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しおりを挟む不思議なものですが、あれほど恐れていたこの手も、何度か触れると少しは慣れるものです。
いつものように、両手で大きな手を包み込むと、今日はその上からクリューガー卿の空いた手のひらが重ねられました。
──おや?
この行為は会議場で先見をした時以来です。
何でしょう、案の内容を口にしないことで、また彼に心配をかけてしまったのでしょうか。
目を閉じると暗闇の底に落ちて行く感覚がしました。
どうか視せてください。
私は祈るようにその時を待ちます。
──きた!!
暗闇が開け、眩い光が溢れます。
そして光を抜けた先で私を待っていたのは……
白い臀部でした。
──何!?何なのですか!?
一転、未曾有の混乱の中に叩き落された私は、それでも必死に状況把握に努めました。
この臀部は明らかにクリューガー卿のものとは違いますね。
彼の臀部はもっとこう……筋肉でぎゅっと引き締まっていました。
ですがこの臀部はいかにもお育ちが良さそうな、美しく滑らかな肌をしています。
──って、臀部の品評をしてる場合じゃありません!!私ったらなんてこと!!
『あ……ぁん……ふ……ん……』
優しげに揺れる臀部の先から聞こえてくる声は……やはり私のものでした……。
ええ。この展開になった時点で何となくそんな気がしておりました。
『気持ちいいのですか、アンネリーエ?』
優しく、いたわるような声音が耳に甘く響きます。
後ろから見ただけですが、蜂蜜色の金髪といい間違いありません。これはローナンのエリアス王子です。
それにしても、何と穏やかな優しい動きなのでしょう。
これですよ、これ。
愛を交わすとは、このように相手を慈しむ事なのではありませんか?
そしてお決まりのようにここで視点は変わります。
前に回された私の視点。
そこには優しい笑みを浮かべるエリアス王子と、彼の下腹部から生える美々しい男性器が。
──肌のお色と同じで……綺麗……
はっ!私ときたら、クリューガー卿とエリアス王子の色を比べるなんて何て事を!!
『あなたが姉上と私を応援していたのは知っていました。ですが私はどうしてもあなたが良かった……アンネリーエ、一生大切にします』
エリアス王子は私の身体を包み込むように掻き抱き、ほんの少し腰の動きを速めます。
『あっ、あっ、エリアス様ぁ……っ、気持ちいいの……!』
私は甘えたような声を出しながら、エリアス王子の背中に手を回し、足を彼の下半身に絡ませます。
『アンネリーエ、可愛い……可愛いよ……』
何て初々しく愛おしい光景なのでしょう。
未経験の私が、誰かとまぐわう光景を目の当たりにして思う事ではないと思うのですが、お互いがお互いを真に愛しあう未来に自然と胸が暖かくなります。
──私は……エリアス王子の妻になるのですね……
改めて思うと、何ともむずかゆい気持ちになり、頬が熱いです。
先見の力がこの未来を視せたという事は、やはりエリアス王子をお迎えするという案は、間違ってはいないという事なのでしょう。
──早速父上に話さなければ
ですが、その時でした。
『きゃーっっ!!』
私たちの愛しあう寝室の隣から、侍女と思しき者の悲鳴が響きました。
『お、お待ちくださいクリューガー卿!!こんな事をなさっては、あなたもただでは済みませんぞ!!』
こんどは男性の声です。入り口を守る衛兵の声でしょうか。
それにしても今、何かとんでもない事を口にしませんでしたか。
クリューガー卿……なぜ彼の名が?
すると突然寝室の扉が凄まじい音とともに蹴破られました。
『なんだ!?』
エリアス王子は私から身体を離し、後ろを振り向きます。
彼の視線の先に立っていたのは、恐ろしいほどの怒気に身を包んだ悪魔……ではなく、クリューガー卿だったのです。
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