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3章
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しおりを挟むユリシス様と手を繋ぐと、あんなに不安で淋しかった気持ちが嘘のように晴れて行く。
でも、全部聞かれてたっていうことは……その、私が触れてくれなくて拗ねてたみたいな、捉え方によってはそうも聞こえる話を聞いてらしたのよね……。
………もう穴がなくても自分で掘って入りたい。
「マリー、私の心ってそんなにわからない?
これでもかなりわかりやすく態度や言葉で伝えてるつもりなんだけどな……プロポーズだってしたし………。」
確かに言葉も態度もわかりやすかった。でも……
「今日は手を繋いで下さいませんでした……その、手を繋ぎたいとかそういう事じゃなくて、今まではユリシス様にどこかしら触れているのが当たり前だったから………。
だからいつもと違って二人でいてもユリシス様の温もりを感じなくて………そしたら心にぽっかりと……穴が空いたみたいになってしまったのです……。」
そう、そしたらどんどん不安になって、どんどん悪い方へと考えてしまった。
「それで叔父上の銀の髪を私だと思って追い掛けてくれたの?」
「……はい。」
ユリシス様はふぅ、と一つ溜め息をつく。
「マリー、いくら警備があるからってこんな夜中に女性が……しかも夜着一枚で外に出るなんて危険だよ。もし叔父上と会う前に他の男と会ったらどうするつもりだったの?いや、叔父上だって危ないけどさ。」
ユリシス様の言う通りだ。でも、でも……
「……不安だったから……どうしても会いたくて………。」
ユリシス様の足が止まる。
気付けば庭に出る時開けた窓の前に着いていた。
「マリー、君が私を中に入れてくれるなら、一晩かけてその不安を全て取り除いてあげる。」
ユリシス様はそう言うと繋いでいた手を離し、私から一歩下がった。
「無理をさせるつもりはない。入れて貰えなくても嫌いになんてなったりしない。」
熱を孕んだ瞳が真っ直ぐに私を捉える
情欲をこらえるかのように引き結ばれた唇が、私の答えを待っている。
私は震える指を伸ばし、ユリシス様の唇をなぞった。柔らかくて、熱い。
初めての口付けは、私がシャルル様と口付けたせいであなたを苦しめていた時だった。
二度目の口付けにあなたは“愛してるけど苦しい”と言った。
その後のキスは私を励ますために。
そして最後にしたキスはやっぱり私があなたを苦しめていた。
私のせいでこんなにも苦しい想いをしているのに、ユリシス様はずっと愛を囁き続けてくれた。
愛する者の持つ背景を全てひっくるめて愛する。
フランシス様が仰っていた事をユリシス様はしてくれていた。私の過去も、揺れる気持ちも全てわかった上で私を………。
もう片方の手でユリシス様の両頬を包むと、ユリシス様は屈むように顔を近付けてくれる。
ちゅ、ちゅ、と何度か短く口付けた後、初めて自分から深く口付けた。
遠慮がちに舌を絡めると、ユリシス様は優しく私の舌をなぞるように答えてくれる。
しばらくして唇を離すとお互いの唾液が細く糸を引く。私がユリシス様に繋がるそれを舌で舐めとると、ユリシス様は何かを堪えるような声で私の名を呼ぶ。
「ユリシス様………来て………。」
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