盲目公爵の過保護な溺愛

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 応接室には既に公爵をおもてなしする準備が整えられていた。

 「心ばかりですが、ロセリーニ公爵のためにご用意させていただきました」

 テーブルに載る軽食類はロセリーニ公爵家でいただいたものと遜色がないほど豪華だった。
 父は今日のためによほど奮発したと見える。

 「日時まで指定してわがままを言ったのはこちらなのにすまないな。それで本題なのだが──」

 「公爵様、まずは紅茶で喉を潤してからにいたしましょう」

 ロセリーニ公爵が言いかけた言葉をエミリアが遮った。
 いくらエミリアといえど、爵位が上の人間に対し、今の行動がどれだけ不敬な事か知らないはずはないのに。

 「エミリアの言う通りね。ロセリーニ閣下、この通りエミリアは気が利く優しい娘なのです」

 母親なら娘の無礼を注意するのが当たり前だろうに。
 エミリアの事になると、どうしてここまで目が曇ってしまうのか。

 「……いただこう」

 ロセリーニ公爵は不敬をとがめることはせず、優雅な所作で目の前に置かれた紅茶に手を伸ばした。

 「アラベルか」

 「はい!エミリアから聞きましたが、ロセリーニ公爵もアラベルがお好きだとか。私が思うに、ふたりはとても気が合うのではないかと思うのです」

 父母とエミリアは、ロセリーニ公爵をちらちらと見ながら反応を窺っている。
 私同様、手紙の内容は何かの間違いだと思っているのだ。
 ロセリーニ公爵は音も立てずカップをソーサーへ置いた。

 「手紙にも書いた通り、わたしは長女のミレーヌ嬢との交際を望んでいる」

 父母の顔からみるみる血の気が失せていく。

 「彼女はとても賢く、心根の優しい女性だ。正式なパートナーとして側にいてもらいたい」

 「そ、そんな……なにかの間違いではありませんか?我が家にはもう一人娘が──次女のエミリアがおりますが」

 「間違えてなどいない。先日、シモーヌ邸での茶会で確信した。ミレーヌ嬢こそが、わたしが心から安らげる存在だと」

 愕然とする両親の横で、エミリアがわたしを睨め上げる。

 「シモーヌ子爵夫人のお茶会って……お姉さま、一体どういうこと?」

 「それは──」

 ロセリーニ公爵が来るなんて知らなかったと正直に話したところで、エミリアはきっと信じない。
 それどころか妹を出し抜いた卑怯者だと罵られかもしれない。
 ──どうしよう……

 「わたしがシモーヌ夫人に彼女を呼んでくれるよう頼んだのだ。前回は余計な邪魔が入ってろくに話もできなかったからな」

 苛立ちを含んだ言い方に、両親もエミリアも息をのんだ。
 半信半疑だったが、どうやらロセリーニ公爵は、エミリアの無断訪問を本気で迷惑に思っていたらしい。

 「他家の教育方針に口を出すつもりはないが、妹君はもう少し慎みというものを学んだ方がいい。少なくとも私はでしゃばりな女は嫌いだ」

 涼しい顔で紅茶に口をつけるロセリーニ公爵とは正反対に、自慢のエミリアを真っ向から否定され、うろたえる両親。
 そして自身の行いについて指摘されたエミリ アの顔は、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。





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