先見姫の受難 〜王女は救国の騎士から逃げ切りたい〜

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 おそらく先見はさっきの場面から始まるはず。
 私は無意識のうちにクリューガー卿の手を強く握っていました。

 ──きた……!

 眼前に広がる光景は、つい先ほど見たものとまったく同じ……ではありませんでした。
 さっきは確かに俯瞰で見ていた筈なのに、今は何故か眼前にクリューガー卿の引き締まった臀部が。

 ──何故、何故この視点なの!? 

 しかし混乱する私の事などお構いなしに、行為は進んでいきます。
 仰向けで寝台に寝かされた私の上に覆いかぶさるクリューガー卿は、緩急をつけながら腰をグラインドさせていました。
 両手を頭の上で絡め取られた私は為す術もなく、ひたすらに乱れながら声にならない声を上げ続ける事しかできないようです。

 『あっ……あぅ……ひぃん……っ!!』

 そしてここで視点は臀部から私とクリューガー卿の表情が見える位置へと変わりました。

 ──今度は何故この視点なの!?

 まるで常に一番良い位置で見せようとするかのような、これまで経験したことのない先見の力の妙な気遣いが解せません。

 『あぁ……アンネリーエ……』
 
 私の眦から静かに流れる涙を見下ろしながら名前を呼ぶクリューガー卿の顔は、恐ろしいほどに甘く、恍惚としていました。

 『私のアンネリーエ……ずっと、ずっとあなたとこうして繋がりたかった……私だけのもの……美しいあなたをもう二度と誰の目にも触れさせたくない……やっと願いが叶った……』

 ──もしかして私は……クリューガー卿に監禁され、凌辱されているのですか!?

 【監禁・凌辱】
 物騒な四文字が頭に浮かびます。
 だって今『私だけのもの』とか『もう二度と誰の目にも触れさせたくない』とか、とんでもない事をおっしゃってましたよね!?

 『あっあっ!!あん!!あぁん!!も……もぅダメなの……許してぇ……っ!!』

 目の前の私は息も絶え絶えなのに、何故か苦しそうな声を上げるほど、クリューガー卿の笑みは深くなります。

 『駄目ですよアンネリーエ。名実ともにあなたはこの私のものになったのです。サルウィンを救ったこのハロルドのものにね』

 サルウィンを救った……という事は、第一騎士団は無事リヴェニアに勝利する事ができたのですね。
 それは私も喜ぶべき結末です。
 監禁・凌辱などと失礼な事を考えてしまい、申し訳ありません。
 この異様な光景も、無事帰還して英雄となった彼と私を父王がめあわせたと考えれば説明がつきます。
 ですがしかしこれでは──

 『あぁっ!!やっ……いやぁっ!!』

 悩む私を悲痛な声が現実に引き戻します。
 見ればクリューガー卿は両手を私の股にかけ、思い切り左右に広げたのです。

 ──何をしているのですかあなたは!

 そしてその瞬間、見てしまいました。
 クリューガー卿の下腹部から生える、恐ろしくグロテスクで巨大な男性器が、私の秘処に何度も出入りを繰り返す様を。
 ですがそれだけでは終わりません。
 なんとクリューガー卿は、片手で私の頭を支えるようにして起こし、淫靡な音を立てながら抽挿を繰り返す秘処を見るように促したのです。

 ──な……何てことを……!!悪魔……悪魔の所業です!!

 血の気が引き、もはや卒倒寸前です。
 経験のない私にはわからないのですが、これは世間一般に行われている愛の営みなのでしょうか?
 でもそんな、私はあんなにもこの行為を嫌がっているのですよ。
 それなのにどうしてクリューガー卿は蕩けるような甘い表情を……?

 ──まさか!!

 そこで私は気付いてしまいました。
 これはもしや、噂に聞く【他人に苦痛を与えることで喜びまたは性的満足を得る】という特殊性癖ではないでしょうか。
 ええそう……そうに違いありません!
 そしてその性癖を遺憾なく発揮するために選ばれたのが何故かこの私で、彼は私を手にするためにリヴェニアを退け、サルウィンを救ったのでは……?
 その証拠にどんなに私が泣いて叫んでも、一向に腰を止めてはくれないじゃありませんか。
 
 ──あら?

 刹那、クリューガー卿の動きが嘘のように止まりました。 
 すると不思議な事に彼の下で喘いでいた私が、『どうして?』というような顔をします。

 『もっと欲しいなら……あなたの口からちゃんとお願いして、アンネリーエ?言えないならやめてしまいますよ』

 獲物を捕食する肉食獣のように口元をペロリと舐め、クリューガー卿は私を見下ろしています。

 『ぁ……ぁ……そんな、そんな事言わないで……』

 私よ、何故そんな切なそうな顔をするのです。やめてもらえたなら万々歳ではありませんか。今すぐこの無体な状況から解放されて、楽になれるのですよ。
 しかし次の瞬間、私は聞いてしまいました。
 子鹿のようにぷるぷると震えながら潤んだ目を向け、蚊の鳴くような声で『お願い……やめないで、ハロルド様……』と懇願する自分の姿を。

 ──嘘でしょう……

 自らこの行為を続ける事を望むなんて、とても信じられませんでした。

 『あぁ、アンネリーエ!もっと私の名を呼んで?……私はあなたのもので、あなたも私だけのもの。そうでしょう?』

 クリューガー卿は再び激しく腰を揺らします。

 『あぁっ……ハロルド様……ハロルド様ぁ!!』

 『ハロルドですよ……ちゃんと呼んで』

 『あっ……!!ん……ハロルド……っ!!』

 うわ言のように何度もクリューガー卿の名を呼び、唇を深く重ねながら涙を流し、逞しい身体に必死で縋りつく私。
 やがて限界を迎えたのか、一際大きな嬌声と共に身体をビクビクと震わせ、虚ろな目で弛緩した身体をベッドの上に投げ出しました。

 ──お、終わったの……かしら……んん?

 『まだ、まだだよアンネリーエ……こんなんじゃ全然足りない』

 ──足りない!?

 すると自身を抜くことなく、クリューガー卿は再びゆるゆると腰を動かし始めたのです。
 彼に組み敷かれている私は驚いたように目を見開き、再び声にならない声を上げ始めます。

 ──神よ……どうか嘘だと言って……!

 これをこの後延々と見させられた私が現実に戻り、クリューガー卿の顔を見た途端、白目を剝いて倒れた事は言うまでもありません。
 
 
 

 
 



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