先見姫の受難 〜王女は救国の騎士から逃げ切りたい〜

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
9 / 35

しおりを挟む





 不思議なものですが、あれほど恐れていたこの手も、何度か触れると少しは慣れるものです。
 いつものように、両手で大きな手を包み込むと、今日はその上からクリューガー卿の空いた手のひらが重ねられました。

 ──おや?

 この行為は会議場で先見をした時以来です。
 何でしょう、案の内容を口にしないことで、また彼に心配をかけてしまったのでしょうか。

 目を閉じると暗闇の底に落ちて行く感覚がしました。
 どうか視せてください。
 私は祈るようにその時を待ちます。

 ──きた!!

 暗闇が開け、眩い光が溢れます。
 そして光を抜けた先で私を待っていたのは……
白い臀部でした。

 ──何!?何なのですか!?

 一転、未曾有の混乱の中に叩き落された私は、それでも必死に状況把握に努めました。
 この臀部は明らかにクリューガー卿のものとは違いますね。
 彼の臀部はもっとこう……筋肉でぎゅっと引き締まっていました。
 ですがこの臀部はいかにもお育ちが良さそうな、美しく滑らかな肌をしています。

 ──って、臀部の品評をしてる場合じゃありません!!私ったらなんてこと!!

 『あ……ぁん……ふ……ん……』

 優しげに揺れる臀部の先から聞こえてくる声は……やはり私のものでした……。
 ええ。この展開になった時点で何となくそんな気がしておりました。

 『気持ちいいのですか、アンネリーエ?』

 優しく、いたわるような声音が耳に甘く響きます。
 後ろから見ただけですが、蜂蜜色の金髪といい間違いありません。これはローナンのエリアス王子です。
 それにしても、何と穏やかな優しい動きなのでしょう。
 これですよ、これ。
 愛を交わすとは、このように相手を慈しむ事なのではありませんか?
 そしてお決まりのようにここで視点は変わります。
 前に回された私の視点。
 そこには優しい笑みを浮かべるエリアス王子と、彼の下腹部から生える美々しい男性器が。

 ──肌のお色と同じで……綺麗……

 はっ!私ときたら、クリューガー卿とエリアス王子の色を比べるなんて何て事を!!

 『あなたが姉上と私を応援していたのは知っていました。ですが私はどうしてもあなたが良かった……アンネリーエ、一生大切にします』

 エリアス王子は私の身体を包み込むように掻き抱き、ほんの少し腰の動きを速めます。
 
 『あっ、あっ、エリアス様ぁ……っ、気持ちいいの……!』

 私は甘えたような声を出しながら、エリアス王子の背中に手を回し、足を彼の下半身に絡ませます。
 
 『アンネリーエ、可愛い……可愛いよ……』

 何て初々しく愛おしい光景なのでしょう。
 未経験の私が、誰かとまぐわう光景を目の当たりにして思う事ではないと思うのですが、お互いがお互いを真に愛しあう未来に自然と胸が暖かくなります。
 
 ──私は……エリアス王子の妻になるのですね……

 改めて思うと、何ともむずかゆい気持ちになり、頬が熱いです。
 先見の力がこの未来を視せたという事は、やはりエリアス王子をお迎えするという案は、間違ってはいないという事なのでしょう。
 
 ──早速父上に話さなければ

 ですが、その時でした。

 『きゃーっっ!!』

 私たちの愛しあう寝室の隣から、侍女と思しき者の悲鳴が響きました。

 『お、お待ちくださいクリューガー卿!!こんな事をなさっては、あなたもただでは済みませんぞ!!』

 こんどは男性の声です。入り口を守る衛兵の声でしょうか。
 それにしても今、何かとんでもない事を口にしませんでしたか。
 クリューガー卿……なぜ彼の名が?
 すると突然寝室の扉が凄まじい音とともに蹴破られました。
 
 『なんだ!?』

 エリアス王子は私から身体を離し、後ろを振り向きます。
 彼の視線の先に立っていたのは、恐ろしいほどの怒気に身を包んだ悪魔……ではなく、クリューガー卿だったのです。



 





しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

側近女性は迷わない

中田カナ
恋愛
第二王子殿下の側近の中でただ1人の女性である私は、思いがけず自分の陰口を耳にしてしまった。 ※ 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~

岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。 「これからは自由に生きます」 そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、 「勝手にしろ」 と突き放した。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声

miniko
恋愛
王太子の婚約者であるアンジェリクは、ある日、彼の乳兄弟から怪しげな魔道具のペンダントを渡される。 若干の疑念を持ちつつも「婚約者との絆が深まる道具だ」と言われて興味が湧いてしまう。 それを持ったまま夜会に出席すると、いつも穏やかに微笑む王太子の意外な心の声が、頭の中に直接聞こえてきて・・・。 ※本作は『氷の仮面を付けた婚約者と王太子の話』の続編となります。 本作のみでもお楽しみ頂ける仕様となっておりますが、どちらも短いお話ですので、本編の方もお読み頂けると嬉しいです。 ※4話でサクッと完結します。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...