【本編完結】マリーの憂鬱

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
124 / 331
4章

21

しおりを挟む




「いつでも……?じゃあ今ここででもいいの?」

ここで!?世のため人のために建てられたこの薬草園でですか!?人様のお口に入る薬草の側でですか!?
この人倫理観というものをどこかに丸ごと落として来ちゃったのかしら。いや、でも最初から所構わずな人だったか。

「だだだだだめです!!!確かにいつでもとは言ったけどせめて人に見られない所でして下さい!!」

「ここだって見えないよ?ほら、そこの高く生い茂った草の陰とかなら尚安心………ね?」

「ね?じゃありません!あと耳元で悩ましく囁くのだめです!!」

あぶない。うっかり流されてフランシス様が丹精込めて育てている薬草園の中で致してしまうところだった。

でも次はいつ彼とこんな風に過ごせるのだろう。ここに来てからずっと離れずに一緒にいた分、明日からきっととても淋しくなるんだろうな。

「………明日からとても淋しくなるよ……。」

見上げると私と同じ顔をしたユリシス様がいる。

「私も同じことを考えてました………明日から淋しい………。」

「今夜も一緒に眠ろう。しばらく会えないから、マリーが私の事を忘れないようにしないとね。」

そう言ってとても魅惑的な笑みを寄越す。
色んな顔を持つ私の大好きで大切な人。

「部屋に戻りましょう?」

いつも繋いでくれる大きな手に私から手を重ねると、優しく強く握り返してくれる。かと思うと長く細い指先が私のそれをなぞるように動き、指と指の間に一本ずつゆっくりと交わって行く。

彼の一つ一つの仕草がとても官能的で、下腹部に言い知れない疼きを感じる。

「そんな目で男を見たら駄目だよ……。」

「そんな目って…?」

自分の顔がいつもと違う事はわかっている。
今私の頭の中は彼の事で……彼と彼のもたらす切ないくらいに甘くて激しいあの時間の事で埋め尽くされている。

「私が欲しくてたまらないって顔してる……」

彼のもう片方の手が私の首筋から胸元までをゆっくりと撫で下ろしてはまた戻り、その触れるか触れないかの力加減に肌が粟立つ。

「紅い唇が薄く開いて誘ってる……早く食べて欲しいって………。」

彼の唇が耳元で囁き吐息を落とすと脚の力が抜けそうになる。

「マリー……私はどんな顔をしてる……?」

ユリシス様の顔……?
その瞳を覗き込めば映るのは蕩けたような私の顔。そして彼の表情はとても切なく苦しそう。
あぁ、知ってる。この顔は……

「……私の事が欲しくて欲しくてたまらない顔をしてる………。ユーリお願い。早く私をベッドに連れて行って。」


彼は満足げに微笑むと、私を横抱きにして足早に薬草園を出た。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

塔に住むのは諸事情からで、住み込みで父と暮らしてます

ちより
恋愛
魔法のある世界。 母親の病を治す研究のため、かつて賢者が住んでいたとされる古塔で、父と住み込みで暮らすことになった下級貴族のアリシア。 同じ敷地に設立された国内トップクラスの学園に、父は昼間は助教授として勤めることになる。 目立たないように暮らしたいアリシアだが、1人の生徒との出会いで生活が大きく変わる。   身分差があることが分かっていても、お互い想いは強くなり、学園を巻き込んだ事件が次々と起こる。 彼、エドルドとの距離が近くなるにつれ、アリシアにも塔にも変化が起こる。賢者の遺した塔、そこに保有される数々のトラップや魔法陣、そして貴重な文献に、1つの意思を導きだす。 身分差意識の強い世界において、アリシアを守るため、エドルドを守るため、共にいられるよう2人が起こす行動に、新たな時代が動きだす。 ハッピーエンドな異世界恋愛ものです。

処理中です...