【本編完結】マリーの憂鬱

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3章

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部屋に着いても私はずっとモヤモヤしたままだった。

あんなに近かったユリシス様との距離が、今日はとても遠く感じられる。私…寂しいの?

夜会の最中にユリシス様が見せた男の人の顔。
怖いくらいに真剣で、でもそれは私を求める気持ちがそれだけ強かったという証拠でもあったはず。……だから、だから答えようと思った。

もう待てないって、そう言っていたのに。
今はとても待っているようには見えない。

私がいつまでもユリシス様の想いに答えなかったから、呆れられてしまったの?

あり得るわ……。
だってユリシス様は誰もが焦がれてやまない王子様で、彼に求められたなら、すぐさまその身を投げ出す女性は山ほどいるだろう。

ユリシス様が……他の女性を抱く……。

考えるだけで胸がズキズキと痛む。

くだらない想像だなんてとても思うことが出来なかった。それがいつか本当に訪れる未来なのかもしれないと。


いつの間にか頬は涙で濡れていて、私はベッドで身体を丸めて自身を抱き締めていた。







夕食を皆で囲んでいても気分は晴れず、あまり味もしない。


「マリーちゃん、目が腫れてるよ?どうしたの?」


サーリー様が心配そうに私の顔を覗き込む。
冷やさなかったせいで目蓋が腫れぼったくなってしまった。

「いえ、少しお昼寝をしたら浮腫んでしまったみたいです。お見苦しい顔ですみません。ありがとうございますサーリー様。
そういえばお仕事でいらしたと父から聞きましたが、もうお済みになられたのですか?」


「まだまだ。明日話をする事になってんの。
リビエラは良質な繊維を提供する代わりにガーランドから薬を仕入れてるんだよ。ガーランドの薬学は飛び抜けているからね。
恥ずかしながらリビエラは貧富の差が激しい国でね。だから医療に恵まれない人々のために、なるべく安価で効き目のある物を考えてもらってるんだよ。」


「話し合いは午前中なんだけど、いつ終わるかはっきりとした事が言えないんだ。だからマリー、明日は私達の事は気にせず自由に過ごしてくれて構わないからね。」


自由に……ユリシス様の何気ない一言にまた心が沈んでしまう。何をしに来た訳でもない。静養しに来たのだ。自由にゆっくり過ごすのは当たり前なのだろうけど……。


「マリーちゃん本当に大丈夫?なんか元気ないよ?」


「……少し旅の疲れが出たのかもしれません。今日は早めに休むようにします。ご心配おかけしてすみません。」


私はぼんやりと残してしまった料理を眺めていた。




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