【本編完結】マリーの憂鬱

６章

２９

「シャルル様………何度申し上げたらわかるんです？………女性をこんなぐちゃぐちゃになるまで泣かすなんて、一体どれほど非常識な襲い方をしたんですか？」

あまり目立たぬようにとシャルル様の護衛をアランに任せてお留守番していたリアン様は、私達がシャルル様の宮に着くなり開口一番そう言った。

「こんな白昼堂々兄上の婚約者を泣かすほど襲う訳ないでしょ！？下らない事言ってないで早く扉を閉めてよリアン！！」

いまいちシャルル様の言葉を信用してない様子のリアン様だったが、言われた通りすぐ扉を閉めて私達に向き直った。

「ヴィクトル殿も久し振りですね。しかし積もる話の前に………一体何があったのです？」


シャルル様、ヴィクトル様、リアン様三人の視線が私に集まる。

どこから？………何から話したらいいの………？


「う゛………」


「「「う゛？？」」」


「う゛ぅぅぅぅぅぅわぁぁぁぁん！！！！」


もはや何をどう説明したらいいのかわからず、長時間ジョエル様に拘束され続けて張りつめた心も限界を迎え、私はいつぞやシャルル様と共に転がり回った赤い絨毯に突っ伏して大声で泣いてしまった。




そしてしばらくの時が過ぎた。
私はシャルル様に支えられソファーへと座り直し、イケおじ・美少年・美青年の三人組と向かい合った。

「………嘘でしょ………ジョエルがマリーを！？」

「シャルル様………女性が真剣に話しているのに“嘘でしょ”はいけません。」

「………………………………………。」

リアン様はよくわからないが後の二人の反応はとても驚いているようだった。それはそうだろう。皆、私とジョエル様の過去を知っているのだから。

「マリー！何でジョエルに気を持たせるような事言っちゃったの！？気を持たせるのはジョエルじゃなくてマーヴェル家の方でしょ！？」

「で、でもっ！ジョエル様は絶対に何か隠してると思って！……私さえ我慢すれば情報が手に入るんじゃないかって……だって皆がこんなに頑張っている時に、もしかしたら出来ることがあるかもしれないのに何もせず待つなんて………！」

クリストフ様なんて命を懸けるのだ。それに比べれば私の我慢なんていかほどのものか。

「だってマリー！兄上に何て言うのさ！？マリーがジョエルに長時間抱かれてたなんて聞いたら、兄上はすぐさまジョエルを殺しに行くと思うよ？」

殺す……………？
あれ……………？
その言葉、どこかで…………



『………もし君に触れたなら、殺すかもしれない。』


！！！
そうだ！確かにあの時ユーリはそう言っていた！
どうしよう………どうしよう………！！


「シャルル様どうしよう………ユーリにはこの事はとても言えません………だってユーリはジョエル様の気持ちを知ってるかもしれない………！」