【本編完結】マリーの憂鬱

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6章

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その頃ユリシスの宮では美しい兄弟の織り成す恋愛小説さながらの光景が繰り広げられ、間近で見ている侍女達は娯楽の少ない日常に突如訪れたこの状況に、秘かに歓喜していた。


「ねぇマリアンヌ…こんなことを言ったら君を困らせるのはわかってる。でもどうしても諦められないんだ。」

ユリシスとマリアンヌが仲良くお茶を飲んでいる所に何だかんだで張り切って参戦したシャルル。現在兄弟は両サイドからマリアンヌを挟んで座っている。
そしてシャルルはマリアンヌの手を握り身体中からキラキラオーラを惜しみ無く振り撒いて口説きに入った。

「僕はもう少ししたら兄上に負けないくらいいい男になるよ?その時はマリアンヌ、君を絶対に満足させてあげる。昼も夜も僕の事以外何も考えられなくなるくらいにね。」

「シャルル………いい加減にしろ。マリアンヌが困っているだろう。ねぇマリアンヌ?」

「えっ、あ、あの………」

「マリアンヌ…僕の気持ちは本当に迷惑……?」

シャルルはマリアンヌの手に自身の手を重ね、ゆっくりと優しく擦る。

ユリシスはそれを横で見ながら思っていた。
……我が弟ながら恐ろしい奴だ。この年でこれだけやるとは……。生まれるのがあと五年早かったらどうなっていたか……。


その時シャルルも思っていた。
………この子、乾燥肌だな………。
あぁ……マリーのもちもちしたお肌が恋しい……


「シャルル様のお気持ちはとっても嬉しいですわ……でも私は兄にもユリシス殿下をお支えするように言われていて……あぁ、シャルル様、お許し下さいませ!」

「……じゃあジョエルが許してくれたら良いのかい?」

「えっっ!?そんな……でも……。」

「わかったよ。じゃあジョエルに話してみる。いいね?マリアンヌ?」

「シャルル様………そんなに私の事を……?」

「これ以上は……兄上の前では言えないよ…。」

「そうか………それなら今日のところはシャルル、お前に譲るよ。」

「はぁ!?」

「昨日は私がマリアンヌを独り占めしてしまったからね………。勝負はフェアであるべきだ。しかし私も負けるつもりはないからね、マリアンヌ。」

「まぁ………ユリシス様………!」

マリアンヌは二人の男が自分を取り合って争う様にすっかり酔いしれている。
しかし譲られちゃったシャルルはそうは行かない。

兄上……昨日の事を根に持ってるな!
そういうところが小さいんだよ本当に!!
世間では長男ってワガママとは縁遠い生き物だって言いますよ!?わかってる!?
………いいよ。受けて立とうじゃない。これも将来に向けての修行だと思えば痛くも痒くもない。見てろよ兄上。隙あらばいつか豪快に足元を掬ってマリーをさらってやるんだから。

「敵に塩を送るなんてさすが兄上だね。でも僕もなりふり構っていられない。マリアンヌ、兄上もああ言ってくれた事だしこれから僕の宮においで?美味しいお茶を淹れてあげる。勿論僕がね。」

「シャルル様がそこまで仰るのなら………。」

「よし、決まりだ。」


弾けるような笑顔を見せた弟に、ユリシスは何も言えず固まった。




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