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しおりを挟むクリューガー卿は、床に座り込んだ私を軽々と横抱きにしました。
重力がないのかと思うほど、あっという間に。
「殿下、寝室はどちらですか?」
「し、寝室!?いけません!!」
クリューガー卿+寝室=ダメ、絶対!!
「しかし殿下、床の上では何もできません」
「何故ですか!?」
するとクリューガー卿は自分の身体に触れてみるよう私に言いました。
私は訳がわからないまま、手のひらで彼の胸板に触れます。
「……硬い……」
「私のように鍛えている人間ならまだしも、殿下の白く柔らかな肌が固い床の上に長時間座れば、明日には青痣だらけになってしまいます」
「でも……」
「では、ずっと私の上に乗っていてくださいますか?それなら大丈夫かと」
上に乗る!?
それはいけません!
だって二度目の先見の時、彼の上に乗せられている光景も見てしまいました。
「っ、駄目、です……!!」
思い出して頬が熱くなります。
しかし、彼は私が何を考えているのかすべて理解しているようです。
「殿下。私は、約束は必ず守ります」
クリューガー卿は真っ直ぐに私を見つめます。
私が嫌だと言えば必ず止める。
確かに約束しました。
──本当に、信じても良いのでしょうか……
戸惑う私の頭の上で、クリューガー卿が頬擦りをしました。
何だか懐かしいこの感じ。
子供の頃、ばあやが私を抱っこするたびにしてくれた事を思い出しました。
可愛い可愛いと言いながら、私を慈しんでくれた仕草とまったく同じです。
「……あちらの、奥の扉です……」
私は寝室の扉を自ら教えました。
さっきから、信じられない事ばかりが起きています。
彼に駄目だと言いながら、結局その通りにしてしまうのはいったい何故なのでしょう。
クリューガー卿は寝室に向かってゆっくりと歩を進めます。
ですが近付くたびに私の心臓は激しく音を立て、息苦しいほどです。
寝室の扉が開くと、無意識に彼の服を強く握り締めていました。
彼の膝がギシリ、と寝台を軋ませます。
少しだけひんやりとしたシーツの上にゆっくりと降ろされると、何故だか急に頼りない心地になりました。
これではまるで、彼の逞しい腕の中に安心していたようではありませんか。
「殿下……」
目元を朱に染めたクリューガー卿が、私に体重をかけないようにして身体を重ねてきました。
そして私の背中に両腕を差し入れ、ぎゅっと抱きしめると深く息を吸い込みます。
少し身体が反って苦しかったせいか、私の両腕は自然と彼の背中に回り、抱きしめ返すような形になりました。
でも、不思議なのです。
触れる彼の肌が、とても心地良いのです。
そして肌の香りも、もっと、もっとと吸い込みたくなります。
──私はどうしてしまったのでしょう……
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