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その日から私は寝る間も惜しみ、リヴェニアを退け、自分も助かるための策を考え続けました。
そして勿論良い案が浮かぶたびに、恐ろしい思いをしながらクリューガー卿の元を訪ねたのです。
王城に隣接する第一騎士団の稽古場は、いつ訪れても活気があります。
それと、やはり精鋭揃いと名高いだけあって、私が来るとすぐに気付いてくださいます。
邪魔をしてはいけないと、いつもこっそり入るようにしているにも関わらずです。
今日も早速見つかってしまいました。
「あっ、先見の姫様だ!おいお前ら、姫様にご挨拶しろ!」
「は、はい!!」
団の中堅どころと思しき男性が、気を遣って稽古中の仲間を呼び寄せました。
最近では成長した私を【姫様】と呼ぶ人も少なくなってきたので、何だかくすぐったい気分です。
「そんな、皆さんの邪魔をしているのに挨拶なんて」
稽古を中断させるのは申し訳ないと来るたびに伝えてはいるのですが、律儀な皆さんは必ず整列し、挨拶をしてくれます。
そして誰一人として嫌な空気を感じません。
とても統率がとれているのを感じます。
やはりこれも、団員を纏める上官の力量のなせる業なのでしょう。
「気にしないでください。こいつら、姫様がいらっしゃるのを首を長くして待っているんですから」
「まあ」
私のような面白みのない女でも、男所帯にほんの少し彩りを加える事ができたのでしょうか。
お世辞でも、嬉しいものです。
「お上手ですね。皆さま、いつもご苦労さまです。稽古の邪魔をしてしまい、申し訳ありません」
王族に対する礼儀とはいえ、いつも笑顔で迎えてくださる皆さんに、何だか私も親しみが湧きます。
ですが……ひとつ問題と言いますかその……目のやり場に困るのです。
稽古中の皆さんは、なぜか上半身裸で。
しかも皆さんたら、恥ずかしがって目を逸らす私に、揃って照れたような表情をするのです。この生暖かい雰囲気は何なのでしょう。
「アンネリーエ殿下!!」
突如聞こえてきた声に、反射的にピキーンと背筋が伸びます。
私が来た事を聞いたのか、奥からクリューガー卿が走っていらっしゃいました。
「ご、ごきげんよう、クリューガー卿。本日も急な訪問で申し訳ありません」
「そんな……こちらこそこんなむさ苦しい所にお出でいただき申し訳ありません。おっしゃっていただければ、いつでもこちらから参りますのに」
「それはいけません!」
はっ。思わず本音が漏れてしまいました。
しかし私の部屋には来ていただきたくありません。
あそこは私が唯一身の安全を確保できる場所なので。
「あの、殿下?」
「いえ、あの……むさ苦しいなんてとんでもありません。皆さんとても優しく、礼儀正しい方たちばかりです。きっとクリューガー卿の指導がよろしいのでしょうね」
取り繕うように微笑みました。
このようなやり取りも、もう何度かしているのですが、クリューガー卿は照れ屋さんなのか、いつも恥ずかしそうに目を逸らされます。
こういう姿を見ていると、彼も今は悪魔ではなく、ちゃんと人なのだと実感します。
どうかいついつまでも、そのままでいて欲しいものです。
「おい、お前たち!殿下の前で見苦しい格好をするんじゃないとあれほど言っておいただろう!」
クリューガー卿は照れ隠しのように、団員の皆さまの半裸を咎めます。
私には至近距離で股に連なる男性の神秘をすべて見せておいてどの口が……いえ、あれはクリューガー卿がした事ではありませんでしたね。
さて、そろそろここから去らないと、団員の方たちが叱られて可哀想です、
「あの、クリューガー卿。そろそろ……」
「ええ、ご案内いたします」
私は祈りながら彼の後ろを歩きました。
『どうか今日こそは、あの未来から逃れられますように』と……。
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