 ***


 「アーデン伯爵家?いきなりどうしたんだいアマリール。」

 週が明けて戻って来た父親に招待状の事を話し、アーデン伯爵家の事について質問してみた。
 婚約の事については最後にしないとお父様が大変な事になりそうなのでまだ黙っておいた。

 「アーデン伯爵家はローランとの関係がとても深いんだ。国境を挟んで隣同士だしね。それにアーデン伯爵の奥方はローラン出身なんだよ。」

 「お父様とも仲が良いの?」

 「ああ。学生時代の友人でもある。その縁があったからこそローランの販路開拓も進められたんだ。なかなかいい奴だよ。アマリールと年の近い女の子もいる。」

 「そうなの……。」

 “いい奴”……お父様がそこまで言うのなら今のところ何も問題は無いのだろう。
 茶会の誘いが来た事を父に告げると

 「アーデン伯爵領はちょっと遠いからね……。今回は私の方からお断りしておこう。近くを訪れる際はぜひお邪魔すると伝えておくよ。」

 「ありがとうお父様。それとね……」

 そして続いた殿下との婚約の話を聞いてやはり父は絶句してしまった。


 


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