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4章
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しおりを挟むユリシス王子が静養地から戻るとすぐにヘルマン侯爵一家が王宮へと召喚された。
ヘルマン侯爵とその妻は娘マチルドを絶縁する事で罪を免れようとしたが、ユリシス王子はそれを許さなかった。
マチルドは斬首刑が決まり、ヘルマン侯爵一家は爵位を剥奪された。唯一私財まで奪わなかったのは、これまでのヘルマン侯爵の働きへのユリシス王子からの恩情だった。
そしてヘルマン侯爵領を引き継ぐ者の名が明らかにされた。その名は
「………嘘でしょ………。」
王宮からの使者が携えて来たのは国王陛下直筆の書状で、そこにはヘルマン元侯爵領を治めるようにと書かれていた。
それを私の目の前で恭しく受け取ったのは……
「嘘でしょ……オデットが?………」
そう言えば確かにユリシス様はよくない顔で言っていた。“未知数だが素晴らしい保護者付き”だと。保護者とはお父様の事か!それは素晴らしい保護者ですけどだからって何でオデットに!?
「オデット殿はゆくゆくはフォンティーヌ公爵となられるお方。ヘルマン侯爵領はフォンティーヌ公爵領のすぐ隣でもあるため、一旦公爵領預かりと言う事にするそうです。そして適任者が見つかり次第その者を侯爵に任命し、領地を引き渡すと言う事です。」
なるほど。オデットのお手並みを拝見しつつ場繋ぎもできるから一石二鳥と言う訳ね。
「やってくれるじゃないのエロ王子。いいわ、受けて立ってやるわよ。」
「エロ王子って何なのかしらお姉さま………。」
「だってあんた結婚どころか婚約前に旅行に連れ出してヤっちゃうなんてエロ王子以外何て呼べばいいのよ?しかも薬飲むなってほんと何様なのって感じじゃない?」
いや、ヤっちゃうってちょっと違います。私がしてくれって言ったようなものなのですが。
「子供が出来たらあんたに逃げられる心配もなくなるし、世継ぎは出来るし万々歳ね。今頃王宮で浮かれまくってる姿が目に浮かぶようだわ。」
そうだろうか………。あのユリシス様が私との事でそんなに浮かれるとは到底思えないのだけれど………。
「あんたも、これから正念場よ。引きずり落とされないようにしっかりと踏ん張りなさい!」
「しょ、正念場ってそんな大袈裟な……。」
「大袈裟どころか控え目に言ったつもりよ。王子の寵愛を一身に受ける女なんて、王族との縁を望む奴らにとったら邪魔者以外の何者でもないわ。これからどんな汚い手を使ってくるかわからない。気を付けなさいよ。」
オデットの目はいつになく真剣だ。
「わかったわ……。お姉様も、領地の事頑張ってね。」
任せときなさいよ!とオデットは笑う。
たくましい姉だ。きっとやり遂げるだろう。
そして数日後、事態はオデットの危惧していた通り急転して行く事になる。
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